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三殺事件 ~The End of World~  作者: Red
第十三章 勝本と弟子
48/50

スパイの昔話

 朽ち行く世界。第三次世界大戦はそう表すのが最適だろう。


 俺の名前は黒柳、本当の名前は知らない。

 今日は私がスパイになってからの、初めての任務について語っていく。


 と言っても、スパイの任務の話なんて凄まじい長さになってしまう。まぁ、だから要点だけ絞って話そう。私は一人でも多くの人に話が読まれる、それだけでいいんだ。

 じゃぁ、早速語っていこう。

 俺に正式な任務が出されたのは二十歳になってから。これまでも実技授業として、諜報ちょうほう活動はしていた。しかし、国から直々に受ける任務はこれが初めてだった。

 最初の任務。それはムガロダ連邦で姿を消した『日向勝本』の捜索、あわよくば発見。それと同時にムガロダ連邦の軍事計画を探ること。

 初めてにしては重すぎる任務。しかし、国はそれだけ信用しているということ。


 今回の任務の仲間、それは皆さんご存じのはずだ。


「あなたが今回の教師……」


 豊富な筋肉が体を隠し、その上に大きなスーツを着ている。もはや武器はその拳と言わんばかり。コードネーム『AA888:サンダー』。

 白い壁に完全に覆われた空間に、彼の圧倒的存在感だけが響く。


「……キミが今回の生徒か」

「噂に聞いています。あなたは初めての授業で、教師を任された男」

「……こちらも噂には聞いている。『筋肉ダルマ』と」

「そのあだ名をつけた奴を教えてくれ。月面基地まで吹き飛ばす」


 本当に彼ならできそうだが、裏ではみんなこう呼んでいる。仲間が皆吹き飛ばされては困るから、今回は言わなかった。


「今回の授業、キミには少し頼みたいことがある」

「先生の言うことならば、なんなりと」


 今更だが、先生というのは部隊のリーダーの事。それと同じように生徒は部下。授業は任務のことを表す。

 まぁ、この完全防音の空間に盗聴器があるわけないが、一応の対策だ。残念だがフラグではない。


「サンダー、ムガロダ語は喋れるか」

「当たり前です」


「……ならば、軍には入れ」




 ということで、たった二名の部隊はムガロダ連邦へと飛び立った。まぁ、密入国だが。

 首都近くのイラトスという街、目立たない普通の家。ここが基地となる。家主は自国に不信感を持ち、反抗意思のあるムガロダ連邦民。武器の支給、密入国の手伝いをしてくれた。しかし、それでも信用は禁物だ。決して家主とは出会わないよう、庭の倉庫で過ごす。


 そして、サンダーは一瞬で軍に強制スカウトされ、軍に侵入した。戦争を一番長く続けている国、軍人は常に募集している。多少経歴が怪しくても関係ない。怪しいならば前線に出し、”殺すだけだ”。まぁ、彼に死ぬことができればな。


 そんなこんなで、ムガロダ連邦への侵入は簡単だった。私は日向勝本へとつながる情報をこれから数か月間集めることになった。もしかすると年単位にもなる、そんな任務だ。

 現在分かっていることは二つ。勝本は首都『スワモク』近くで最後の通信を発し、消えた。そして、その最後の通信では『理解した』という、短く不明の文章が届いたとのこと。


 予想としては勝本はムガロダ側に寝返った。これくらいしか思いつかない。しかし、これほど我が国『日神』を愛していた男がそう簡単に寝返るのか、それが疑問だ。まぁ、何が起きるかは分からないものだ。



 じゃぁ、物語の始まりは大体語れただろう。次は……そうだな。サンダーの基地に侵入する話でもするか。



 入国してから一か月が経った頃、サンダーからの手紙が来た。内容は戦地から生き延びたという、なんとも典型的な手紙。しかし、真実は光り越しに存在する。

 手紙の後方からライトを当てると、紙の表面に斑点が浮かび上がってきた。点字。それも日神語でつづられている。


塹壕戦ざんごうせんを生きた 前線をうまいことさげた 今から行く基地に核開発研究所あり 座標はプレゼント」


 それと共に入っていたのは羽ペン。薄汚れており、おそらく塹壕戦中、ずっと持っていた物だろう。とりあえずサンダーは生きているようだ。

 ただの羽ペンに見えるだろうが、俺は容赦なく羽ペンの羽軸うじくを縦に斬った。中から出てきたのは一つの小さな紙。その紙を開くと、そこには小さな文字で座標が書かれていた。あの巨体でも小さな文字が書けるようだ。


 とりあえず核開発研究所とは趣深おもむきぶかい。基本的にサンダーは派手に諜報活動などできない。何せ全てを制限される軍人なのだから。つまり、私が侵入する以外にない。


 決行予定は二週間後。それまではその基地についての情報収集だ。まぁ、とてつもなくつまらないから飛ばそう。


 決行予定日。私は活動服であるベンタブラックを使用した服一式を着た。動きやすい布服の上に大きなコートを着る。ケブラー繊維でできたこのコートは、軽く刃物程度の攻撃は防げるだろう。実戦で着るのは初めてだ。

 記された座標は家から十二キロほど離れた所。森を突っ切れば走っていける。

 ということで、午後十一時。私は家を飛び出した。


 それから一時間もしないうちに、その基地とやらに到達した。国内で最も新しく、最も広い軍事基地。最新の警備ドローンや防衛兵器を常設しており、一般人にとって侵入は極めて難しい。まぁ、一般人にとってだが。

 こんな広い土地、全てを常に見る事なんてできない。この建物にはいくつも穴がある。そう、”穴”がある。


 小さく、細い下水道。人間サイズが通ることは不可能だ。しかし、ドローンならばどうだろう。話は一気に変わる。そう、特に自分自身が施設に侵入する必要はない。ただ偵察できれば良い。

 俺はコートの内側から小型ドローンと操縦キットを取り出し、軍事基地から少し離れたマンホールの中へとドローンを投げた。

 そこからは事前に調べたルートを通り、軍事基地へと侵入させるだけだ。操縦機器に映るのは決して綺麗とは言えない下水道。詳細は言わないでおこう。


 小型ドローンは小さな管を通り、共有銭湯の排水溝の蓋をこじ開けて飛び出した。当然人などいない。

 そこで軽く機体を浴槽の中に入れ、少し匂いを落とす。耐水機能など当然のようにある。


 そして、偶々(たまたま)開いていた窓からドローンを外に出し、とりあえずは移動しやすくなった。

 研究所はどうやら地下にあるらしい。ここからどうすればいいものか。地下の警備は地上より万全。この小型ドローンすらも入れない細い換気口以外、侵入ができる場所はない。下水道すらも存在しない。


 ……おっと? 侵入できる隙があるじゃないか。


 細い換気口。この小型ドローンは入れない。しかし、もっと小さい物なら?

 超小型精密ドローン。サイズはたったはち一匹分程度。充電は一時間ほどしか持たないが、一回分の任務くらい余裕だ。そして、そのドローンは現在操縦している機体の中にある。


 事前に入手した設計図を元に、侵入経路を精密に考える。蜂などの昆虫と同じ原理で飛ぶため、羽音は確実に発生するだろう。

 現在操縦しているドローンを建物の屋上へと着陸させ、超小型精密ドローン……今は蜂ドローンとでも呼ぼうか。そいつに操作対象を変更した。操縦機器の画質はぐっと下がるが、仕方がないだろう。

 小型ドローンはしばらく建物上空を滞空させる。こうすれば最低限目視でバレることはなくなるからな。


 蜂ドローンは狭い排気口に入り、相変わらず狭いパイプを進んでいく。しばらく進むと少し広い空間へと飛び出した。アニメでよく人間が通っているダクトというやつだ。こんな狭い場所、通れるわけがないのに。

 左側ではプロペラが回っていた。これが換気扇というものか。初めて見た。


 しかし、目的は換気扇を見る事じゃない。俺は緻密ちみつな設計図とにらめっこしながら地下へと続く道を進む。まぁ、道中を話しても面白くない。飛ばそう。



 一気に空気が重くなり、音も羽音以外が響かなくなった。ここが地下研究施設か、そう直感で感じた。

 羽音さえ危険だと直感し、蜂ドローンを陸上歩行モードへと変える。狭く、隙間が殆ど無い吸込口すいこみぐちだけが唯一部屋の中を観察する手段だ。


 様々な部屋を回った。凄まじい量の情報。小さな穴から見える大量の書類に模型。あまりにも興味を引くものが多くあった。


『フレロビウム型原子爆弾』

『水素冷却圧縮実験』

『世界研究』


 あまりにも興味を引く資料が多い。全てを蜂ドローンのカメラに映し、情報を集めてゆく。我ながら子供のように集中していただろう。


 そして、とある部屋。吸込口が大きく、侵入ができそうだ。私は躊躇ためらわずに侵入した。もう十二時は過ぎているだろう。人は居ない。

 そんな空間をただの虫のように飛び回る。監視カメラが回っていたとしても、ただの無視だと思われるだろう。


 扉は全て開いていた。暗視カメラ越しに映るのは長い廊下。ただただ続く、長い長い廊下。

 その道を進もうとs……


 ────発砲音が響く。


 突然操作パッドの液晶が真っ暗になった。近くに人は居なかったはず。防衛装置にでも反応したか、それとも……これだけ正確な射撃ができる人間に撃たれたか。


 とりあえずこの場を離れた方がいい。本能的に私は思った。

 小型ドローンをAIに操作させ、私は一刻も早く離れる為に森を走る。まぁ、今回は何も起きなかった。今回は。

 私はそのまま家へと帰った。これが一回目の侵入の結果。失敗に終わり、ドローンは敵に見つかって警備も強化されるだろう。しかし、どうしようもない。今の私にはどうしようもなかった。


 まぁ、それから三か月間は自ら動くことはなかった。そこはバッサリ飛ばそう。

 次の話は……さっそく終盤だな。先程の基地に自らの体を侵入させる。それが次に話すことだ。

 じゃぁ、さっそく話そうか。

@@@

小説の更新、半年以上サボると「半年更新されてません!」的な表記出るんですね。

どうも、作者です。サボっていた訳ではありません信じて下さいお願いします何でもしますから。


私、この半年間とにかく作品のレベルアップを目指し、第一話からの書き直しやら、書き溜めやら、なんやかんやしていたのです。

そのおかげか、かなり小説は書きやすく、読みやすくなりました。


本来今回の話は書き溜めの一部です。

書き溜めの放出は一年後程度を予定していましたが、こんな表記が出てくるなら仕方がありませんので、一章分だけ放出することにしました。


まぁ、以上が作者からの言い訳です。来年中には作品のリニューアルバージョンを出す予定です。題名も変更します!

その題名は……『三殺事件〜朽ち行く世界に終焉を〜」!!!

絶対……絶対完成させます。


以上、作者からでした!

@@@

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