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三殺事件 ~The End of World~  作者: Red
第五章 三番目
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第十五話 赤目(せきがん)

「リッパー!!!どこにいるの!!!」


 ジャックは暗い路地を走り続けた。


「リッパー!!……ん?足跡………まだ新しい………」


 ジャックは土の地面の上にある足跡を見た。まだ角が立っており、新しい物だ。

「………絶対にこれだね」


 ジャックはその足跡を追い始めた。かなり長く続いている。


(なんで私に勝てないからってリッパーを襲うんだよ!!!)


 ジャックは全力で走っていた。息を切らすほどに。


(絶対殺してやる!!!)


 ジャックの走る速度はとても早く、まるで空気を切り裂いているようだった。


(………見えた!!!!)

 ジャックは足跡の先に居る女の陰に向かって拳を放った。



「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」



 ジャックの振るった拳は女の背中に当たり、女を軽く飛ばした。


「リッパー!!!」


 女が居た所の足元にはリッパーが転がっていた。ジャックは屈み、リッパーの体を見た。


「ニャ、ニャー……ニャー………(だ、大丈夫……少し腹に蹴りを食らっただけさ………)」

「内臓とかの損傷は?大丈夫?」

 ジャックはリッパーの腹や背中を見た。


「ニャ、ニャー………(た、多分大丈夫だ………)」

「よ、よかった………」

 ジャックの拳によって飛ばされた女、アリスが立ち上がった。


「あーあ、せっかく殺せるかと思ったのになぁ………」

 アリスが不気味な笑みを浮かべながら言った。




「は?これから殺されるのはどっちだ?」




 ジャックはドスのきいた声をアリスに向かって放った。


「アハハ、そんな怒んないでよぉ、猫はまだ死んでないわけだしぃ?」

 ジャックはゆっくりと静かに立ち上がった。


「……………ニャ、ニャー!?(……………じゃ、ジャック!?)」








 ジャックは"赤い目"をアリスに向けた。









 空気が揺らいだ。肌を切り裂くような風がジャックとリッパーとアリスに吹き付けた。


「リッパー、いい感じの時間になったら起こしてね………」

 ジャックは手袋を脱ぎ捨てた。ジャックの鋭く、赤い爪が輝いた。


「………目の色が変わったねぇ、面白いn………」

 ジャックはアリスの目の前に来ていた。

「!?」


 アリスは慌ててマスケット銃を構えようとするがもう遅い。


 ジャックはアリスに鋭い爪で傷を付けていく。首筋を引っ掻き、顔を引っ掻き、腹を引っ掻き。アリスは体全身から血を流した。


 アリスはなんとかジャックを振り払い、マスケット銃を構えた。


 しかしもうジャックはそこに居らず、アリスの背後に一瞬で移動していた。



 ジャックの赤目せきがんが月光の反射で輝いた。



 アリスは急いで背後を振り返った。

 ジャックはアリスの目に向けて腕を伸ばした。アリスは目に向かって伸びてくるジャックの腕を避けようとした。しかし避けようとしてもジャックの腕はずっとアリスの目に向かって伸びてくる。


 ジャックはまるで未来を見ているようだった。



「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!!!」



 ジャックの腕はアリスの目に入った。

 ジャックは間髪入れず、隙だらけのアリスに向かって傷を与え続けた。


「ニャー!!!(ジャック!!!起きろ!!!)」

「………へぁ!?」

 ジャックは変な声を出した。ジャックはアリスから離れた。アリスは何も言わず、地面に倒れた。


「………はぁ……はぁ………」

「ニャ、ニャー!?(だ、大丈夫か!?)」


 ジャックは倒れたアリスを確認し、リッパーの下に駆け寄った。

「うん、多分大丈夫」

 ジャックの目は普段の水色に戻っていた。


「………ニャー(………ジャック、自分の目を確認してみろ)」

「ん?」


 ジャックは目を手の甲で擦った。するとアリスの返り血ではない真っ赤な色をした血が手の甲についた。



「……ニャー…(……目から血が…)」



「………」


 ジャックは自分の真っ赤な血を見た。

「………まぁ結構目に負担がかかるからね」

「ニャー(とりあえず前のサンダーの病院に行け)」

「うん。分かった」


 ジャックは地面に落ちている手袋を拾い、リッパーを担いで走り出した。


「いやぁ、まさか赤目が突然出せるとは思わなかった………昔は毎日のように出せたんだけどな」

「ニャー(けど師匠になるべくやるなと言われたことだ。極力控えろ)」

「うん、分かった………けど」

「ニャー?(けど?)」


「リッパーを傷つけられた怒りが………」

「………ニャー(そりゃどうも)」


 ジャックの目からはまだ赤い血が滴っている。


「それにしても少し心配しすぎじゃない?」

「ニャー?(しすぎじゃない。お前は昔それで失明しかけたことを忘れたか?)」

「………わすれちゃった」

「ニャー(とりあえずもうしないでくれよ、心配になりすぎて命がなんぼあっても足りん)」

「心配してくれてありがと」

「………ニャー(………そりゃどーも)」


 ☆☆☆


「あぁ……あーあ………逃げられ………ちゃったか………」


 アリスは血を大量に出しながら立ち上がった。

 アリスは来た道を戻り始め、麗矢が居る所へと向かった。



「れいや………先輩………」

 麗矢は体を血で汚したまま倒れている。


「あぁ………あはは…………まさか……死んじゃうなんて………」

 アリスは麗矢の死体のそばに座り込んだ。


「………あぁ………私の命は………これで……終わりのようです………」


 アリスはドタ、という音を立て、麗矢の死体の上に倒れた。


 ☆☆☆


「アハハ、こんなハイペースでここに来ることになるなんてね」


 ジャックは数日前にも来ていたサンダーの弟子が運営、管理する病院に来ていた。ジャックは狐色の大きなコートを着ており、服も肌も全部隠れていた。


「お前、最近かなり暴れてるな。国会爆破した時は俺でもビビったぞ?しかも国会爆破のせいで今でも政治は安定していない」


 サンダーが呆れ気味に言う。

 ジャックとサンダーは個室の中の椅子に座っていた。廊下からは忙しなく働く人々の足音が聞こえた。


「私には関係ないよ。政治が混乱してるからなんだって話。しかもあなただって武器商売してる犯罪者なんだからさ」

「………まぁそうだな」


 サンダーは犯罪者という事に全く否定しなかった。


「ところで目はどうだったんだ?」

「大丈夫だったよ、ただ失明寸前ってだけ」

「………全然大丈夫じゃないな」

「それよりも私が心配なのはリッパーだよ」

「安心しろ、獣医も居る」

「何事もなければいいけど………」


 その時個室の扉が開いた。外からは獣医と思われる細身の男が入って来た。

「えーっと、スズミさん……ですね」

 スズミというのはジャックが咄嗟に考えた偽名だ。


「どうも、獣医さん」

 男は何かの資料をずっと見ていた。

「特に異常はないですね。ただずっと鳴いてましたね。よっぽど痛かったのでしょう」

「獣医さんだけど理解できないんだね」

「………?」

「いや、なんでもない」

「まぁすぐに帰れますよ、病室に来てください」


 獣医の男は個室から去っていった。



「あああぁぁぁぁ!!!!よかったああぁぁぁ!!!!」



「お、おぉ、そんな心配だったんだな」

 黙っていたサンダーが言う。

「あったりまえだよ!私と何年も一緒に生きてきた大親友、家族みたいなものだよ?」

「まぁそうだな」

「まぁ異常が無くてよかった………安心して寝れる」


 ジャックは立ち上がった。

「じゃ、私はリッパーの迎えに行くね」

「あぁ」

 ジャックは個室から出ていった。


 そして数秒も経たないうちにジャックが帰って来た。


「………どこ通れば病室につくんだっけ?」


「……こうなると思った」

 サンダーは立ち上がり、ジャックと共に病室へと向かっていった。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


「はぁ………最近疲れるようなこと続きだね」


 ジャックは自分の家の中に居た。活動服は着ておらず、黒色のパジャマのような物を着ていた。

「ニャー……(それに振り回される自分の気持ちにもなってくれ……)」

「ごめんごめん………けどなんかリッパーが外に着いてくる夜に物事が起きるんだよね」

「ニャー(気のせいやな)」

「そ、そう」


 ジャックはベッドの上に寝転がっていた。椅子の上にはリッパーが丸まっていた。


「あー、時には休憩だってしたいなぁ………」


 ジャックは手足を大きく伸ばし、それを揺れさせた。


「まぁいいや。もう寝るから明日の昼頃に起こしてね」

「ニャー?(何かやることがあるのか?)」

「うん。ちょっとしたことをね。じゃぁおやすみ」


 ジャックは布団の中に潜り込んでいった。


「ニャー(おやすみ)」


 リッパーもまた顔を体に埋め、寝始めた。

「おい!!!大丈夫か!!!アリス!!!」


 アリスの周りを取り囲むように警察官やJCTの人間がいる。

「……………ぁ………」

「まだ脈はある!!!今すぐ応急処置だ!!!助けれる方を助けろ!!!」


 アリスは薄く目を開けた。



「………す……」



「………ん?何か言ってるぞ!!!」





「……殺す……………」




 アリスの目は紅色あかいろに輝いていた。

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