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三殺事件 ~The End of World~  作者: Red
第十二章 第二次殺人鬼対決(第四幕「バートリとの過去」開始)
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第四十六話 メリーさん?

「あは……お、おもいだしたの………」


 バートリがそう言った。


「ん?え!?な、なにを!?」

「おねぇちゃん、あぶないの」

「ふぁ!?」


 アリスはメリーの振るったナイフをマスケット銃の側面で弾き飛ばし、メリーの腹に蹴りを入れた。


「ぼくのかこ、おもいだしたの」

「ご、語尾変わってる?」

「むかしのしゃべりかたなの」


 アリスは近付いてくるメリーに対し、マスケット銃を放ったがそれは容易に避けられた。


 メリーの振るうナイフを避け、アリスはメリーから離れるように距離を取った。


「こ、こんな突然思い出すもんなの!?」

 目を片方紅色に染めたアリスが言う。


「そんな、おもいだすしゅんかんなんてわかんないの。ただたまたまいろんなじょうけんがかさなって、おもいだしただけなの」

「じょ、条件?」

「うん、おねぇちゃんのあかいまふらーとか」

「あ、思った以上にいろんな条件だった」


 メリーがバートリに向かって走るが、アリスがそれを防ぐようにメリーを攻撃した。


 メリーのナイフはプロテウス製のマスケット銃に傷を与えて行っている。

(こ、攻撃が強い!!)

 アリスはそう感じた。


 アリスはメリーのナイフを弾き飛ばした。

 ナイフは空中をくるくると回り、地面に突き刺さった。


「よし、武器を奪ったら何もできないでs……」



 メリーの手にはナイフがすでに握られていた。



(!?)


 アリスは驚きながらも振るわれたナイフをかわした。


「ど、どっから出てきたそのナイフ!!」

 アリスはメリーに向かってマスケット銃を振るった。


 メリーは当然のようにそれを避けた。

 アリスはメリーから距離を離し、バートリの隣に立った。


「ふぅ………ふぅ………」

「おねぇちゃん、たいへんだね」

「そりゃ……今も殺人鬼の性格を抑えつけながら戦ってるんだし………」

「だいじょうぶ、ぼくがしばらくおさえてあげるの」

「い、いや!休んでていいよ!」

「おねぇちゃんこそやすんだほうがいい」

「ま、まぁ確かにそうだけど」


 バートリはメリーに対抗するように立った。身長差は凄まじいが、決して怯えていない。


「自ら出てくれると楽だわ」

 メリーがそう言う。


「おねぇちゃん、しばらくやすんでてなの」

 そうバートリは言った。


(け、気配が違う……一体過去に何があったの?そして何を思い出したの!?)

 そうアリスは思うのであった。


「ねぇ、めりーさんっていったよね」

「えぇ、そうよ」

「さっきのめりーとあなた、なんのつながりがあるの」

「だから言ったでしょう?私はそのメリーって奴は知らない。私一人だけよ」


「うそつかないでいいよ。こたえて」


「………それで答えると思ってるの?」


 メリーはバートリに向かってナイフを振るった。



 しかし、その場にバートリは既に居なかった。



「ほら、そんなこといったらほぼみとめたようなもんだよ。なんのつながりがあるの?こたえて」

 そう路地に響くバートリの声が聞こえる。


「答える訳ないでしょう?」

 そうメリーは返した。



 その時、突然陰からバートリが現れ、メリーの首筋をナイフで切りつけた。


「よわいね」


 バートリは首筋から血を流すメリーに向かってそう言った。

 しかし、メリーが傷口に手をかざすと出血は一瞬で止まった。


「凄いわね、気配に全く気付かなかったわ」

「まぁね、きみよりははるかにつよいの」

「その子供っぽい口調どうにかできない?」

「むりなの」


 バートリはまたもや一瞬のうちに消え去った。



 そんな風景をアリスは見て驚愕していた。

(は、早すぎる……見えない、自分でも………このあかい目でなんとなくは見えるけど完全な動きは見えない………)


 バートリの速さ、ジャックとも互角程度の速さだ。なんならジャックを超えているんじゃないか、そう思う。


 バートリは闇から突然現れ、メリーに気付かれることなくダメージを与えている。その戦い方からか、怪我をする気配なんてない。


(こ、これ私が入っても着いていけない……バートリが私を超えちゃってるよ………)


 バートリはアリスができなかった、メリーにダメージを与えるという事をしている。

 もうアリスを超えている。



 しかし、メリーもそう弱くない。

 バートリの動きに着いて行っている。バートリのナイフを弾き、バートリから距離を取るように逃げた。


「にげたね」

「えぇ、懸命な判断って奴よ」

「ねぇ、さっさとこたえてよ。なんのつながりがあるの?あいつと」

「まず教える意味があるの?何故あなたはそれだけ知りたいの?」


「………りゆうはない。けどじゅんすいにきになるだけ。こどもなんてそんなもんなの」

「それなら答えなくていいわね」


 メリーはバートリに向けて歩き出した。

「消えるように動けるのはあなただけじゃないのよ」

 とメリーは言い、姿を消した。


「ば、バートリ!そ、そのままじゃあぶ……」


「だいじょうぶだよ、あんしんして」





 バートリの目は紅色あかいろに染まっていた。





「な!?そ、その目!?」

「おねぇちゃんのまねをしてるだけなの」


 バートリは全く動かなかった。しかし目線はずっと動いている。まるでメリーを視認しているようだ。


(い、いや、このあかい目バートリも使えるの!?え、いやいやいや、私だけじゃないの!?)


 アリスにもメリーの動きはなんとなく見えている。しかしバートリはまるで相手を手に取って見ているようだ。目線が正確にメリーを追いかけている。


「そんなんでぼくにこうげきできるとおもってるの?」

「………」

 メリーはバートリに向かってナイフを振るった。




「おっそ」




 バートリはいつの間にかメリーの後ろに居た。


「な!?」


 バートリはメリーの後頭部に目掛けて勢いよくナイフを振り落とした。


「あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 メリーの凄まじい悲鳴が響いた。


「おねぇちゃん!」

「わ、わかってる!!」


 アリスはマスケット銃を構え、メリーの後頭部に向けて放った。

 飛んで行った弾は正確にメリーの頭を貫通し、メリーの頭はまるで石のように叩き割れた。



 そう、叩き割れた。



 メリーの頭の破片が飛び散った。血は殆ど垂れていない。


「………え?」


 メリーの体が崩れ始めた。灰のようになり、空中へと消えて行く。



 メリーの体はまるでマネキンのようだった。関節部に丸い関節があり、体は全て木のように固かった。


 アリスはメリーの頭の破片を拾った。

 その破片には目だけが付けられていた。端から崩壊して行っている。


「な、なにこれ……木材?いや、けどちょっと違うような………」

「………さぁ、わからないの。まずからだをさいせいすることができるのに、しんでしまうことがいみわからないの」

「た、多分脳を破壊されたからとか?」

「けどのうがない。せいめいかつどうにひつようなものがひとつもない」


 バートリはメリーの体を切り開いていた。中は空洞のようだ。少し血液が流れていた。

 しかしその血液も着々と崩壊して行った。


 しばらくして、メリーの服を含めた全てが消え去った。塵になって、消え去った。


「な、なんだったの?」

「………ふぅ、つかれたの」


 バートリは地面にパタっと倒れそうになった。アリスは急いで手を伸ばし、バートリの頭が地面に落ちるのを防いだ。


「危ないなぁ……」

「ひさしくたいりょくつかったの」

「で、すっごい気になるんだけど過去に何があったの?」

「……はなしたいけど………つかれてる」

「……ま、まぁ今度聞こうか」


「………おんぶして……つかれてるの………」

「ば、バートリがそんなこと言うなんて珍しいね」

「……ひとにあまえてそだたなかった。こじいんではこどくだった。だからいま、あまえたいの」

「まぁ、いいや。じゃぁおんぶしよっか」

「うん………おねがい」


 アリスはバートリを優しく背負った。これまでだったらバートリはこんな事をしなかっただろう。しかし今は違う。甘えたい。そんな感情が湧き上がってきている。


「じゃぁ行くよ」


 アリスはバートリを背負いながら暗い路地を歩き出した。

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