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三殺事件 ~The End of World~  作者: Red
第五章 三番目
16/50

第十六話 プロテクター

「………………うぅ………」


 アリスは病院のベッドのような所で寝ていた。体全身に包帯を巻いており、左目には包帯と眼帯が付けられていた。


 そしてそのアリスの隣には深い黒色をしたスーツを着ている若い男が椅子に座っていた。若い男は茶髪に黒い目をしており、中国人のような風貌だった。


「………ん……うぅ…………」

「起きるのならさっさと起きろ」

「………ん?………は!?そ、総合部隊長様!?」


 アリスは慌てて起き上がろうとする。


「あぁ!!!い、いてて………」

「やめておけ、体の傷はまだ治ってない」

「………は、はい」


 総合部隊長と呼ばれた男、星宇シンユウが淡々と話し始めた。


「お前には指導しなければならない事が幾つもある」

「………はい……」

「まず一人でジャックと戦おうとした事、それにより助けてもらった仲間を殺した事、仲間の指示を聞かずに逃亡せず、またもやジャックと戦った事、そして最後にジャックを本気にさせた事だ」

「………はい自分でも失態の事は承知しております………」


「なら何故だ?理解しているのに何故失態を犯す?」


「………」

「私はお前に失望した」

「………で、でも!!ジャックザリッパーの住居は特定し……」



「黙れ」



「………うぅ……」

 アリスは弱気な声を発した。


「住居を特定したから何だ?奴の住居に行けば瞬きもしない内に殺される。特定したからと意味はない」

「………」

「アリス、お前はチームの足手纏いだ」

「………え?」

 アリスは今にも泣きそうな顔で星宇の真っ黒な目を見た。



「お前は今日でプロテクターから脱退だ」



「……え……………」

 アリスは涙を一滴、二滴、三滴と落とした。


「お前は指示に従わず、助けてもらった仲間を殺し、そして逃げなかった。そんな人間はプロテクターのメンバーとしては不要だ。例えジャックの攻撃に耐え抜いた体だったとしてもチームワークが必要なここに必要ない」

「………」


「アリス、お前は"クビ"だ」


「………」

 アリスは声も出さず、ただ涙を流していた。


「話はそれだけだ。傷が癒えたらさっさと荷物を纏めてここから出て行け」

 星宇は立ち上がり、部屋から出ていった。


「………嘘……………でしょ?………」

 部屋に残されたアリスは何もすることができず、自分の手の甲に涙を落としていった。

 一日後、アリスはもう動けるほどに回復した。潰された左目はまだ回復はしていない。しかしジャックに切り裂かれた肌や顔は既に回復しており、傷跡が数か所ある程度だ。


「………」


 アリスは淡々と自分の荷物をまとめていた。

(……はぁ………なんて馬鹿な事したんだろう………)


 アリスは荷物をまとめながら考えた。


(………いや、何考えてるの……まだ戦える………奴を殺す為にプロテクターである必要はない!)

 アリスは自分のマスケット銃を大きなバックの中に入れた。


(………はぁ……プロテクターから脱退させられるとは思わなかった………私だって過酷な試験を乗り越えてプロテクターになったのに!!)

 アリスは涙がまたもや出てきそうになるがそれをグッと堪えた。


(……はぁ………なんで私が……………)


 アリスは大きく息を吐いた。

 その時アリスの後ろから声がかかる。


「アリス、お前が退職するにあたっての資料だ」


 後ろに居た男は一つの封筒をアリスに渡した。


「あ、内容は教えてもらえたり……」

「黙れ」


 男はすぐに何処かへと立ち去った。アリスに興味がないようだ。

 アリスは封筒を開け、中身を確認した。


(………へぇ、案外退職金出るんだ…ラッキー)


 アリスは資料を読み進める。



(……………備品返却………プロテウス製………マスケット……銃?………え?)



 アリスは驚いた。

(え!?これは私がずっと持ってるものだよ!?なんで!?)

 アリスは残っている右目を動かし、何度も資料を確認した。しかしそこに記述してある内容は変わらなかった。


(なんでこれが備品扱いになってるの!?これは私のもの!!そりゃ修復とか強化とかしてもらったことはあるけど………これは私のもの!!!)

 アリスは講義を入れようと先ほどの男へと向かおうとした。しかしそれをやめた。


(いや、どうせ文句を言っても追い返されるだけか………)


 アリスはバッグの中に入っているマスケット銃を見た。

(………………うん、これは私のものだ……)


 アリスはマスケット銃をそっとノートなどで隠した。


(………よし、これで荷物は全部……一旦家に置いて帰るか………)

 アリスは立ち上がり、静かに部屋を出ていった。誰もその様子に興味は示さなかった。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


アリスは誰も居ないたった一人だけの街を歩いていた。東南地区第二危険区域のこの街はもう殆ど人は残っておらず、ただただ静かだった。

 アリスは石でできた建物に挟まれた少し大きな道を歩いていた。


(はぁ………何の職に就こうか……)


 アリスは大きなバッグを抱えて移動していた。

(……………いや、何考えてるの……ジャックザリッパーを殺す為に私はプロテクターにもう一度入る!うん!そうだ!!)


 アリスは車も人もいない交差点で、意味もなく左右を確認して横断歩道を渡る。


(またプロテクター入隊試験を受けてプロテクターの違うチームに入ろうかな?………いや、いつからプロテクターじゃないとジャックザリッパーを殺せないと思ってた……別にプロテクターじゃなくても奴を殺すことはできる!!)

 アリスは道を歩き、何処かへと向かっていた。


(うん、そうだよ……明日の夜、プロテクターがジャックザリッパーのいる街を封鎖して奴を殺す……その作戦実行中にこっそり混ざってもバレない………よね?)


 アリスは一軒の小さな石でできた家に着いた。三階建てで横幅が狭く、外壁にはツタが伸びていた。

(私も戦闘技術はあるし多少は活躍できる!!なんなら奴を殺すチャンスはあるはず!!)


 アリスは家の中に入り、廊下に乱雑に荷物を置いた。

 そしてアリスは二階に上り、一つの部屋に入った。

(はぁ………もう何も考えたくないなぁ……)


 アリスはその部屋にあるベッドに横たわった。

(はぁ…………昼からやる事あるけど………もういいや……………はぁ………)


 アリスはそのまま目を閉じ、昼からある予定をすっ飛ばして眠ってしまった。


 ☆☆☆


「………………んぅ………あぁ……もうこんなじかんか……」


 ジャックは目を覚ました。


「ニャー!?(お前が自力で起きただと!?)」

「そ、そんなこともあるよ……」

 ジャックは昼過ぎに起きた。


「…………ねてるときに考えたんだけどさ……」

「ニャー(それは夢というのですよ)」

「なんでアリスはわたしたちが住む街にいたんだろう?詳しく特定されてたり?」


 ジャックはリッパーの言葉を無視して言った。

「ニャー(別にちょっと考えればお前が住む街くらいなら特定だってできるさ)」

「………まぁそうだよね。なら気のせいか……」


 ジャックはベッドから降り、シャワー室の中へと入った。

「………ニャー……ニャー?(………確かにアリスは街と言ってもかなり正確にジャックの居る所に来てたよな……やっぱりジャックの街、いや、住居まで特定されてたり?)」


 リッパーは考え事をした。シャワー室の中からは水の吹き出す音とジャックが動く音が聞こえる。

「………ニャー?(………危ない予感がするのは俺だけか?)」

「ねぇねぇリッパー」


 シャワー室に繋がる壁から籠ったジャックの声が聞こえる。

「ニャー?(なんだ?)」

「やっぱりなんだか危ない予感がするんだけど……」

「ニャー(奇遇だな、俺も全く同じこと考えてた)」

 リッパーは声を大きくして言う。


「やっぱりリッパーもそう思うよね………まぁ別に家がバレてたとしてもみんな返り討ちにすればいいだけか」

「ニャー(せやな)」

 リッパーはベッドの上に飛び乗った。ジャックが寝ていた温かみが感じられる。

「………ニャー(………ジャックが出てくるまで暇やな)」


 ⬜︎⬜︎⬜︎


「ニャー?(ところで昼からは何する予定なんだ?)」


 髪の毛を拭いているジャックに向かってリッパーが言う。

「ん-………プロテクターの人間達の事についてなんだけどね」

「ニャー?(何だ?)」

「なんかプロテクターの人間が居る基地とか活動とかについて調べたいなって。なんだか変な予感がするし」

「ニャー(なるほどな)」


「まぁだからプロテクターの基地を探すって感じかな?」

「ニャー?(昼間の活動になるが大丈夫か?)」

「うん、できるだけ人と出会わないようにする」


 ジャックは髪の毛を拭き終わったタオルを謎の赤いシミがある洗濯機に向かって放り投げた。

「まぁとりあえずどっかの情報屋に行こうかな?」

「ニャー?(拷問して情報を奪い取るんだろ?)」

「まぁそうだね。情報は買うものじゃなくて奪い取るものだよ」

「ニャー?(けどサンダーの人脈を使えば情報屋くらい見つかるだろ?)」

「そうだろうけどね。けどサンダーの仲間だからって信用はできない」


 ジャックはドライヤーを取り出し、慣れた手つきで髪を乾かし始めた。

 ドライヤーの甲高い音が狭い家に鳴り響く。

「ニャー!!!(まぁそうだな!!!あとドライヤーの音大っ嫌いなんだが!!!)」

「んー?なんか言ったー?」

「ニャー!!(どうせ聞こえないからいいです!!)」


 ⬜︎⬜︎⬜︎


 ジャックは髪を乾かした後、活動服に着替えた。そしてその上におおきな狐色のコートを着ていた。

「よし、じゃぁ行ってくるね」

「ニャー(はいよ、あんまり目立たないように)」

「うん、分かってるよ」


 ジャックは家を出ていった。


「…………ニャー……(…………さぁ暇な時間がやってきました……)」


 ☆☆☆


「アリス!!アリス!!!!」


「………ん?」


 アリスはドアを強くたたく音と怒号で目が覚めた。

 アリスは一階に降り、玄関の扉を開けた。


「……はい?」


 扉の前にはスーツを着た屈強な男が居た。

「アリス、一体何をしていた?」

「何って………荷物の片づけ?」

「荷物を置いたらすぐに来いと言ったよな?明らかに寝ていただろう?」

「はい…すみません………」


 アリスは心の中で思う。

(はぁ………なんでこんな奴に付き合わないといけないんだろう……)

 アリスは渋々外に出る準備をし、男へと着いて行った。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


 アリスはプロテクターの基地に着いた。

「えーっと………本拠点に行くとは聞いてないんですけど……」

 アリスはプロテクター本拠点の一本道を男と歩いていた。定期的に人とすれ違う。


「お前はジャックザリッパーと戦って生き延びた人間だ。ジャックザリッパーの情報くらいは入手しただろう?」

「………まぁ…」

 アリスは道をひたすら歩く。かなり広く、かなり長い。


「……これどこに行ってるんですか?」

「今日の夜、予定を前倒しさせてジャックザリッパー抹殺計画を遂行する。その作戦会議室だ」

「はぇー………私は関係あるんですか?」

「俺に詳しいことは聞かされてない」

「………」


 アリスと男はしばらく無言になった。

「………おそらくだが、お前はジャックザリッパーの拠点を特定しただろう?それに関する話だろう」

「………なるほど、けどその拠点について話そうとしたら黙れと言われたのですが………」

「……………それは………まぁ相手が悪いな、認めよう」

 アリスと男は一つの部屋に着いた。


「ここの中だ。残りは中にいるメンバーの話に従え。俺は中に入れない」

 男はズカズカとした足音を立てて道を戻っていった。

「………」

 アリスは言葉にできないモヤモヤした謎の気持ちを抱えながら扉を開けた。




「……アリス、一体今の今まで何をしていたんだ?」


 そう言うのは星宇だった。

「あ、いや、ちょっと………」


「許してやれ、俺だって遅刻くらいする」


 そう言ったのはアリスと同じように右目に眼帯を付けていた細身の男、宵津が居た。椅子を傾けており、テーブルに細い足をのせている。


「お前が俺と同じように奴の攻撃から生き残った人材か、なんでそんな奴をクビにしようといったんだ?」

 宵津は星宇に向かって問う。


「………すまない、アリス。麗矢が死んでしまった怒りであのような発言をしてしまった……」

 星宇はアリスの顔を見て謝った。偽りは無い本心からの謝罪だった。


「い、いやいやいや、全然気にしてないですよ………多分」

 アリスは少し驚きながら言う。


(あ、こういう人たちだ。私とうまくやっていける人……)


 アリスは心の中でそう思う。

「ま、そんな謝罪とかする暇なんてないわぁ。早く作戦について考えましょ~」

 そう言ったのは紫がかった黒く長い髪をもつ女性、ミカだ。髪は腰まで伸びており、黒く体のサイズにピッタリな服を着ていた。豊富なバストがその服のせいで余計目立つ。


「そうだな……アリス、そこの席に座ってくれ」

 アリスは余っていた席に腰かけた。


「アリス、ジャックがいる街はホワイトチャペルで間違えないんだな?」

「はい、それで間違えはないです」

 星宇はテーブルの上に広げられている大きな地図を指さした。もう作戦などがぎっちりと書かれており、ジャックの居る街、ホワイトチャペルの地図は殆ど見えなくなっている。


「で、ジャックの住所は何処ら辺だ?」

「……えっと………ここら辺ですね」

 アリスは地図に指をさす。そこは丁度ジャックの拠点だった。


「………なるほど」

 星宇はジャックの拠点に目印を刺した。



「………………そこ……」



 宵津がマークされたところを見ながら言う。



「………俺の師匠の……隠れ家だ………」



 宵津は驚きながらそう言った。

「……なおさら奴を活かしちゃ置けないねぇ……」

 ミカは余裕そうにそう言うが言葉には少し震えが出ていた。


「とりあえず作戦はもう全体的に決まっている。そこでアリス、お前もこの作戦に参加してほしい」

「………え?」

 アリスは下を向いていたが驚いて星宇の方向を向く。


「いや、クビという事実は変わらない。上の人間に伝えているからな。しかし、この作戦にはお前が不可欠なんだ」

「え、えーっと………え?」

「アリス、お前はジャックに対する怒りが非常に多いだろう?その怒りというものを奴にぶつけてほしい。奴をお前に殺してほしい」

「………………………………」


 長い沈黙の後、アリスは言う。



「………そりゃ殺せるならやるしかないでしょう!!たとえ何があろうと奴の首を持ってきてやります!!!」



「よし………囮になるが大丈夫か?」

 星宇が言う。


「はい!!なんでも!!!奴を殺せるなら何でもやってやりますよ!!!」

「よし、殺る気満々だな」


 星宇は地図に焦点を当てた。

「じゃぁ今から作戦について話す。重要事項だから一言も聞き逃すなよ?」

 星宇はアリスの顔を見ながら言った。


「………はい!!」


 アリスは嬉しそうに言った。


 ☆☆☆


「んー?あれはアリスかな?」


 ジャックは建物の屋上から大きな通りを見下ろしていた。道にはアリスと男、それ以外にも数人ひとが居た。


「んー?………………お、あの建物か。あの情報屋もちゃんと本当の事話してくれてたんだね」


 ジャックは先ほど闇商売をしている商店街の中の一つの情報屋に行った。そしてそこにいる商売人を拷問し、情報を吐かせ、その後殺した。

 情報屋は「小さな建物の中に隠し通路がある。そこがプロテクターの拠点だ」と言っていた。


「やっぱり自分の命がかかると簡単に物事言っちゃうんだね」

 ジャックは狐色のコートを着なおし、通りへと降りた。人は殆どいない。

 ジャックはアリスが入っていった建物の中に入った。


「………なんだここ?」

 そこは蜘蛛の巣と埃しかない謎の空間だった。怪しいと思うほどに何もない。

 ジャックはコートのフードを脱いだ。


「………師匠、こんなこと教えていつ使うって思ったけど……」


 ジャックはしゃがんだ後、フライバーストを取り出し、フライバーストの長い銃身を地面に打ち付けた。するとコンという重い音が鳴り響いた。


 ジャックは一歩前進し、またもや地面にフライバーストを打ち付けた。またコンという重い音が鳴る。


 ジャックはまたもや一歩前進し、フライバーストを地面に打ち付けた。すると先程とは違い、カンという響く音が聞こえた。


「………ここか……こういうときに使うんだね、師匠、ありがと」

 ジャックは立ち上がり、地面を渾身の力で蹴った。


 すると地面が動き、隠し通路が出てきた。ジャックはその隠し通路に入った。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


「………どうしようか……」

 ジャックは隠し通路を少し進み、一つの物置と思われる部屋に入った。真っ暗だが、ジャックには物が見えた。


「………………そういえば、師匠が変装は案外バレないって言ってたな……」

 ジャックは扉にある小さな窓を覗いた。そこにはスーツを着た155cm程度の女性が居た。

「……あの人にしよ」

 ジャックは物置から出て、女性の足にワイヤーを一瞬で絡め、一瞬で物置部屋の中に連れ込んだ。傍から見れば一瞬で女性が消えたように見えた。


 ジャックは一瞬だが赤い目をしていた。


「ん"ん"ん"ん"ん"!!!!!!!」


 ジャックは女性の口を塞ぎ、女性の心臓に向けて毒針を放った。

「ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"!!!!!!!!!!!」

「………うるさいな……」

「ん"ん"ん"ん"ん"!!!!!!」

 女性は両目から赤色の涙を流し、口からは赤色の液体を流していた。


 しばらくして、女性は動かなくなった。


「……………よし」

 ジャックは女から衣服を奪い取り、その服を普段の活動服の上に着た。


「………………あれ?」


 服はぶかぶかだった。重ね着をしたはずだが服がズレ落ちていく。

「あ、無理だ………どうしよう……」


 ジャックは奪い取った服を脱ぎ捨てた。

「………………………あ、そうだ」

 ジャックは何かを閃いた。


「メリーの真似しよ」


 ジャックは女性から奪い取った真っ黒なスーツを羽織った。そして小さな物置から堂々と出た。


 ジャックは広く、薄暗い一本道の端をそそくさと歩き始めた。ジャックの存在感はとても薄く、体は全身黒色で覆われているため、影と一体化している。人と出会えば存在感を最大級まで消す為に動きを止める。そのおかげで出会う人は全員ジャックに興味を示さなかった。


 ☆☆☆


「え!?そんな力技で!?」


 アリスが驚きながら叫んだ。

「あぁ、ジャックにはもう知識は何度もぶつけてきた。もう残ってるのは力技くらいだ」

 星宇が答える。


「い、いや、それでももうちょっと……なんか……こう………」

「俺だって最初その計画を聞いたときはビビった。けど何度考えても結局これが一番いい作戦なんだ」

 宵津が言う。


「私は最初から大賛成だけどねぇ。結局奴に私の銃弾は当たらないからねぇ。結局これが一番殺せる確率が高いと思うわ」

 ミカがねっとりとした口調で言う。


「………………確かにこれが最善の手のように思えてきた……」

「まぁ、もう決めた作戦だ。これ通りに動いてもらう。ちょっとでも動きが乱れればジャックを逃がす羽目になる」

 星宇が言う。


「………まぁ……わかりました……分かりましたよ!!これで奴を殺してやりましょう!!」


 アリスは気合を入れてそう言った。


 ☆☆☆


(………これはダメかも……)


 ジャックは光が灯されている大きな空間の前の道の端っこに居た。その空間は人の行き来が多く、光が灯されているため、影に隠れているジャックはその空間に入れない。


(………帰るか……基地を特定できただけでいいや………)

 ジャックは自分が歩いてきた長い道を戻り始めた。


(………ん?あれってアリス?)


 ジャックは目の前の扉から出てきた金髪の女、アリスに気が付いた。

 そしてアリスもまた陰に隠れているジャックの存在に気が付いた。



「………………ジャック……ザリッパー?」



 ジャックは考えることもせずすぐに道を走りだした。後ろを振り返らずに。


「ジャックザリッパーだ!!!」


 アリスのその言葉によって周りの人間はとんでもない速度で走るジャックの方向を見た。しかし速すぎたため残像程度しか目でとらえることができなかった。


「みんな!!!奴を!!!!!!」

 アリスがそう叫ぶ。


「ま、まて、アリス、お前クビになったんじゃ……」

「そんなの関係ない!!!あそこにジャックザリッパーが!!!!!」

 アリスはとにかくそう叫ぶが誰もジャックに追いつけない。というか追おうとする人は居なかった。


「ああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


 アリスの声が道に響き渡った。




 ジャックはとんでもない速度で長い道を走った。進行を邪魔しようとする者は全員ジャックに切り裂かれた。


(いっちばん警戒してたことがおきちゃったか……)


 ジャックの目は赤色になっていた。

(ま、いいや。別に基地が移動してもまた特定すればいいし)


 ジャックの走る速度はまるで音速のようだった。

 しばらく走り、出口が見えてきた。人は居ないためすぐに出ることができた。


「はぁ………はぁ…………はぁ……」


 ジャックは激しく息を切らしていた。


「はぁ………ちょっと……つかれちゃうね………」

 ジャックは外に出ても足を止めず、自分の家がある方向へと走った。

「そこに居たんだよ!!!!」


 アリスは必死に抗議している。


「お、落ち着け、アリス」

 会議室から出てきた星宇がアリスに向かって言う。


「ひ、被害者十三名です………今の一瞬で………」


 星宇に向かって男が言う。


「な、なんだと………」

 星宇が言う。


「………」


 アリスは目を見開いて驚いた。


「……自分が止めておければ………」


 アリスは下を俯いて言った。


「………直ちに治療を行え、生きている者を絶対に殺すな」

「は、はい」

 男は道を走っていった。


「……たったあの一瞬でか………」

「……………すみません………」

「いや、何一つお前は悪くない」


 アリスと星宇は人が多く行き来している道の端にいた。


「………少し気を落ち着かせよう。アリス、最近お前は精神状態が安定してないぞ」

「………はい……そうします………」


 アリスと星宇は一つの部屋に入っていった。

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