表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三殺事件 ~The End of World~  作者: Red
第十一章 番外編 メリーさんの日常
40/50

第四十話 番外編 こだわり(第三幕「残殺と師匠」終了)

 列車の中は地獄でも始まったかと思うほどの混乱状態でした。


 突然天井を貫通してきた鉄の塊が数人の命を奪い取り、血で赤色に染まった車内は一層地獄を演出しています。

 しかも閉鎖空間、逃げる事が出来ないという条件が人々にのしかかります。


(えっと………ターゲットは八号車ね………)


 人々はメリーさんの体をすり抜け、暴れまわっています。しかしメリーさんにはそんな事関係ありません。

 後方六号車から爆発音がしますが何一つ気にしません。ただターゲットを殺す、それのみです。


 しかし、八号車に着いた時、事件が起きました。




 ターゲットとなった男が脳天から派手に赤い薔薇を咲かせて死んでいました。




 ターゲットが他人に殺された。これ以上メリーさんにとって不服な事はありません。




(やってしまった……もっと早くターゲットを始末しておけば………ま、まぁまだ大丈夫、間に合うはず………)


 メリーさんは男の胸に向かってナイフを突き刺しました。ほぼ返り血は飛んできません。


 メリーさんはナイフを引き抜き、そしてナイフに付いた血を舐めました。


(………こんなんでねぇ………)

 メリーさんの表情は変わっていませんでした。


(なんで私はこだわっているんでしょう………別にターゲットがどんな手法でもいいから死ねばいいのに……自らの手で殺そうとする………なんででしょう………)


 そうメリーさんは自問自答します。


 天井からは鉄の塊が無数に降って来ますが何一つ気にも留めません。


(一体誰が決めたって訳でもない………ただ『雨』から言われた通りの事をしているだけ………それなのに何故私はこだわりという感情を持っているのでしょう?)


 その時、窓の外にジャックの姿が映りました。


 その瞬間、メリーさんの周りはまるで時が止まったかのように遅くなりました。


(別にあのままジャックを死なせたら、私はターゲットの処理に成功することになる。なのになぜでしょう?)



 メリーさんはターゲットの男から魂を削り取り、壁をすり抜けてジャックを抱きかかえました。





(どうしてターゲットを守る動きをしてしまうのでしょう?)





 メリーさんの体は浮いていました。これまでにない能力が咄嗟に開花しました。



「もう、ほんと非力ね」


 メリーさんがジャックに向かってそう言いました。


(え?何が起きてるの?私浮いてるの?しかも汽車と同じスピードで移動してるの?)

 メリーさんは内心混乱状態でした。


「ふえぇ!?」

「情けない声出さないで、ほら、さっさと奴を殺しなさい」

「い、いやそんなことよりなんで浮いてるの?」

「細かい事は気にしないで、禿げるわよ」

「はげんわ」


 メリーさんは渾身の力をふり絞り、ジャックを汽車の屋根目掛けて放り投げました。


「ありがと、メリー」

 殆ど汽車の走行音で聞こえませんでしたが、微かにジャックがそう言いました。


(………どうなってるの?この体………)


 メリーさんは車内に戻りました。


(宙に浮くなんてことこれまでなかったわ………一体何が起きてるの………)

 メリーさんは無意識のうちに歩きながら考えていました。


 ここまでメリーさんが考える理由、それは



(新しい能力が開花することはないはず)



 メリーさんの既存能力の強化は出来ようと、新たな能力は開花できないのが普通です。

 しかし、それでも新たに浮遊能力を手に入れました。上記にない事です。


 メリーさんは無意識の内に七号車まで移動していました。

 その時、一つ気付きました。


 ピ、ピ、という音がします。


「………ばくだn」



 爆弾が起爆しました。メリーさんは六号車後方まで爆風によって飛ばされました。

 いくら物理が効かなくても、爆風は感じます。


 恐らく周りに居た大勢の人間もこれに巻き込まれたでしょう。


「い………いったいわね………」

 体が少し痛みますが、手の平を当てると忽ち傷も治ります。


(こ、これ大丈夫かしら、ジャックちゃん………)

 あまりにも攻防が激しく感じてきました。もう列車の大半は崩壊してるのではないでしょうか。


 前方三両、ここらくらいしか生き残ることは無理そうです。


 しかし数分もしない内にその希望は打ち砕かれました。



 ジャックが窓ガラスを割りながら汽車内部に侵入し、前方車両に向けて勢いよく走り出しました。

 それと共に鉄の塊も尋常じゃない量降って来ます。



(あーあ、これはもうこの汽車ダメそうね)


 メリーさんは走ってくるジャックを避けながら考えました。

 恐らくジャックはメリーさんの事が見えたでしょうが、何一つ気にしていませんでした。


 常に聞こえる破壊の音、常に聞こえる悲鳴の音、これほどの地獄もそうそうありません。

 人は暴れ、自分だけでも生き残ろうと必死です。


 しかしそんな努力も無意味です。ジャックとその敵の争いにより着々と人数が減っています。


(なんとも派手な戦闘ね………そろそろ列車が爆発してもおかしくないわ)


 メリーさんは汽車の壁をすり抜け、汽車の外に避難しました。

 

 汽車がメリーさんを離れて数秒もしないうち。




 ドゴンという音と共に汽車の前方が吹き飛び、汽車が脱線しました。





(やっぱりこのタイミング………あれ?)


 おそらくジャックと戦っていたであろう敵が無傷のままでした。


 メリーさんと同じように汽車が爆発する前に逃げています。



 そして遠くに見えました。




「ニャー!!!!(やめろおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!)」


 リッパーがその敵により殺されました。



「………」



 メリーさんは唖然としました。

 確かにこうすればジャックの動揺を誘いだせます。


 しかし、よりにもよってそれに選んだのが、ジャックが一番可愛がっているリッパー。


 メリーさんは直感でこう思いました。


(この男………ジャックに殺されるわね)


 男は汽車の残骸を乗り越えて消えて行きました。



「………あーあ、魂の量が凄まじいわ………もうほぼみんな死んじゃったかしら」


 メリーさんは汽車の残骸を見ながら言います。


 そして汽車の周辺を一周回り、自分の探し物が見つかりました。



 リッパーの死骸です。




「まだ間に合うわ、リッパー、逃げずに居てちょうだいね」

 

 メリーさんはリッパーの腹に手を当てました。するとみるみるうちに傷が塞がっていきます。

 他人にも付与できる治癒能力、それがこのメリーさんの強みです。


 リッパーの腹の傷は埋まりました。


(………けど、まだよ)


 メリーさんはおもむろに空中に手を伸ばしました。


 そして、何かを掴みました。


 その掴んだものを無理矢理リッパーの体に押し込みました。

 しばらくして。


「………………ニャァァァァァァァ!!!!(………………いってええぇぇぇ!!!!)」


 リッパーが起き上がりました。


「フニャアアアアァァァァ!!!!!!(言うまでも無い悲鳴)」

「あらあら、元気がいいわね」

「ニャァァァァァ!!!!!ニャー!!!(イッテェェェェ!!!!!何が起きてんだ!!!)」

「生き返らせてやったのよ」

「ニャー……………ニャ、ニャー!?(ふぅ……………め、メリーが!?)」


 起き上がったリッパーは周りを見渡しました。恐らくジャックの事を気にしています。


「ニャ、ニャー!!(じゃ、ジャックはどこだ!!)」

「いえ、まだ行かない方がいいわ。私達が出るのは戦いが終わった後の方がいい」

「ニャ、ニャー!!ニャー!!!(な、なんでだよ!!助けにいかねぇと!!!)」



「今の私達じゃただの足手纏いよ、行っても意味がないの」



「………ニャー……(………確かに正論だ……)」

「今のジャック、かなり強くなってるの。私じゃもう立ち向かえない程度には。だからそんなジャックと張り合っている相手に私たちの攻撃が通用する筈が無いの」

「ニャー……ニャーオ(お前に正論を言われるとは……けど気分が落ち着いた)」

「少し待ちましょう。いずれかジャック自ら私達の所に来るはずよ」


 遠くからは金属がぶつかり合う音が聞こえます。ジャックとその敵の戦い、かなり派手なようです。


「所で一度死んだ身、何か気付いたことはない?」

「………ニャァ?(………はぁ?)」



「第四の壁を乗り越えたんじゃない?」



「………ニャー(………それ話したら作者から怒られるような事だろ)」

「確かにね。じゃぁやめときましょう」


 メリーさんは地面に座り込みました。

 そして無理矢理リッパーを掴み上げました。


「ニャー!!ニャー!!!(やめろ!!ジャック以外の人間からの愛情はいらん!!!)」

「ジャックちゃんにデレデレじゃない。あなた猫の癖に」

「ニャ、ニャー!(そ、そりゃ飼い主には愛情を持つだろ!)」

「ふふ、必死になってるわよ」


「ニャー(というかさ、お前本当にジャックとどう言う関係なんだよ)」

「さぁね、自分でももう分からなくなってきちゃった……ひとつ思う事があるのよ」


 メリーさんは一息置いて言いました。



「もうジャックを殺さなくてもいいかなって」



「ニャー(前話したターゲットの関係はどこ行った)」

「さぁね。けどなんだかあの子を攻撃するの疲れたってだけ」

「ニャー(けどアイツもアイツでお前と戦う事を楽しんでるけどな)」

「あら、そうだったの?じゃぁ戦う事をやめないわ」


 その時、遠くからの戦闘の音が鳴り止みました。


「そろそろよ、ジャックちゃんの所へ行かないと」

「ニャー(そうだな)」


 メリーさんとリッパーは立ち上がり、戦闘の音が聞こえていた方向へと走り出しました。






 ジャックは地面に倒れていました。服がボロボロになっており、どれだけ激しかった戦いかを物語っています。


 そして、髪の毛の一部分が赤色に染まっていました。


「ジャック!!ジャック!!!」


 そうリッパーが"喋りました"。


(………喋ってる?)


「おいジャック!!しっかりしろ!!」

「……う………うぅ…………」

「ニャー!!!!(ジャック!!起きろ!!)」


(あれ?気のせい?)


 その時、ジャックが目を開きました。

 紫色に染まっており、今失明してもおかしくないでしょう。


「……………りっぱー……?」

「ニャー!!(そうだ!リッパーだ!)」



「…………リッパー!?」



 ジャックが飛び起き、リッパーに抱き付きました。かなりの力です。


「ニャ、ニャー!!(く、苦しい苦しい!!)」

「よかったああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!いきててよかったああぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「……ふふ、幸せそうね」


 メリーさんは無意識のうちにそう言っていました。


「め、メリー!?いつのまに!?」

「そんな事よりジャック、髪の色どうしたの?」

「え?あ、かみ?」


 ジャックの髪の毛は普段の水色に戻りかけていました。


「ニャー(何があったかは知らんが、とりあえず生きてるってだけで十分や)」

「……けど、リッパーってぜったいしんだはずだよね?」

「ニャー(あぁ、一度は死んだ。何があったかはメリーに聞く方が早い)」



(いやぁ……幸せそうねぇ……小さい子が喜ぶ所ってこんな可愛いのね、これでしか得られない栄養素があるわ……あぁ可愛い………)


 メリーさんはにったりとした顔でそんな事を考えていました。

 そして、今の呼びかけが自分に対するものだと気付きました。


「え?あ、はい?」

「ニャー(ジャックに何があったか説明してくれ)」

「あ、なるほどね」





 このような会話を交わしたジャックとメリーさん。会話の詳細は第三十三話をご覧ください。



 なんやかんやあって、メリーさんは師匠の家の中を徘徊していました。




 そして、メリーさんはとある物を発見しました。


「………………地下研究施設?」


 その時、後ろから足音が響いて来ました。



「………メリー、お前もよく頑張った」



 後ろから声がします。しかし、全神経が振り向くなと言っています。



 声の主はカツカツとした足音を立てながら家を出て行きました。


「………え?」


 メリーさんは何が起きたのか、全く分かりませんでした。


 しかし、一つだけ相手の気配で気付いたことがありました。








































「………………………雨………?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ