最悪で最高なその日
「いっっやぁぁぁぁあ!?」
緑の草原を全速力で夕日に向かって駆け抜ける少年が一名。
後ろに爽やかな汗を流すクラスメートや先生が居たのなら、「青春してるねえ~」とでも言いたくなる。
しかし、彼を追い掛けているのは化け物である。
棍棒を振り回す化け物である。
肌はゴツゴツしていて茶色。
大きな目が一つある全長三メートル程の化け物である。
「おおおおおぁぁぁッッ!!」
かれこれ、三キロ程は走っているであろう少年の足は針金でも巻かれたかのように動かしにくい。
このまま、倒れてやろうか? とか半ば本気で思うが止めておく。
死にたくないからだ。
「ウガァ!」
犬歯を剥き出しにしながら追い掛けてくる。
「うわぁぁぁ!」
ぐそぅ! 何が悪いんだ! 夏休み突入!? イエー! とかハイテンションになってた俺が悪いのか!!?
と、七月十九日を思い出してみる。
――――――――
――七月十九日
「来ましたよ! 夏休みが!」
少年こと、八神海斗 (やがみかいと) が言う。
ララルル~ン♪ とスキップしそうになるがそれを抑えて廊下を歩きに見えなくもないように走る。
先生の注意避けである。
河合先生が反対方向から来たので挨拶をする。
と、
「は~い。また明日!」
可愛らしく言う身長百六十センチの河合先生。
「え?」
思わず、と言った感じで聞き返す。
「だから~補習ですよ~」
にっこり可愛く (海斗は悪意を感じる) 笑顔でそう言った。
――――――――
自転車に乗り、赤信号待つ海斗が暗い表情をする。
「うだぁ~。嫌だ! 補習何て!」
海斗が横に居る三島シゲルに言う。
「仕方ねえよ、お前が悪いんだ。高校生の辛さを味わったと思っとけ」
と、非情な三島はそう言う。
三島はまぁ、カッコいい。
イケメンと呼ばれる一人である。
良い具合に筋肉が付いてある。
鋭い眼光に、日本人にしては高い鼻が特徴である。
因みに、海斗は――普通。
女子としては、「あ~。ん。まあまあ良いんじゃない?」 (棒読み) されるぐらいの普通さである。
「くそぅ! 補習かぁ~」
ズ~ンと沈む。
と、
「まあまあ、私と一緒に海に行こう! 八月十九日に!」
と言ったのは栖川美奈 (すがわみな) 幼なじみである。
可愛い少女だ。
全体的に丸みを帯びたフォルムに、くりくりとした瞳。
うん。コイツがモテる理由が分かるわ、と心の奥底で思いながら言う。
「まあまあの後に何でそれが来るんだよ!」
「え~。私のビキニ姿を見たくないと」
よよよ、と嘘泣きする。
一瞬だけ想像する。
あれ? やたらエロくなったぞ?
と、ビキニ姿の妄想を強制終了させて、馬鹿話に花を咲かせながら帰って行った。
――――――――
家に帰り、自室で夏休みの宿題を一週間で終わらしてやる~! とか意気込んだ……のは良いが一時間も保たずにノックダウン。
と。
急に、重力がキツくなったのを感じた。
三十キロ程の重りを身体に乗せられているようだ。
四十、五十、六十、とドンドン増えていく。
「ガッ……あ!?」
百キロ程の重さを感じた瞬間、海斗は別世界へと飛んだのだった。
――――――――
「俺何も悪くねえ~~! 悪いのは俺の運だ!」
ここどこ? ……と思う暇も無く化け物に襲われたのだった。
化け物の住処にいつの間にか居たというのが悪かったのだろう。
海斗は「何でこんな奴らが居て、こんな地平線が見えるような草原に居るんだよ!」という疑問を抱き、頭を抱えたい気持ちで一杯なのだが、化け物に襲われているのでヘタに頭も抱えられない。
「マジ死ぬ! マジ死ぬ!」
涙腺が緩み、涙が零れそうになるがグッと我慢の海斗である。
と。
「ハァァア!」
という気合いの声と共に化け物が漫画みたいに吹っ飛んだ。
「助かった……」
なんだか良く分からないが助かった。
と、急に力が抜けて、
ドサリと力無く倒れ込む。
いつの間にか現れ、いつの間にか化け物を倒した人が海斗に近付く。
そして、
「大丈夫?」
と、白髪で碧眼の少女が言う。
可愛いに分類されるであろう顔立ちだ。
目が猫みたいにくるくる動き、海斗の事を観察しているようだ。
「変わった髪の色してるね?」
にっこりキラキラ無邪気に笑った。
行き当たりばったりな小説です。
つーか最終話まで続けれるのか……。