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三殺事件 ~The End of World~  作者: Red
第十二章 第二次殺人鬼対決(第四幕「バートリとの過去」開始)
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第四十一話 アリスの過去

 とある日、私は西地区の家でいつものように過ごしていた。


 妹のルージュリ・フォージャーといつものように人形遊びをしていた。

 まだ七歳と歳という幼いルージュリは、十九歳の自分にとってはまるで我が子のようだった。


 私を超えるような美しい金髪を髪の後方で乱雑に結ぶスタイル、それがまた幼さを醸し出していて可愛かった。




 けど、あんな事件が起きるなんて思ってなかった。



 この可愛い笑顔が失われるなんて思ってなかった。




 突然家の窓ガラスが割れた。


 殺人鬼が家に入って来た。


 一瞬だけ遠くに見えた殺人鬼の影、ただ黒く、黒く、恐ろしかった。

 

 母が真っ先に殺された。耳が引き裂けるような悲鳴を今でも覚えている。


 私は父と一緒にいた時だった。父は私をウォーキングクローゼットの中に入れ、すぐに鍵を閉めた。


 数秒後、父の悲鳴が聞こえて来た。


「あけて!あけて!妹を守らせて!!」

 私はそう叫ぼうとした。しかし、父が守ってくれた命、必死にそのセリフを堪えた。




 数秒後、ルージュリの甲高い悲鳴が聞こえて来た。




 声に出さなかったが絶叫した。耐えれない、こんなの耐えれない。私はそう思った。


 やめろ、やめろ、私から奪うな。


 けど、そんなこと思っても意味がなかった。



 しばらくして、殺人鬼は家の外に出て行った。


 私はすぐにタンスを蹴破った。妹の命、これしか頭に残っていなかった。


「ルージュリ!ルージュリ!!」



 廊下には父が赤い液体を被って倒れていた。もう死んでいる。直感がそう言った。


「ルージュリ!!どこに……」



 ルージュリはいつも遊んでいる部屋で血を被っていた。



 心から叫ぶ。


「ルージュリ!!!!!!!!!」



 すぐにルージュリを抱き抱え、病院に向けて走り出そうとした。


 しかし、遠くからこう囁かれた。



「無駄な行為だぜ」



 そんなの関係ない。まだ助かるかも。早く助けないと。



 そんな事で頭がいっぱいだった。擦れた男の声の主を見るなんて考えはなかった。


「奴の刃に当たっちまったらもう死んだも同然だ。しかもそれだけ体が小さいとなると、もう出血死してるだろ」




「黙れ!!!お前程度に何が分かんだよ!!!!!」




 私は渾身の力でそう叫んだ。


「………我なら全て分かる。我も君と同じように両親を殺された身だ。彼奴にな」


「私は今目の前で両親を失った身なんだ!!けどまだルージュリは助けれるかもなんだよ!!!」


「………そうだよな、最初は助けようとする。しかし後に分かるんだ。こんな事しても意味がなかったと、後悔する。罪悪感に打ち拉がれる。それならば、助けない方が良い」


「………なんでだよ………もし助かったらどうすんだよ!!!」






「こんな会話に乗った時点で助けようとする気は無いんじゃないか?」






 そんな事ない。本気で助けようとしてた。けど、言い訳が見当たらない。


 相手の発言に言い返せない。


「………プロテクター、君の妹を殺した彼奴を追っているチームだ。特別に我が招待しよう。プロテクター創設者『ハロルド・ジョーンズ』が」


 突然の勧誘を受けた。


 しかし、悪い気は全くしなかった。


 襲われた恐怖、救えなかった罪悪感、その後には奴にやり返したいという強い強い『復讐』の心が湧き上がって来た。


 殺したい、奴を殺したい、痛め付けて殺したい。


「………………やってやる……」


「………ん?」







「殺してやるって言ってんだ……あのゴミクズ野郎を」


 ○○○


「ってな過去だよ、二年前かな?今思い出しただけで吐き気がするような苦い過去」


 アリスとバートリは普段の秘密基地の中に居た。


「へぇ、せいしんをこわすのもむりはないね」


 アリスとバートリの服からは返り血が消えており、綺麗になっている。普段が汚れまくっているだけかもしれないが。


「けどさ、バートリちゃんの過去も気になるよね、私の苦い苦い過去は話したんだしさ」

「………むかしおやにすてられたってことはおぼえてる。けどそれからのことはおぼえてない」

「………なるほどね、まぁ全然捨てられた事気にしてなさそうだし、まぁ思い出さなくてもいいんじゃない?」

「まぁまたおもいだしたらはなす」


 バートリの秘密基地も以前に比べれば凄まじく綺麗になっている。アリスが片付けたのだろうか、物が整理され、トイレへ続く扉がしっかりと開けられるようになっている。


 前から数日の時が過ぎ去った。その間にライフラインを整えていた。シャワーまでも即興だが付け足されている。


「で、今日の夜はどうする?前みたいに私が軽い精神崩壊で暴走したら大変だけど」

「だいじょうぶ、まえだっていっしゅんでぼくがねむらせた」

「お、頼もしいじゃん」


「おねぇちゃんのかんりがぼくのやくめになってるきがする」

「あはは、まぁけどそれがありがたいよ、いつ精神崩壊を起こすか分からない。だからそれを鎮めるバートリちゃんが必須」

「まぁわるいきはしない。あとなんでさいきんばーとりちゃんよびなの?」

「………さぁ?妹の事もルージュリちゃんって呼んでたしその癖かな?」

「まぁいい。じゃぁきょうのかつどうをかいししよう」

「そうね、じゃぁ行こっか」


 バートリとアリスは変わらずに狭い隠し通路を進んで秘密基地を出て行った。

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