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三殺事件 ~The End of World~  作者: Red
第十章 思い出の日々
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第三十七話 事件の日々

 俺の名前は………もういいや

 ちょっとした事件が起きたのはジャックが十歳程度の時だ。

 夜、外に出て行ったジャックは「りんごでも取って帰ります!」と元気よく言っていた。



 しかし、帰ってこなかった。



 基本夜十時程度に家を出て、十一時程度に帰ってくる。しかしジャックは十二時を過ぎても帰ってこなかった。

 俺とアリットはもう嫌な予感しかしないとスパイ時代の活動服を身に纏い、探しに行くことにした。


 一応二人とも元スパイ、戦闘能力や情報処理能力は人より優れている。


 西地区の広大な街をアリットと俺が駆け回った。ジャック一人を探す為に。

 しかし、全然見つからない。探しても、探しても、見つからない。


「あの子、どこ行ったの」

「………分からない。普段ならば帰ってくる筈だ。一体何処にいるんだ……GPSでも付けておくべきだった」


 そんな時、遠くに赤い煙が昇っているのが見えた。


「残殺が作った信号発煙筒の色………間違いない、残殺だ」

「救難信号………よっぽど危険な事が起きてたりしたら………」

「大丈夫だ、奴にも戦闘能力はある」


 俺とアリットは煙の昇る方向へと走った。




 煙が昇って来た所、そこは何もない町の一角。発煙筒が一つ転がっていた。やはりジャックの物だった。


「やはり残殺の物だ、近くに居る………反応は見つからないのか?」

「………見つかったわ、南方向で誰か引っかかった」


 そう言うアリット、スパイ時代はワイヤー使いとして活動していた。自分が通った所にワイヤーを張り巡らせ、それに引っかかった奴の位置を察知する。


「他にないのならばそこへ行こう」

「ええ、そうしましょう」


 てな感じで俺たちは南方向へと超スピードで走った。


 そして反応があった所に着いた時、そこには誰も居なかったが。


「………音が聞こえる。無数の音だ。囲まれている」

「ええ、そんなの理解してるわ」


 とまぁ囲まれていたようだ。しかしこちらは最強のスパイと言われた男、大丈夫だと思っていた。

 しかし数秒後、自分達の弱点を突かれた。



 足音の内の一人が俺たちの前にやって来た。小脇にジャックを抱えて。



「んんぅ!!!」



 ジャックは小脇の中で暴れていた。


「お前らがコイツの飼い主か?」


 とジャックを抱えていた男が言う。奴は赤褐色の肌をした三十歳くらいだったかな?そこまで良いイメージを抱かない見た目だった。


 俺達は攻撃できなかった。奴の手にはナイフが握られ、それはジャックの喉元に伸びていた。


 俺らの弱点、それはジャック、残殺の事だ。


 とりあえず相手を刺激しないよう、ナイフを足元に捨てた。


「へへ、分かってんじゃねぇか」

「其奴を離してくれ、頼む」

「そう易々と渡すバカが何処にいる。要望の一つや二つ付けるさ」

「要望とは何だ」

「金と武器だ」

「……手短にありがとう」


 まさかこんな男にジャックが負けたのか?少しそう考えた。

 相手は筋肉量はあるものの戦闘自体はそこまで慣れていない様子だ。力技でジャックを押さえているだけ、技自体ですぐに抜け出せるだろう。


 しかも、ジャックの腰にはまだ一本ナイフが残っている。



 その時頭に過ぎる可能性、罠。



「………なるほどな、殺意自体は本物、これは残殺側が此奴らを騙しているのか」

「何言ってんだテメェ?」

「あら、貴方も気付いたの?けど、少しは乗ってあげても良いんじゃない〜?」




「………ざんねん、騙せると思ったんですけどね」




 ジャックのスカートの中から煙幕が吹き上がった。


「な!?」


 煙幕で見えなかったがその時に男はジャックのナイフに刺されたのだろう。


「バレてしまってはしょうがないです。アリットお姉ちゃんには少し申し訳ないですけど、師匠、少し遊びましょう!」


 ジャックが煙幕の中から飛び出し、俺に向かってナイフを振るった。

 普段の事だ。それは簡単に避けたが、ジャックとは違う方向から銃声がなった。


 銃弾は俺達に当たらず、飛んで行った。弾丸は恐らく9mm弾、ただのハンドガンと認知した。


「アリット、その他の敵を頼む。ジャックは俺に任せろ」

「え〜?私も残殺ちゃんと遊びたいよぉ〜」

「黙れ」


 俺とアリットは遊びだと思うと一瞬で気が抜けた。複数の敵と戦うなんて事は慣れている。


 アリットは煙幕の中へと消えて行った。


「残殺、少し大掛かり過ぎないか?」

「いいえ、このクソジジイ共が勝手に私をおそってくれたので準備はほとんどしてませんよ」

「口が悪い、後で叱るぞ」

「ごめんね、けど叱れるんなら叱ってみてよ」


 ジャックの発明品の一つ、小型閃光弾が投げられて来た。

 咄嗟に目と片耳を塞ぎ、背後に流れている煙幕の中に入った。片方の耳さえ生きていれば戦える。

 数秒後、凄まじい光と音が腕越しに聞こえて来た。


「師匠、私のエリアに入っちゃいましたね!」


 煙幕の中で何かが光り輝いた。

 それはジャックの振るうナイフだった。


 そのナイフは単調に俺に向かって振るわれた。そう簡単に俺にナイフは当たらないぞと言うように俺はそのナイフを握った。



 しかし、そのナイフは誰も握っていなかった。



「……?」


 空中に浮いたナイフ、罠か。そう俺は悟った。


 その瞬間、俺の周り、全周囲から同時にナイフが飛んで来た。


「小型追尾ナイフ型ミサイル!」

 そうジャックが叫んだ。


 そのナイフは俺に向かって全て飛んで来た。



 しかし、俺もそう弱くはない。



「残殺、俺の事を舐め過ぎだ」


 俺は手に持っていたワイヤーを強く引っ張った。それにより、地面に置かれていたワイヤーが一気に空中へと広がり、それによってナイフ達は弾かれた。

 俺ながらこの防御はキマッたと思った。


「な!?し、師匠も中々やりますね。私が数ヶ月掛けて作ったナイフなのに……」

「……何故煙幕の中が見える?」

「さぁ、勘ですよ、勘」


 俺はその場で掴んだナイフを思い切り振るい、煙幕を斬り裂いた。


 煙幕が晴れると目の前にはジャックが居た。赤い目をしている。


「さぁ師匠、こっからはタイマンという奴です」

「掛かって来い」


 ジャックはナイフを握り、俺に向かって突進した。

 あまりにも単調な攻撃だ。俺はジャックの腹を一突きし、ジャックからナイフを取り上げた。


「いったいじゃないですかぁ〜………」


 ジャックは腹を押さえ、地面に蹲っていた。


「単調過ぎる。普段のお前は何処に消え去った?」

「いや〜、ギャングに捕まって少し武器を消費したんですよ。武器が中心になる私の戦い方じゃ今は勝てません」

「良く分かっているじゃないか。そう言う時は逃げるのが最善……」


「けど、さっきも言ったように師匠の弱点を見つけたんです。私自身が弱点なんですよね?」


 ジャックが立ち上がった。



「実は私の体、爆弾が仕込まれてるんですよ。あと数分後、起爆します。さぁ、どうします?」



 当然ハッタリとも言える台詞、しかしジャックの目はその時本気だった。本気の形相、赤い目がまるで俺を締め付けるようだ。


「……何故そんな危険な事をする?」

「さぁ、降参します?今降参すれば爆弾を投げ捨てますよ」

「俺の問いに答えろ」

「イヤです」


 俺はジャックに飛び掛かった。まず爆弾が何処に仕込まれてるかわからない。恐らく衣服の中、背中だろう。


「降参を認めるまで逃げますよ」


 ジャックは飛び掛かる俺を避け、ギャングから盗んだであろう銃を向けた。


「………降参すると言っても爆弾を投げ捨てないだろ、お前なら」

「そりゃそうですよ、身を削って人の命を削り取る。昔からこれです」

「じゃぁお前の要望は何なんだ」



「師匠、あなたの命です」



 冷ややかな殺人予告を受けた。


「……なるほどな、力技で爆弾を剥ぎ取るしかないと……以前から思っていた。お前が明らかに俺を本気で殺しに来ているとな」

「あはっ!気付いてまちっ……ましたよね!」

「そりゃそうだろう。実弾を俺に撃ってくるレベルなのだから」


 ジャックは銃を向けたまま固まっている。


 いや、固まらされていると表現した方が正しいか。


「ほら、こんなじきゅ……じかんかせぎちて……してたらばくはちゅ……ばつはつしますよ!!」

「体の異変に気付いてるんじゃないのか?」

「あ、あはっ……そんな、からぢゃ……からだが……うごかにゃい……なんて………ね…………」


 ジャックはパタリと倒れた。


 俺は突進した時に神経麻酔毒針をジャックの首に刺していた。それが今頃まわり、ジャックの神経を狂わせた。


「あ、あはは………しちょうには…………かてましぇんね…………」


 俺はジャックに駆け寄り、体についている爆弾を確認した。

 しかし、そんな物無かった。


「えへへ……うしょです…………」


 あまりにも完璧な演技、俺は驚いた。今の今までジャックが爆弾を持っていると思っていた。


「……凄いな、今の演技」

「ひとをだましゅのは……ときゅいです………」


「………喋り方面白いな」

「だまりぇ!!」

「言葉が悪い」


 その時、アリットも周りの敵を倒し、俺の所に合流した。


「ざ、残殺ちゃん大丈夫!?あなた、怪我させてないよね?」

「安心しろ、神経麻痺毒のみだ」

「いえ……はらなぎゅられましちゃ………」

「……グフッ……い、喋り方……うふっ………あなた、この子の腹殴ったの?」


「…………認める」

「へぇ、後で同じ事やってあげる」

「………すまない」



「いえ……わたしもわりゅいでしゅ………」



 そんな喋り方で白状されても困るが、まぁ黙って話を聞く。


「わたしのために……やってくりぇてたんでしゅ………」


「………そ、その話し方………ぐふっ………うん、真面目に話を聞きましょう」

「わたしのうしょに………かんぜんにだましゃれて……わたしゅいのいのちをしゅくおうとしてたんでしゅ………」

「………本当なの?それ」

「………ひゃい……」

「………あなたも少しは見直したわ、やるじゃない」

「少しとは何だ」


 ジャックはそこで恐らく寝た。

「………寝たな」

「こんな突然ねぇ………」


「ところで、周りに居たギャングたちは何処に行った」

「さぁ、地獄じゃない~?」

「………なるほどな、とりあえず帰ろうか」


 俺はジャックを担ぎ、走り出そうとした。しかしアリットが「そんな乱暴な持ち方じゃなくて優しく抱くように抱いてよぉ~」と言ったのでジャックをおんぶする形になった。あまりおんぶをすると動きにくくなるから嫌だが、今はしょうがない。



 てな感じでジャックをお持ち帰りした。表現が危ないかもしれないな。


 帰ってからジャックはいつものように十時間以上寝た。睡眠がホントに大好きなんだろうな。

 あとアリットに腹を殴られた。




 こんな感じで一つの事件が終わった。ここで今日の話を終わろう。

 次の話でジャックと俺の話は終わりだ。

 まぁたのしみにしてくれよな、じゃぁな。

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