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『足音』  作者: 砂上楼閣
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これは何年も前、仕事先の方と飲みに行った際に聞いた話です。


…………。


「まだこの仕事を始めたばかりの頃の話だから、今から10年以上前か…」


程よく、と言うにはだいぶ酒も回った頃。


シゲさん(仮称)は昔語を始めました。


「こんな仕事してると、全国色んな場所に行くわけだから、今じゃ行ったことのない県の方が少ないくらいなんだけどさ…」


シゲさんは割と仕事中は寡黙な人で、それまでろくに話した事もありませんでした。


しかしお酒が入ったからか、その時は随分と長く色んな事を話していました。


「現場で向かう土地によっては、色んな理由で入っちゃいけない場所ってのがザラにあるんだ。単純に事故が起こりやすい場所だったり、国とかの管理地だったり。ま、他にも……曰く付きな場所とかね」


酒の席の喧騒の中、シゲさんと私のいる場所だけ静かな空気が流れているようだったのを覚えています。


その時のシゲさんは多少赤ら顔ではありましたが、目だけはどこか遠くを見ているような、静かな瞳をしていました。


「今でこそ安定した仕事ばかりだけど、当時はまだ業務内容が固まってなくて、色んなことやったよ。小さい会社だからさ。人手が足りないとこがあれば、どんどん出向して。代わりに仕事回してもらったりしてね。けどまぁ、合わない仕事ってのはあってね…」


なんでも、シゲさんは警備関係の仕事ではろくな目に遭ったことがないそうです。


「一言に警備と言ってもやる事はたくさんあるよ。相手するのも人ばっかりじゃない。鹿や猪、何度か熊も相手したな。人にも襲われたけど」


実際に見せてくれましたが、シゲさんの腕や肩には切れたり抉れたりしたような痕がたくさんありました。


「ん?なんだ、警備ってのは都会のビルやマンションで何かあったら出動するばかりじゃないよ。そう言うのは専門の業者がいる。俺たちがやるのは夜の工場の見回りだったり、お偉いさんが来る会場に何日も前から詰めたり。イメージそのまんまの警備の仕事もあったけど、まぁ何の為にやるのか分からないような仕事も多かったなぁ」


なまじ本業ではない分、面倒な仕事ばかり振られていたんだろうな、そうぼやくシゲさんはまるで歴戦の兵士みたいな雰囲気でした…。


そしてその中でも特に記憶に残っている出来事があるとの事で、思い出すようにゆっくりと語ってくれました。


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