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三殺事件 ~The End of World~  作者: Red
第十章 思い出の日々
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第三十六話 過ごした日々

 ジャックと過ごした日々、それは案外楽しかったと今になっては思う。


 やぁ、俺の名前は黒柳、真の名前は知らない。


 今回も前回に引き続き、ジャックとの過去について語っていく。

 前回の続きから話そう。


 まぁ、アリットは罠に仕掛けて動きを封じたからよかったとして、ジャックの飼い猫、当時はふたばという名前のリッパーだ。


「ニャー。ニャー(お前、流石にあれはやり過ぎだ。年齢差を考えて力を調節しろ)」

「………すまない」


 なんだかリッパーの立場が俺よりも上のような気がする。リッパーに逆らえない。


 まぁジャック自体の怪我は全く問題はなかった。一瞬で傷が塞がるんだからな。

 ジャックは罠に掛けられたアリットを助けていた。


「ありがとねぇ〜、少女ちゃ〜ん………そういえばこの子の名前、どうするの?数年間代名詞で呼んでるけど」

「……確かにそうだな。名前か」


 これまでジャックは自分も呼ぶ事がなかったし名前が無かった。

 罠から這い出て来たアリットは小さいジャックを持ち上げて移動して来た。


「…………残殺ざんさつってのはどうだ?名前」


 そう私は脊椎反射で言った。


「…………嘘でしょ?嘘だと言ってね?」

「冗談抜きで今考えた名だ。残酷に殺すと書いてな」

「………少女ちゃんはどう思う?」

「……わかんない」

「………」


 結構ジャックの名は残殺で決まった。

 アリットは不服そうにしながらジャックと遊ぶ事にしていた。



 てな感じでジャックの名前が決まり、ジャックと俺の関係が深まった……のか?まぁいい。


 ジャック自体普通の少女、遊び事を良くしていた。


 その中の一つは家に罠を仕掛ける事。


 何気なく家を歩いていると……

「……うぉ!?」

 という風にナイフが飛んでくる。しかも、殺傷用ナイフ。


「かかりませんねぇ、師匠」


 と屋根の上からジャックが降ってくる。


「こんな罠いつの間に用意していつの間に起動させてる」

「さぁ、教えてしまったらバレちゃいます。ここはひみつにしておきます」


 と教えてはくれなかった。恐らくアリットとの協力だろうが。

 


 もう一つ、ジャックがハマっていた遊びが一つある。

 それは物作り、工作だ。


 特に驚いた物が何個かあるしその中の一つを紹介しよう。


 一つ目に作った物、煙幕だ。


 突如ジャックが「ししょ〜」と言いながら近付き、その作った煙幕を起動させた。

 煙幕くらいで驚くような物ではなく、俺はその煙幕からすぐに離れた。


 しかし、その煙幕の何が凄いか、それは凄まじい大きさだという事だ。

 ジャックが作動させた煙幕は手榴弾サイズ、ピンを引けば煙幕が作動する仕組みだ。


 しかし、あの小ささからは考えられない程の煙幕が放たれた。その煙幕は一瞬で家を包み込んだ。


「ちょ、ちょっと!?何が起きてるの!?」

 と咳き込みながら出てくるアリット。


「………ごめんなさい」

 と想像以上の量に驚き、謝るジャック。


「………俺の工作場を借そう。もっと作れ、もっと凄い凄い発明をしろ」

 とジャックの成長を受けて言葉を放った俺。


 そして数秒後、火災報知器が鳴った。




 そんな感じの発明、ジャックはこの物作りが趣味の一つに入ったようだ。

 他にも色々な物を作っているがまた今度話す。


 ここからしばらくは特に大きな事件も無く、平和に過ごしていた。平和かどうかは少し微妙だが。


 ジャックは九歳程度になり、夜に外へ出るようになった。当然、殺戮行為をする為だ。

 特に止める事は無かったが、何か事件が起きないかと毎日思ってはいた。


 そしてジャックが暴れるようになったせいで街からは人が激減し、そのジャックを匿っている自分の家がいつ襲われるかヒヤヒヤしていた。

 まぁそんな事は無かったが。


 俺はこの街から人が消えた事を良いように取り、銃撃の訓練をさせる事にした。

 発砲音で警察が来かねないし、一般人の銃の所持は違法だ。しかし、気付かれなければ犯罪ではない。いや、そんな事はないかもしれん。


 まぁそんな軽い気持ちで始まった銃器訓練、私はまず初心者でも扱い易いスライド式ハンドガンを渡した。ジャックの手に収まるサイズだ。


 一応訓練用のゴム弾を装填した。

 的は即興で作った紙の的、ゴム弾程度でも貫通する為これにした。


 アリットも見守る中、ジャックは銃を構えた。まずは銃の構え方も教えない、ジャックの素の構えだ。

 銃を両手で構え、肩を頬に密着させ、的をじっくりと狙った。




 その時、紙の的が風によって飛ばされた。




「あーっと、少し待て、的を張り替え……」


 パン、という発砲音が二発同時に響き渡った。

 ジャックは銃を片手で構え、銃先を空に向けていた。


 何が起きたか、察する通りジャックは空中を飛んだ的に向かって銃を放っていた。


「流石に当たらないわよ〜、そんなんじゃ」


 そうアリットも呆れながら言う。




 しかし、地面に落ちて来た的は横から切られたように、真っ二つになっていた。




 ジャックの放ったゴム弾が正確に的を側面から切り裂き、的を二つに切った。これが真実だろう。


 それにも驚きだが、もう一つ放ったゴム弾は?



 数秒後、そのゴム弾は正確に俺の頭の上に降って来た。



「???????」

「???????」

「………」


 アリットと俺は一瞬の内に起きた事を瞬時に理解できなかった。


 整理するとジャックの放ったゴム弾片方が的の側面に当たり、もう片方のゴム弾は俺の頭の上に降るように調節されていたと言う事だ。


 うん、自分でも意味がわからん。


「……残殺、予測してやったのか?」

「は、はい。予測というか……勘で………」

「……勘……私少し休んでくるわ」


 そう言いアリットは建物の中に入って行った。


「本当に、勘でやったのか?これまで本当に銃器を扱った事はないのか?」

「はい、勘だけを頼りに、銃器なんかは触った事がありません」

「………凄いな、褒めよう」


 俺はもう褒めるしかなかった。ジャックの柔らかい頭を撫でてやった。


「えへへ〜♡」


 と可愛く笑うが、その裏には凄まじい才能が眠っている。

 俺は遠くに居るリッパーに視線を合わせた。


(コイツ……ヤバくないか?)

(昔からそんなんだ。勘だけで何でもやってのけた)


 そう俺とリッパーは視線だけで会話した。


「……師匠の手ってあったかいですね、まるで血に触れてるような」


 ジャックがそう言う。


「例えを変えろ、血なんて表現じゃなくて『まるで猫に触れてるような』にしろ」

「いやで〜す、私は意思が固いんですよ?」

「………生意気だな」


 俺はジャックの腹を掴み、空中へと投げ飛ばした。


「うわあぁぁ!?」

「ちょっとした罰だ」


「ぐえっ!!」

 ジャックは腹から地面に着地した。


「ニャー(お前、後で覚えとけよ)」

「……すまない、今回ばかしは見逃してくれ」

「ししょ〜、いたいですよ」


 ジャックは地面にうつ伏せで倒れたままだった。


「………しょうがないな」

 と俺がジャックに手を差し伸べた。


 しかし、ジャックはその腕をしっかり掴んだ。まるで離さんと叫ぶように。


 数秒後、いつも仕掛けてある罠であるナイフが飛んで来た。

 いつもの事なのでそのナイフを俺は簡単にキャッチした。


「ん〜、引っかかりませんよねぇ、師匠」

「これと同じ手を八回は使っているだろう」

「え?そんな使ってました?」


 俺はジャックの手を振り払い、リッパーに謝罪に行った。





 なんかメインであった銃の訓練からかなり話が逸れていたな。まぁいい。

 こんな平和な日々?を送っていた。


 しかし、次の日ちょっとした事件が起きる。


 まぁ何が起きたかはまた次話そう。今日は一旦じゃぁな………この挨拶意味あるのか?

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