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三殺事件 ~The End of World~  作者: Red
第一章 それぞれの物語(第一幕「三人の殺人鬼」開始)
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第一話 ジャック・ザ・リッパー

 夜の路地に静寂せいじゃくを切り裂く悲鳴が響き渡る。



「こんな暗い中出歩くなんてほんと馬鹿だね」



 そう言い放ったのは黒い服に身を包んだ少女『ジャック・ザ・リッパー』だ。

 黒い服に身を包み、顔以外の肌はほとんど隠れている。水色の猫耳フードを被り、水色の髪と目を持つ彼女は、不思議な雰囲気を漂わせていた。


「ふぅ………今日はこれ程度で帰ろっと」


 ジャックはそう言い、腕周りについているレバーを引いた。するとジャキ、という音と共にナイフが袖の中に入って行った。

 次にジャックは腰回りに付けている機械を作動させ、前方にワイヤーを飛ばした。そしてそのワイヤーを一気に巻き戻し、ジャックは身を空中に浮かせた。

 長いスカートを揺らしながら空中で回転し、静かに建物の屋上へと着地、しかしバランスを崩して少しよろめいたが、なんとか耐えた。


 そしてジャックは建物の屋上をつたい、南方向へと足を進めて行った。



 ⬜︎⬜︎⬜︎(場面や時間変更時の記号)



 ジャックはとある一つの建物についた。周りに人はいない。

 その建物はどうやら元は使われていたアパートのようだ。レンガ造りで汚れが目立っている。


 中はとてつもない暗さ。床は木でできており、家具などは埃を被って放置されていた。所々に蜘蛛の巣が張ってある。

 ジャックは薄汚れた床の上に置いてある木の板をずらした。するとその下には空間が広がっていた。


 ここがジャックの拠点だ。かなり狭いが生活に必要な物は全てある。

 入って左にベッド、シャワー、トイレの順。右側には広い作業机、キッチン、物置、洗濯機の順だ。壁や床は白いが所々に謎の赤いシミがある。作業机の上にはなにやらよく分からない機械が散乱していた。


「ただいま、リッパー」


 そう言うジャックの前には一匹の猫がいた。真っ黒な毛を持ち、目はジャックと同じ水色をしている。


「ニャー(おかえり、ジャック)」

 リッパーと呼ばれた猫がそう言う。


「ニャー(飯をよこせでください)」

「はい、ご飯ね」


 ジャックはそう言い、頭に付けてあるフードとマフラーを脱ぎ捨て、棚にある猫用の餌を手に取り、そして普通にリッパーに飯を与えた。


「ニャーオ?(今日は何人?)」

「五百五十五人ピッタリにして来た。なんか丁度良かったから?」

「ニャー(なんだそれ)」

「けど一日中動いてこの量か………」


 そうジャックは軽く言うが、五百五十五人は凄まじい量だ。それを軽く言うジャックを、リッパーは日常かのように受け止めている。


「今日は結構動いて来たから疲れた、さっさと寝よっと」

 ジャックはそう言い、シャワーを浴びたりご飯を食べたりと普通の人間と変わらない事をした。

 そしてベッドの上に横たわった。ベッドはかなり小さいがそれ以上にジャックが小さいので問題はない。


「じゃ、おやすみリッパー」

「ニャー(ほいよ、おやすみ)」

 ジャックはそう言い、深い眠りへと落ちた。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


 次の日だ。と言ってももう夕方近くだ。

 ジャックは午後五時頃に起き、銃やナイフの整備をした。

 そして夜になる頃、ジャックとリッパーはそれぞれ朝食を食べ、ジャックは外に出た。



 外は不気味なほど静かだった。石やレンガで作られた家などが密集し、人気ひとけはまるでない。ジャックの家からは八方向へと道が伸びており、西方向には朽ちかけた時計台があるが三時丁度で止まっていた。もう動くことはない。


 この街に人は殆ど居ない。その理由はジャックザリッパーという凶悪な殺人鬼が居るからだ。しかし人々はこのアトランティス大陸から逃げる事が出来ない。


 ────どこへ逃げても、いつかジャックの刃は届く。誰も決して生き延びることはできない。


 ジャックは基本東方向に行き、人を殺して周る。老若男女お構いなしに。

 そして家の中に居ても同じだ。ジャックは家の中に入ってまで人を殺す。




 ジャックはとある家の中にいた。

 ジャックの目の前には小さな小さな少女が涙を流しながら怯えて固まっている。


「お母さんたち死んじゃったね、怖いだろうね。安心して」


 ジャックはそう言い、どこからかキャンディを取り出した。そしてそのキャンディを少女の口にねじ込んだ。

 少女は恐怖によって動けず、怯えた目をジャックに向けたまま、動こうとする願いもはかなく朽ち果て、ただ震えるばかりだった。

 声も出せない。喉の奥で、助けを求める悲鳴が音にならずに消えていく。


「じゃあね」


 シャックは微笑ほほえみながらそう言うと、静かにその場を離れた。


 ──数秒後、静寂せいじゃくを切り裂くように、小さな爆発音が響いた。


 キャンディの中に仕込まれていた小型爆弾が炸裂し、甘い香りと共に、破片が散弾となって弾け飛ぶ。

 少女の顔は、一瞬のうちに鮮血の花弁はなびらに覆われた。




 こんな残酷な殺し方をする。これが「ジャックザリッパー」だ。

 目標である「人類滅亡」の為に無差別殺人をする。


 ジャックザリッパーは夜の暗い街に赤く染まる花を何輪も咲かせていった。






 ⬜︎⬜︎⬜︎




 午前三時頃、一通り人を殺して来たジャックは家に帰って来た。服が他人の血によって汚れ、その狂気さを目立たせている。



「国会爆破させるぞ!!!」


 ジャックが大声でそう言う。


「ニャ!?!?(気が狂ったか!?!?)」


 リッパーが驚きながら言う。


「んー?いいアイディアだってー?そうでしょー?」

「ニャー……(そんなこと言ってないわ……)」

「三日後どうやら国会に政治家と警備員が大量に来るらしいんだよね、そこにドカンと一発爆弾を落としたら大量虐殺できるかもってわけ!」


 ジャックは腕を大きく広げながら言った。バサッと髪の毛が揺れ動き、美しい水色と返り血の赤色をばら撒く。


「ニャー……(まぁ協力はするけど……)」

「警察もこれまで私がこんな大量虐殺を狙ったことがないから油断してるはずだし」

「………ニャー?(………そうか?)」


「しかもこんな重要な機関を爆発させるなんて楽しそうだし、一気に人間も殺せるはず!」

「ニャ……(サイコパス……)」

 リッパーはやや引き気味だ。


「で、その爆破をリッパーにも手伝ってほしいんだよね。」

「ニャー?(ワイが?)」

「そう、やることは簡単、警備員に多分『プロテクター』の輩の一人がいるからその人の気を一瞬でもいいから引くだけ。簡単だしリッパーならできるでしょ?」

「ニャー(まぁそれ程度なら)」


「しかもプロテクターなんてクソザコ、リッパーが戦っても勝てるでしょ?

「ニャー(それはないわ)」

「まぁいいや、決まり!!三日後の十四時に国会爆破実行!!」

「ニャ、ニャー?(お、おうー?)」


 なんとも物騒な話だろうか。


 『プロテクター』とはジャックザリッパーを殺す為だけに生まれた組織だ。人数は基本三百人ほど。基本的に体力や技術を必要とするので皆それぞれ鍛えられている。

 ジャックとも状況が良ければ互角に張り合える。状況が良ければ。


 ジャックはこのプロテクターをもう三十人程度殺している。しかも苦戦することはなかった。

 あまりにもジャックが強すぎる。そう結論付けるのが早い。


「にしても爆弾どうしよう………私達が逃げるほどの余裕は欲しいからな………時限爆弾を赤外線信号で起爆させる仕組みにしようかな?」

「ニャー?(時限爆弾を俺に巻き付けるとは言わないよな?)」

「ふふ、どうしようかな?」

「ニャー!?(絶対にやめろよ!?)」

「ま、そこら辺は明日考えよう。じゃ、おやすみ、リッパー」


 ジャックはそう言い、風呂にも入らず一瞬で寝てしまった。


「ニャー…………ニャ!?(やれやれ、ほんと困ったやつだな…………あれ?俺の飯は!?)」


 しかしその言葉はジャックには届かなかった。



 ⬜︎⬜︎⬜︎



 十三時、ジャックは国会近くの八階建てのビルから国会を望遠鏡で見降ろしていた。国会は東地区にあり、その東地区の中でもかなり発展している街に位置している。しかし周りのビルは一番高い物で十階程度、二十階を超える建物はない。


 国会は周りの建物と違い、五階程度で豆腐のように真四角な建物だった。しかも外壁が白色なのでより一層豆腐感が増している。

 ちなみに国が無いのに国会と呼ぶ理由は立法機関を行う施設をまとめて国会と言う為だ。


「……人が来るまでかなり暇だね」

「ニャー(まぁ出発がかなり早いとは思ったが)」

「まあ油断しないで待っておこう。バレたときは………まぁその時考えれば十分」

「ニャー(せやな)」


 ジャック達がそんな会話をしていた時、エレベーターが動いた。


「ニャー(そんな呑気なこと話してたら話に参加したい人が来たみたいだな)」

「そうだね」


 ジャックは立ち上がり、ナイフを構えた。


 エレベーターからは二人の警官が出てきた。

 ジャックは警官がエレベーターから出てきた瞬間に年老いた警官に飛び付き、年老いた警官の首と体を亡き別れにした。


「う、うああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 若い警官が叫ぶが、こんな高いビルの屋上、人に声が届くことは決してない。


 ジャックはその若い警官の両手をとりあえず切った。


「私はね、君みたいな怯えた人間が嫌いなんだよ」

 ジャックが若い警官に迫りながら言う。


「うるさいし、キモいし、なんか嫌だし」

「ああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!誰かああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!誰かァァァァァァァガハァ!!!!!」


 ジャックは若い警官の喉に一本のナイフを刺した。

「そんな叫んだらうるさいよ。少し黙ってもらえないかな?」

「あ"…………が………」

「あ、そうだった、喋れなかったんだね」


 ジャックはそう言い、若い警官から喉に刺さったナイフを抜いた。返り血が噴水のように吹き出し、ジャックの服を血で濡らす。

 そして、そのまま若い警官は死んだ。


「あ、抜かない方が良かったかもね。ってもう遅いか」

 ジャックは死体から離れた。

「………ニャー……(………サイコパス……)」


 ジャックは視線を国会に向けた。


「え?もう人が来てる?思ったよりも早いね」

「ニャー(いた、プロテクターの輩だ。三時の方向)」

「あれは動物使いの…………名前忘れたや。ま、そこまで強くはないけど動物が厄介かな」


「ニャー?(とりあえず作戦開始か?)」

「そうだね、もう動き始めよう。リッパーは自然な感じにプロテクターの方向に向かって、車に轢かれないようにね」

「ニャー(了解)」


 そう言い、ジャックは足元にあった袋を担ぎ、ビルから飛び降りた。リッパーもまたビルから飛び降り、作戦の実行へと移った。

 ジャックは少し離れた場所のマンホールから下水道に入り、リッパーは自然な感じに道路を突っ切った。警官が静止しようとするがそれを避け、とりあえず国会の中の庭へと逃げた。



 ジャックは袋の中に入っていた時限爆弾を下水道に張り巡らせていく。

 しかし当然下水道にも警備隊が居た。


「お前!何をしている!」


 警備隊の隊長と思われる人が言った。


「こんばんは、何してるかはもうちょっと経てば分るよ」

「お、おい、お前がジャックザリッパーか!?」

「せいかーい☆まぁ知ってるなら話が早いね」


 ジャックはそう言い、袋を地面においてから銃を一丁取り出した。デザートイーグルのように見えるが少し違い、改造が施されている。それはジャックの手のサイズにも合うような小ささになっていた。

 ジャックは警備隊の一人にその銃を二発放った。銃弾は綺麗に脳と心臓へと飛んで行き、警官を一瞬で絶命させるには充分だった。


 警官の頭と体から大量の血液が、まるでダムが決壊するように噴き出す。止まることを知らない勢いだ。そして、それらは警官の気を狂わすには充分過ぎた。


「あ、ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「お前ら!!!落ち着け!!!!バラバラになったら全員殺されるぞ!!!」

「うわあああああああああああああああぁぁぁ!!!!!!」


 隊長の声は悲鳴に掻き消される。ジャックは混乱状態の部隊の中心へとジャンプし、ナイフを振り回した。


「ああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 と若い警官が叫び、ジャックに向かって拳銃を放った。


「そんな撃ち方で私に当てれると思った?」


 ジャックは飛んでくる弾丸を軽くかわした。まるでこれが日常と言わんばかりに。


「残念だね、全然的外れだよ」

 かわした銃弾はジャックの背後にいた警官の腹へと突き刺さり、返り血がジャックの背中を濡らした。


「あれ~?こんな簡単にやられちゃうの?給料分の仕事くらいしたらどう?」


 振り回したナイフは隊長、副隊長、若い警官を関係なしに切り裂いていく。そして下水道からの悲鳴は聞こえなくなった。


「………ふぅ、警官がいるとは思わなかったな。もしかしてサプライズってやつ?面白いね………まぁそんなことないか」


 落ち着いたジャックは冷静に独り言を呟く。

 その時、猫耳フードの耳部分から声が聞こえる。


「ニャー(スタンバイ完了)」

「分かった、こっちはまだかかりそうだね」

「ニャー(急いでな、警備員が俺を追ってる。捕まる前に早くしてな)」


 ⬜︎⬜︎⬜︎


「よし、リッパー、今から一瞬だけマンホールを開けて赤外線信号受信機をセットする。合図したらプロテクターの人間にアピールして」

「ニャ(了解)」


 車の音が通り過ぎる。



「……………今!!」



 掛け声と同時にリッパーは歩道に飛び出て、人々の視線を買った。プロテクターの男もリッパーに視線を送っている。

 ジャックは三秒ほど待ち、重いマンホールの蓋を何とか開け、開いた隙間に赤外線信号受信機をセットした。


「よし、大丈夫?」


 十秒ほど経って


「ニャー(捕まったけどすぐ解放された。大丈夫)」

「ふぅ、作戦成功って奴だね」

「ニャー(少し離れたビルで待ち合わせよう)」

「分かった。また後で」


 ⬜︎⬜︎⬜︎


 ジャックとリッパーは国会が少し見えるビルの屋上に移動してきた。


「よし、スイッチ入れてみるよ」

「ニャ、ニャー?(了解、赤外線信号届くか?)」

「わかんない、けどやってみよう」


 ジャックは手に持っていたリモコンを国会前の道に向けて、リモコンのスイッチを押した。

 すると国会前の道のマンホールが少し光った。少しだったが、ジャックの視力ならこれ程度で充分だ。


「……大成功!離れるよ。肩に乗って」

「ニャー(にゃー)」

「………?」

「ニャー(なんでもない、少し猫になりたかっただけ)」

「………リッパーって猫じゃん」

「……ニャー(……確かに)」


 ジャックは肩にリッパーを乗せ、ビルから降りた。

 そしてしばらく路地を道なりに進む。



「………?」


 ジャックが右方向を向く。



「……なんか来てる!!」



 右方向には犬が一匹いた。そしてその犬はジャックに向かって突進している。

 ジャックは犬の突進をギリギリで避け、その犬の首に向かってナイフを振るい落とした。無様にも犬の頭は一瞬で切り落とされ、その犬は最後に発言することも許されずに命を絶った。


「この町には犬は現れないはず。飼い犬としか考えられない………まさか動物使いの………思い出した!ジェニーにバレた?」

「ニャー!(三時の方向!)」


 ジャックは右を向き、空から飛んでくる人間の攻撃を受け止め、返り討ちにしようとナイフを振るう。しかしそのナイフは現れた男のナイフによって防がれた。


「リッパー、離れてて!」

「ニャー(わかってる、屋上から情報伝達だろ)」


 リッパーはジャックから離れ、路地の闇の中へと消えていった。


「………お前がジャックザリッパーか……ただの少女じゃないか」


 現れた男、ジェニーが憐みの目をジャックに向けながら言う。

 ジェニーは四十代程度か。しっかりとした黒いスーツを着ており、武器は隠されていたが隠れている所は丸わかりだ。


「ジャックザリッパー?誰の事?それより突然初対面の人に切り掛かってくるとか頭おかしいんじゃないの?」

「その言葉、そっくりそのまま返す。俺らの両親を殺しやがって………!!」

「何人も殺してきたからわからないや」


 ジェニーはジャックのその言葉が言い終わると同時にジャックに向かって突進した。



「無作為に突進するのはダメだよ」



 ジャックはそう言い放った。

 ジェニーの突進が迫る。しかしそんなのジャックにとっては子犬が近付いていているだけのようなもの。ジャックは容易くジェニーの突進をかわした。

 そしてジェニーとジャックが交差した瞬間、ジャックはジェニーの腹に向かってナイフを振った。


「………まぁ、そうなるよな」


 ジェニーがそう言う。


「キミ、よくそんなに弱いのに自信満々で私に勝負を挑めたね」


 ジャックはジェニーから奪い取ったナイフをクルクルと回しながら言った。

 ジェニーが腹に付けていた防弾チョッキは、ジャックの攻撃によってビリビリに引き裂かれている。


「逃げるなら今のうちだよ?まぁそんな死ぬ覚悟がない人間がそう長生きできると思わないけど」


 ジャックがその言葉を発した後、影から二匹の狼が出てきた。


「動物を捨てるなんて………可哀想だね」


 ジャックは猛然と突進してきた狼の首を斬り、もう片方には、スカートを揺らしながら全力で回し蹴りを放ち、吹き飛ばした。

 そして地面に落ちた狼に向かってナイフを投げ飛ばした。狼に抵抗する術は無く、最後の遠吠えもしばらくすれば朽ち果て、その命を終わらせた。


「動物に情けをかけても、キミにとっては無意味だろうね」

「まぁこれが避けられるのは想定済み、ただの時間稼ぎだ」


 ジェニーは新たなナイフを取り出した。


「へぇ、何の時間稼ぎなの?」

「教えるわけな……」



「虎2匹、ライオン一匹、黒豹二匹を待ってるのかな?」



「……………何故それを知っている」

「さぁ、なんでだろうね」


 ジャックがそう言うと虎二匹のうち一匹が影から出てきた。ジャックは虎の爪を容易くかわし、その前足を両方とも切り落とした。

 そしてジェニーに向かってすぐに突進した。

 ジェニーは拳銃をジャックに向けて撃つが全弾避けられ、ジェニーはジャックに肩を刺された。


「ぐあぁ!!!!!」

「あはは、弱いねきみ」


「………まだこれだけではない、まだ奥の手が………!!」

「奥の手?あぁ、今後ろから突進してきてるライオンのことね」


 ジャックは後ろから来るライオンの飛び付きを勘で避けた。ジャックが小さい為、ライオンの突進は屈んでいるジャックを飛び越え、ジャックの前にいたジェニーに当たった。


「ああああああぁぁぁぁぁ!!!!」


 ライオンは一心不乱にジェニーを攻撃する。

 ライオンにはジェニーが見えているのか、それは定かではない。しかし攻撃を止めることはないだろう。


「よかったね、最後のひと時を自分の仲間と過ごせて」

「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


 ジャックはライオンの首をナイフでズタズタにして切り裂いた。太かった首はいとも容易く切り落とされ、大量の血を吹き出した。


「さ、他にも私を狙う動物がいるからね。とりあえず邪魔にならないようにあなたは死んじゃえ」

「ぐ……このままやられるわけには……!」


 ジェニーは何か話そうとしたが、言葉を言い終える前に彼の首は無機質に転がった。

 ジャックのナイフには新たな血液が一つ追加された。


「さてと、リッパー、どこに何がどんだけいる?」


 リッパーはビルの上にいた。


「ニャー(ジャックから見て四時の方向に虎一匹、九時の方向に黒豹二)」

「やっぱり挟み撃ちにしようとしてたんだね。」

「ニャー(ほら、そろそろ来るぞ)」


 先に虎がジャックの下へとやって来た。しかしジャックは一歩たりとも動かない。余裕の表情をしている。

 虎がジャックに噛みつこうとした時。




 空気を切り裂くような、鼓膜を引き裂くような、凄まじい爆発音が響いて来た。




 それと共に衝撃波が建物を揺らし、近くの窓ガラスを破壊している。


 そして地面が揺れ、虎の真下にあったマンホールが吹き飛んだ。虎は飛んできたマンホールに巻き込まれ、空遠くに飛んで行った。


 ついでにジャックも衝撃波に飲まれ、少々飛ばされた。


「いてて………リッパー、大丈夫?」

「ニャー(ああ、大丈夫だ。)」

「この轟音と衝撃波で黒豹達は大暴れするだろうね。私たちのことなんか忘れて」

「ニャー?(最初からそれを狙っていたのか?)」

「いや、そういうわけでもないね。とりあえず何故プロテクターにバレたのかって話さ」


「ニャ、ニャー………(じ、実はあんま上手く視線買えてなかったかも………)」

「よし、今夜の夕食はこのネコかな?」

「ニャー!!!!!(ごめんごめんごめんごめん!!!!!)」

「アハハ、そんなアホらしいこと話さずさっさと帰るよ、肩に乗って」

「ニャー(ほいよ)」


 リッパーは壁を伝い、地面に降りてきた。


「…………まぁ実際はリッパーが捕まえられた時に匂いをアイツの犬か何かが嗅いでそれを追いかけて来たとかだと思うけどね」

「ニャー(なんやねん)」

「けど、犬に襲われるのは厄介だね……ま、いいや!」


 ジャックはリッパーを肩に乗せたまま、ビルを伝い、家へと向かった。


 ジャックの後方には黒煙と炎と悲鳴が立ち上り、長い間消えない混乱の渦を生み出していた。


 ⬜︎⬜︎⬜︎


「ふぅ、作戦はギリ成功だね」


 ジャックとリッパーは家に帰って来た。


「ニャー(ごめんな、自分がもっと上手くやればお前が怪我しなくて済んだのに)」

「そんな、怪我って言っても少々足を擦っただけさ。しかも根本的な怪我の原因は自分が爆破を起こそうって言ったのだし」


 ジャックは足の治療をしていた。


「よし、これで完了っと」


 治療と言ってもただ血をふき取る程度だ。傷はもう見当たらない。再生している。


「ニャー?ニャー(ところでプロテクターの奴らって本気でジャックを殺しにかかってるのか?あまりにも弱すぎる)」

「いや、あのジェニーって奴はプロテクターの中でも下の下、これまで戦ったやつらもみんなそう、だから弱く感じてるだけ」


 ジャックは立ち上がりながら話した。


「ニャー(ところで飯ください)」

「はいよ、今日はリッパー頑張ってくれたから少々豪華に缶詰をあげてやろう♪」

「ニャー(おっしゃおらあああぁぁぁ!!!)」

「ふふ、喜んでもらえてよかった。私もご飯食べよっと☆」


 ジャックはそう言い、リッパーと同じように少し豪華なご飯を食べた。






「……………あっこれ銃弾の缶だ、リッパー食べる?」

「ニャー!?(無理よ!?)」

 午前二時、電話の音が響き渡っていました。

 ジリリリリ。ジリリリリ。


「はい、もしもし?」


 男は唸る電話を取りました。


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