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三殺事件 ~The End of World~  作者: Red
第七章 長い長い長い夢
22/50

第二十二話 仲間?

「………………ん?………」


 アリスは朝日が差し込んできている路地で目を覚ました。

 アリスは体全身を真っ赤な血で染めており、左手にはマスケット銃を握っていた。



「………え?」



 そして、右手には人間の生首を持っていた。

「あ…あぁ、え?え!?えぇ!?!?」

 アリスは咄嗟に生首を明るい道の方向へと投げ捨てた。べちゃ、という音と共に血が綺麗な道に飛び散り、その血によって反射された日光がアリスの目に飛び込んできた。



「……え?」



 アリスは自分が捨てた生首から逃げるようにして後退りをした。


「な、なにこれ……なにが………おきてるの………?」


 アリスは己の血で染まった手の平を見た。何が起きているのか、何をしていたのか、何も分からない。しかし、自分が人を殺していたという事だけは簡単に想像できた。

 アリスは自分自身に恐怖していた。体の芯から指先まで体全身が震えている。


「わたし……なにしてたの………?」


 その時、遠くから悲鳴が聞こえてきた。


「キャアアアアアアァァァァァァァ!!!!!!!!」


 多くの人間が転がっている生首に近づいてきた。

「な、なんだよこれ………」「う、うわぁぁ……」

 そんな声が聞こえてくる。

 そして、人々は生首を一通り見た後、アリスに視線を向けた。あまりにも怪しすぎる。


「き、きみが………やったのかね!?」


 そう老人が言った。

「ち、ち、ちがうの!!わたしじゃない!!わたしじゃないの!!!」

 アリスはそう必死に訴えた。しかし誰一人聞く耳を持つものは居ない。捨てられた生首の近くに血まみれのアリスが居るのだからそれは仕方がない事ではある。


「や、奴を捕らえろ!!」


 そう若い男が叫んだ。

「ち、ちが……」

 アリスがそう言おうとした時、一本のナイフがアリスに向かって投げられた。そのナイフは刺さりはしなかったがアリスの服に当たり、相手に攻撃意思があるという事だはアリスに伝わった。

「………」

 アリスは路地の中へと逃げだした。


「行け!!奴を捕らえろ!!怖気づくな!!」


そう後方から声が聞こえてくる。

(ちがう……わたしじゃない………私じゃないんだよ!!!)

 アリスの足は一般人より遥かに早い為簡単に距離を離せている。


(一体……一体私に何が起きて………私が……いや!違う違う違う!!)

 アリスは一心不乱に走り、角を曲がった。

 そしてその時、一人の少女にぶつかった。



「わ!?」

「ふぇ!?」



 アリスの方が体が大きかったため、ぶつかった少女を飛ばした。


「あ、あぁ!大丈夫!?」


 ぶつかったのは九才程度の少女だった。紫色の乱雑なポニーテールをしており、薄汚れた黒色のワンピースを着ている。


「ん……だいじょうぶ………」


 少女の身長は134cm程、服には赤いシミが大量に染み込んでおり、元の色が見えない程だった。

「え………えっと」

 アリスは立ち上がった少女を見つめた。


(え!?なんでこの子こんな血まみれなの!?わ、わたしが!?い、いやいやいや)


「あなた、だれ」

「あ、あぁ、私はアリス、ってそんな事呑気に話してる暇ないの!」

 アリスは少女を避けてまた走り出そうとした。しかし少女はそれを阻止するように前に立った。

「なにがあったの?」

 少女は透き通るような紫色をした瞳をアリスに向けた。若干睨んでいるようにも感じる。


「あ、えっと、今なんやかんやあって追われてるの!」

「だれに」

「だ、誰って知らないよ!」

 その時、路地の奥から声が響き、アリスと少女の耳に入って来た。


「奴は何処に行った!」「お前はそっちに回れ!」


 その声と共に多くの足音が聞こえてくる。

「ま、まぁあの人たちに追われてるの!」


「にげなくてもだいじょうぶ」


「………え!?」

 少女は足音が聞こえてくる方向に体を向けて立った。

「え!?た、戦う気!?やめておいたほうが……」

「だいじょうぶ、まかせて」


 少女はポケットから首掛けのペンダントを取り出した。


 ドタドタとした足音が着々とアリス達に近づいてくる。

「お、おい!あそこだ!居たぞ!」

 数人の男たちがアリスと少女を発見し、こちらに走って来た。

「ちょ、ほ、ほんとに大丈夫なの!?」

「うん」


 少女は首掛けのペンダントを開き、中を男たちに見せた。そして、ペンダントを左右に振り始めた。

 右に、左に、目の前にいた男たちは足を止め、そのペンダントを吸い込まれるように見つめていた。


「え~っと………な、なにが………起きて……?」

 アリスには何が起きているのか理解できなかったが、この子は普通の少女ではないという事は容易に理解できた。


 しばらくして、少女はペンダントを振る手を止め、ペンダントをポケットの中に戻した。

「もうだいじょうぶ、しばらくはうごかない」

「え、えっと………はい?」

 少女はアリスの下へと駆け寄って来た。


「えっと……よく分からないことが沢山あるんだけど………」

「ついてきて」

「………え?」

「ついてきて」

 少女は路地の中を歩き始めた。


「あ、あ、ちょっと待って!」

 アリスは少女を追いかけるように歩き出した。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


「ちょ、ちょっと質問何個かいい?」


 アリスは薄暗い路地を少女と共に歩いていた。少女はポケットに手を突っ込みながら何処かに向かって一直線に歩き、アリスはそんな少女を困惑しながら追いかけていた。

「うん」

「まず会話しやすいように、名前って何なの?」

「………えりざべーと、ばーとり」

「な、なるほどね……呼び方はエリザベート?それともバートリ?」

「ばーとり」

「じゃ、じゃぁバートリ……ちゃん?」

「ちゃんはいらない」

「ご、ごめん……」


 アリスとバートリと名乗った少女は無限に続くような広い路地をただただ歩く。周りの建物は全て背が高い為光が殆ど無い。しかしそんな空間でもバートリは迷わずに歩いていた。

「じゃぁ次の質問、今は何処に向かってるの?」

「ぼくのいえ」

「そ、そう……だよねまぁ………じゃぁ次の質問、ここは何処なの?」

「わからない」

「………えーっと、じゃぁ次の質問……」


「ここがぼくのいえだ」


 そうバートリがアリスの質問を遮って言った。

「い、いえ?私にはゴミ捨て場にしか見えないけど………」

 アリスの言う通り、ここはゴミ捨て場のような場所だった。管理されていないゴミ箱が二つほど並び、その周りには異臭を放つゴミが山を作っていた。


「こっち」


 バートリはゴミ箱の側面にあった持ち手に手をかけ、それを下に降ろした。するとゴミ箱の側面は扉のように開き、その中には道が伸びているのが見えた。


「え、えぇ、この狭い空間通らないとダメ?」

「………さいずはじぶんようにちょうせいしてた……がんばってついてきて」

 バートリはその隠し通路を進んで行った。

「……えぇ…」

 アリスは狭い隠し通路をなんとか進んで行った。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


 隠し通路は近くのビルの一室に繋がっていた。その部屋は不思議なことに扉が無く、この部屋に入るにはバートリの隠し通路を通らなければ入れない場所だ。


 その部屋には照明や食料など生活に必要な物は十分に揃っていた。しかし酷く汚れている。

「えーっと……うん、もう殆どの事について考えるのをやめようと思う………とりあえずなんでここに連れて来たの?」

「………」

 少女は一息吸って言った。




「あなた、じゃっくざりっぱーでしょ」




「い、いやいやいや、私はジャックザリッパーとはほぼ真逆の存在だよ!私は奴を殺そうとして……奴に何か……され………て………」

 アリスの顔は一瞬固まったがすぐに動き出した。


「ま、まぁとりあえず私はジャックザリッパーじゃないよ!」

「………そう……」

 バートリは肩を落とした。何か不満だったのだろう。


「えっと、なんでジャックザリッパーを連れ込もうとしてたの?」

「………なかまになりたかった」

「……え?」

「なかまになって、じんるいをこのよからけしたい」

「………頭が痛くなってきた……もう考えるのをやめるよ」


 アリスはずっと背負ってきていたマスケット銃を地面に下した。

「けど、あなたでもいい。あなたもさつじんき、ぼくのもくひょうのてだすけになる」

「いやいや!私殺人鬼じゃないんですけど!」

「じぶんのふくをみてみろ、それでさつじんきじゃないというにんげんがどこにいる」

「………」

 アリスは自分の血で染まった服を見た。青かった服は赤色に染まり、手の平や靴には生々しい血がまだ付いている。


「……認めたくはないけど……そうだね」

「おまえ、さつじんきとしてのじかくをもて」

「い、いやいや、私は殺人鬼なんか……」


「あきらめろ、おまえはもうさつじんきだ。それはかえることのできないじじつだ」


「………っ」


 会話をしている時、アリスは自分の体の異変に気が付いた。

「………ん?」


 口の中から血の味と匂いがする。これまで焦っていて気付かなかったみたいだ。アリスは自分自身に恐怖し始めた。


「え?」


 アリスは自分の口を咄嗟に押さえた。

「かにばりずむ、きけんなことではない」

「い、いやいやいやいやいや!な、なんでなんで!!??」

「………」

「なんで?というか私なにしてたの?なんで意識が無かったの?なんで今落ち着いていられたの?なんで……」



「おちつけ、もうあきらめたほうがいい」



 アリスはハッとしたような顔をした。そして、ゆっくりとバートリの居る方向を振り返った。


「もう………諦めた方がいい?」


 アリスは己の血で染まっている手の平を見た。もうその血はどれだけ洗っても落ちないだろう。

「そうだ。もうあきらめたほうがてっとりばやい。さつじんきとして、こっそりかくれていきるしかないんだ」

「……もう…諦める……か……………確かに………それがいいかも……」

「もうさつじんきのじぶんをみとめよう、おねぇちゃん」

「お、おねぇちゃん!?」

「おねぇちゃん」

「おねぇちゃん………まぁ…もうなんでもいいや。分かった。もう私は殺人鬼だよ」


「じゃ、きょうからよろしく、ぼくのもくひょうたっせいのためのしもべさん」

 バートリは小さな手をアリスに向かって伸ばした。

「そんな言葉何処で覚えたの?……まぁいいや、よろしく……でいいの?」

 アリスはバートリの手を握り返した。


「で、でも………私でいいの?私多分意識がある時は人殺しなんてできないよ?」

「べつにいい」

「さ、さいですか…………ところでここ、どこなの?」

「………ひがしちくのこっかいふきんのまち」

「国会?あの爆散した?というか自分何処まで移動してたの!?ジャックザリッパーの街から国会まで凄まじい距離あるけど!?」

「ぼくにいわれてもこまる。なにがあったかとかはじぶんでかんがえろ」

「ま、まぁそうか」


 アリスは一息吸って、足元に転がっていたマスケット銃を拾った。

「とりあえず外の空気を吸いたい。ちょっと外に出よ?」

「わかった」

 アリスとバートリは狭い通路を進んで外へと向かった。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


 アリスとバートリは薄暗い路地を行く当てもなくただ歩いている。バートリは片手をポケットの中に突っ込んでいた。


「いやぁ………私の体どうなってるの?解離性同一性障害とか?」

「かいり……なにそれ」

「説明すれば日が暮れちゃうよ」


 アリスには気になる事が山のようにある。殺人鬼である自分を一時的に認めてはいるがどうやってここまで移動したのか、どうして殺人鬼になっているのか、その間何故意識が無かったのかなど気になっているが答えはどこにもない。

「とりあえず明るい日光浴びたいけど……」

「そのふくででれるばかがどこにいる」

「だよねぇ~………」


 アリスはバートリの服を見て何個か質問を思いついた。

「ねぇ、質問何個かいい?」

「うん」

「まずバートリ、両親はどこにいるの?」

「………」

「……答えたくないなら答えなくても………」

「じゃぁこたえない」


 バートリの表情は全く変わっていない。特に両親の事は気にしていない様子だ。

「じゃぁ次の質問、これまでどうやって生活してきたの?」

「………」


 バートリは手を突っ込んでいるポケットの中から首掛けのペンダントを取り出した。

「……これをつかってひとからものをうばう、それでせいかつしてる。あとはひとのいきちをすってる」

「………最後に聞こえたことは空耳だと願う……じゃぁ次の質問……」

 その時、バートリが突然立ち止まった。

「……ん?どうかした?」


「………ひとのけはいがする。それもけいさつのけはい」


「え?」

「ちかくにいる」

「え?そ、そんな突然………まぁ血で染まった服を着ている私が居るとなったらそりゃ警察くらい来るか……」


「うしろ」


 バートリは後ろを振り向き、ポケットの中から小さなナイフを取り出した。

「え、えっと、私は何をすれば?」

「そこにいるだけでいい」

 バートリが言った通り、遠くから足音がしてくる。三人程度だろうか。


 アリスはもしもの事を考え、マスケット銃を構えた。

「……血で染まったメイド服を着た女ねぇ、そんな見つかんねぇだろ………」

 一人の男がそう言いながらアリスとバートリの前に現れた。そして、アリスと目を合わせた。


「………」「………」


 しばらく硬直が続き、

「………み、みつけ……」


 男が見つけたぞ、と叫ぼうとした。しかし男の喉から声が出ることはなかった。



 男の喉から鮮血がまるで噴水の如く噴き出して来た。



「………え?」

 アリスはその一瞬の出来事に驚いた。何もアリスには見えていなかったのだ。しかし、犯人はすぐ近くに居た。


「……だめ、こいつらなにもいいものもってない、さいふのなかみもほぼから」

 バートリだった。バートリはアリスの目にも止まらぬ速度で男の首を掻っ切っていた。その為バートリの顔やナイフには返り血が付いていた。


「ほかのやつらはなにかもってるかも、ころしにいく」

「ちょ、ちょっと待って!」

「なに」

「え、え?ちょ、人殺し………はもういいとして、今の一瞬でバートリがやったの!?」

「うん」

「え?………いや、もう、うん……考えるのやめよ………」

 アリスは声が聞こえる方向へと歩き出しているバートリの後姿を見た。


(………戦ったら絶対負ける……)


 アリスは心の中でそう感じた。

「おねぇちゃん、いくよ」

「は、はい」

 アリスは足早にバートリの下へと駆け寄った。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


「たしょうのしゅうかくはあった、けどとくにこうかなものはもってない、はずれだ」


 アリスとバートリは先ほどの隠れ家に戻って来た。中では警官から剥ぎ取った物資が並べられている。

「………けどやっぱり人殺しの瞬間を直接見ると……気分が落ち着かないよ………」

「なれるしかない、なれればかいらくをかんじれるぞ」

「い、いやいや、快楽のために人殺しなんてできないよ!しかもまず犯罪だし!殺人罪!」

「さつじんきがなにをいってる。そうならないようにかくれていきるんだろう」

「そ、そうだけど………やっぱり元はヒーローだった存在だし………」


「そんなことより、こいつらをうろう」

「あ、あぁ、そうだね、けど何処で売れるの?」

「やみいち」

「………もう法律なんてどうでもいいや」

 バートリは部屋の地面に乱雑に置いてあった布袋を手に取った。そして、その袋の中に警官から奪い取ったものを入れ始めた。


「………はぁ、本当に精神が全然落ち着かない……」

「どちらかかたほう、さつじんきとしていきるか、それかじしゅしてしぬか」

「……それが中々決断できないよ………」

「まぁそうだろう。みるからにおねぇちゃんはきがよわい。まわりのえいきょうにながされやすいだろう」

「………ほんとそんな言葉何処で覚えて来てるの?」

「よし、じゃぁいまからいくぞ」


 バートリはまとめ終わった荷物を担ぎ、隠し通路の中にそれを押し込んだ。そして狭い隠し通路を荷物を押し出しながら頑張って進んだ。



(………この子を殺せば自分は自由?)



 アリスはバートリの後姿を見た。

(この子が居なければ………)


 アリスは無意識の内にマスケット銃をバートリの背中に向けた。

(この子が………邪魔……殺せば…)



「おねぇちゃん、はやくいくよ」



「………!?」

 アリスはハッとした表情をした。バートリのその言葉に不意を突かれた。それと共に、アリスは過去の事を一つ思い出した。


(おねぇちゃん………懐かしい響き……妹が私をそう呼んでたな………さっきおねぇちゃんっていわれて驚いたのはそういうことだったんだ………)


 アリスは静かにマスケット銃を下した。

「おねぇちゃん?」

「………うん、バートリが外に出たら私も行くよ」

「わかった」


 アリスは硬直していた。体全身の筋肉が言うことを聞かない。

(あの子を殺したら私は本当に殺人鬼になっちゃう……家族を殺したアイツとは一緒になりたくない………うん、そうしよう)

 アリスは何かを決断した。

 そして、アリスはバートリの後を追うようにして隠れ家から出た。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


「………」


 アリスとバートリは静かで薄暗い路地を静かに進んでいた。もう日が暮れ始めている。そんなに時間がたった気はしない。しかしそれでも時は確実に経っていた。


「………っ」

 アリスはずっと何かを言おうとしているが形にできていない。



「おねぇちゃん」



 バートリが突然話し出した。


「………は、はい?」

「おねぇちゃん、いまかんがえてることべつにいってもいい、ぼくはもんくはいわない」

「………ありがとう……考えてること分かってるのかな?」


 アリスは立ち止まった。


「ねぇ、私、やっぱり殺人鬼として生きるなんて心が持たない………」


 バートリは振り返った。


「やっぱり私は警察に自首しようと思う。まだそれで死んだほうがマシ」

「………」

 バートリはただただアリスを見つめていた。バートリの紫色の瞳がアリスの心臓を刺しているようだ。


「………ごめん、私はバートリと一緒に生きれない。ごめんなさい」

「………べつにいい」

「え?」

「べつにいいよ。じぶんのことはじぶんできめろ、そうぼくはいったはずだ」

「………ありがとう、そして、ごめん」

「あやまることはない。じぶんのじんせいだ」

「………」


 アリスが話したこと、つまりはバートリから離れて警察に自首をするということだ。

「当然バートリの事は警察に言わない」

「うん」

「ごめんね、バートリ」

 アリスは少しずつ後ずさりし、バートリから離れた。


「きをつけてね、おねぇちゃん」

 バートリが話し始めた。




「狂気に囚われるかもしれないから」




 バートリがそう言うと共に強い風が吹いた。風はアリスの髪を強くたなびかせ、砂埃を上げた。


 そして、風が吹き止むと、目の前からバートリの姿は消えていた。


「………バートリ、ありがとう」


 アリスは徐々に日が暮れ始めている街の中へと入って行った。

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