第二十七話 番外編 敗北?(第二幕「長い長い長い夢」終了)
「キャハ!!ギャハハハハハ!!!」
アリスがそう笑っていた。
(え?い、いった………むね……きられてる?)
ジャックは突然の事に驚いた。
(な、なにがあったの!?え!?え!?!?)
その時、後ろでカチャリと音が鳴った。アリスがこちらにマスケット銃を向けているようだ。
(う、うそ!?アリスに負けたの!?い、いや、そんなわけない、落ち着いて………)
ジャックは足に力を入れ、それを一気に爆発させた。
ジャックは一瞬の内にアリスの背後に移動した。
「痛いじゃないか……服も破れちゃったし………」
ジャックは平然を装ってそう言った。しかし、脳内では。
(いやいやいや、嘘でしょ噓でしょ!?!?こ、これに負けちゃったの!?し、信じたくない!!)
ジャックはアリスに向かってナイフを振るい、アリスを遠のけた。
(いや、ちょっと………うん、いったん逃げよう、後の事はあとでいい………)
アリスはジャックにマスケット銃を向けてきた。しかしジャックはもう戦う気がない。
「い、いや……流石に戦わないよ、もう」
ジャックはクールにそう言ったが内心では焦り散らかしている。
(ちょ、胸すっごい痛いんだけど……かなり豪快に切り裂かれちゃった………)
「キャハハハハ!!!!にげるきぃ???」
「……そうだね、なんか、戦う気が失せた……」
ジャックはナイフを下し、すぐに走りだせる体勢を取った。
「キャハハハハ!!!そうはぁさせないよぉ???」
「あっそ」
ジャックはそう言い残し、後方へと全速力で走り出した。
(考えたくない考えたくない………アリスなんかに敗北するなんて……)
ジャックは路地から出て、自分の家がある南方向へと走っている。
「………けどよくよく考えたら意識なしに勝てる訳ないじゃん」
ジャックには意識が無かった。おそらくだがその間にアリスと戦っていた。
(というか意識ないってよくよく考えたらどういうこと………まず意識なしで耐えてたの!?それならしょうがないか……)
ジャックはゆっくりと足を止めた。少し疲労を感じている。
「ふぅ………はああぁぁぁぁぁ…………怖かったああああぁぁぁ!!」
ジャックは感情を解放させた。凄まじい恐怖の感情を抑えつけていたのだからしょうがない。
(にしてもなんで意識が途切れたんだ?)
ジャックはゆっくりと歩き出した。周りに人は全く居ない。怖いくらいに。
(意識が途切れる前…………なにがあったっけ?もういいや!考えても時間の無駄!)
そう結論付けたジャックは腰の機械を作動させ、十階程度の建物の屋上に登った。
そして建物の屋上を経由し、リッパーの待つ隠れ家へと向かった。
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アリスとジャックの戦いを見届けている人間が居た。
下で鳴り響く銃声をこの人間は聞いていた。
「………」
その時、ジャックが逃亡し始めた。
「………異常は無かった……"メリー"、お前は動かなくていい」
その人間は誰かに向かってそう言い残し、静かにジャックを追いかけていった。
☆☆☆
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「ただいまああぁぁ!!!リッパーああぁぁ!!」
そう胸から血を流しているジャックが叫んだ。
「ニャ……ニャー!?!?(おかえ……その胸の傷どうしたんだ!?!?)」
「そーんな、怪我して帰ってくるなんてよくある事だよ。心配しなくたって大丈夫」
「ニャー!?(いや、これまではそんなドデカい傷作った事はなかっただろ!?)」
「………そうだっけ?」
「ニャー!!(そうだよ!!)」
ジャックはタオルを用意し、椅子に座った。そして治療とは言えない治療を開始した。
「やっぱり傷はもう治ってるね」
「ニャー(お前の再生能力には驚かされるぜ)」
「……にしても痛かったよぉ………」
「ニャー(黙れ骨を折ってもなお戦い続ける人間め)」
「……アハハ………」
ジャックは傷周りにベッタリと付いている血液を拭き取るためにタオルで擦った。しかしそう簡単に血は剥がれない。
「あーあ、せっかく綺麗にしたばっかなのに……もう汚れちゃった」
「ニャー(逆に汚れない日なんてないだろ)」
「……確かにそれもそうだね」
ジャックは血を拭き取る事を諦めた。
タオルを洗濯機の中に投げ入れ、シャワー室の中に入って行った。
「もー、服の傷直すのも大変なのに……」
そうシャワー室の中から声が聞こえる。
「まー直すけど」
「ニャー(そのまま更衣室からは出てくるなよ)」
「……………分かってる分かってる」
「ニャー?(ゼッテェ分かってなかったよな?)」
しかしリッパーの声かけあってかジャックはシャワーを終えた後、しっかり新たな服を着てシャワー室から出て来た。
そして洗濯機の中に汚れまくった普段の活動服を入れ、洗濯のスイッチを押した。
「ニャー(ほんと、いつになったら汚れない日が訪れるんだろうな)」
「んー………人類滅亡果たした日?とか?」
「………ニャー?(………そういえばさ、なんで人類滅亡なんか言う目標立ててんだ?)」
「すっごい今更だね……………なんで………か」
「ニャー?(理由なしにやってたとか?お前ならそういう事もあるし)」
「理由………理由なんて覚えてないね、まぁけどここまで来て今更理由なんていらないよ」
「ニャー(まぁそうだな)」
「そーんな事より、どうやら東地区、もう人が少ないと思うんだよね」
「ニャー?(突然なんだ?)」
「いやー活動地区を変更しようかと」
「ニャー?(だとしたら何処に?)」
「それはズバリ!!南端の地区!!」
「ニャー?(お前そこ行った事なかったのか?)」
「うん、南端は地味に遠いし人も少なかったからね、これまで避けてたけどそろそろそこの人間も殺していいかなって」
「ニャー(これまでもう既に殺し回ってたのかと思ってたわ)」
「まーそんなもんだよ、とりあえず、今日は帰ったらすぐ寝ると計画してたのです!」
ジャックは空中で3回転ほどし、リッパーの居るベッドへと飛び込んできた。
「おやすみ!リッパー!」
「ニャー……ニャー?(おやすみ……ところで俺のメシは?)」
その言葉はジャックに届かなかった。




