第二話 討つべき敵
泥の厄災は、メアリーから体を貫くように、神の核を抜き出した。
幸いメアリーに怪我はなく、厄災は核を盗み帰ろうとしていた。
僕は急いで追いかけても、厄災の方が逃げ足が早いせいか、距離が縮まらない。
思い切ってその辺にあった石に祈力を込め、厄災の核の炎めがけて思いっきり投げた。
「当たれーーっ!」
その石は見事に命中し、厄災の胴体を貫いた。
すぐさま振り向いて妹の元に駆け寄った。
「大丈夫か...?」
「おい...」
返事はなかった。
これは植物状態というやつだろうか。目は少し開いているが、少しも動かない。
僕は悲しみより先に、怒りを覚えた。まだあいつが視界に入っているから。
「ここからでもあいつに追いつけたら...」
そう強く願っていたら...
僕は飛んでいた。
「あれ...飛べてる..!?」
僕はぎこちない動きで地面をトランポリンのように跳ねていた。
いつの間にかあいつの真上にいた。これなら...。
「うおおぉーっ!」
片手を握りしめ、上空からお見舞いしてやった。
あいつの核は消えていったからもう大丈夫だろう。と落ち着いた束の間、
突然上から赤みがかった異質な鳥?がメアリーの神の核を奪っていってしまった。
多少苛ついていたが、そいつはもういなかった。
溜まった悲しみがどっとでたのか、僕の目からは涙が溢れていた。
悲しみに明け暮れていたが、突然、
ザーッザザーッ... 「破壊の厄災に会いに行け...そうすれば...」
突然前よりとても強い頭痛と共に、また記憶が流れてきた。
見えた景色も鮮明で、後ろには、
崩れゆく城とそれと一緒に落ちていく真っ黒な、闇に染まった厄災の核があって、
空は紫色になっていた。
「なんでこんな時にっ... でも.. 」
でも、この記憶のおかげで...
討つべき敵が、分かった気がする。