カイさんと夏祭り
皆さん、こんにちは!
小学五年生のヒヨリです。
私、今とてもワクワクしています!
なぜかって?
それは、夏祭りがあるからです。
夏休みも、もう半分終わったけど、これだけははずせないもの!
「カイさん、もうすぐ夏祭りだね」
「夏祭り?」
「あっ、そっか。宇宙人はわからないよね」
「むむっ」
今、私と話しているのは、宇宙人のカイさん。
突然、私の家にやってきたの。
体がちっちゃくて、小型犬が二本足で立ったくらいの大きさかな。
カイゼルひげも、生やしているのよ。
頭には、毛が一本でクルリと巻いてて、カイさんの気持ちに合わせて動くのよ。
最初は驚いたけど、今では友達みたいな関係ね。
そのカイさんに、私はお祭りの説明をしたの。
「いろんな屋台っていうお店があってね、ヨーヨーつりや金魚すくいがあるんだよ」
「ほぅ」
「あと、食べ物も売っているかな」
「おぉー!」
あっ、カイさんの目が、キラキラ輝いているのがわかる。
頭の毛も、ピーンと伸びて左右に揺れているわ。
やっぱり、宇宙人でも楽しみなんだな。
わかるよ、その気持ち!
「あぁ、でもカイさんはダメかも」
「なぜじゃ!」
「だって宇宙人だし、見るからに怪しいし」
「ガーン!」
カイさんは、すごいショックを受けていた。
頭の毛は、雷が落ちたようにギザギザになっている。
しかも、今度はすごい潤んだ瞳で、私を見つめてくるんだけど……
「よしっ、いいこと思いついた!」
私が手を叩くと、カイさんは不安な表情をした。
「そんな顔しないで。浴衣着て、ごまかしちゃえばいいんだから」
「浴衣?」
「浴衣っていうのは、お祭りとかに着ていく服だよ。ちょっと待ってて」
「ヒヨリ、どこ行くんじゃ?」
「確か、人形が着ていた物があったはず……」
私はゴソゴソと、物がいっぱいつまっている箱を漁った。
「あった、あった。これならカイさんに似合うと思うんだよね。着てみてよ」
「うむ……」
カイさんは、私が渡した服を、不安な顔をしながらも着てくれた。
あーら不思議、ぴったりじゃん!
「でも、なんだかおじさん感が抜けないね」
「そうかのぅ、可愛らしいと思うんじゃが」
「あっ、そっか。元々おじさんだから、問題ないね!」
私は、ニカッと笑って、親指をたてた。
すると、カイさんは、すごい勢いでジャンプしてきた。
「なんじゃとーっ!」
「ぐはっ」
見事に、私にカイさんのグーパンが飛んできました。痛いです。
いや、本当に……
「でも、これで夏祭りに行けるね」
「うむ。先ほどの言い方には腹がたったが、これなら違和感ないじゃろ」
いや、カイさんが宇宙人ってだけで、十分違和感ありまくりだよ。
私はそう思ったが、また殴られるのは嫌なので黙っておくことにした。
そんなやり取りをしながら、夏祭りの日を待った。
そして、夏祭り当日です。
私とカイさんは、浴衣を着てお祭り会場に来ていた。
「人が多いね。カイさん、お願いだからはぐれないでね」
「ぎゃぁーっ、ヒヨリ助けてくれーっ!」
「なにやってるの、早くこっちに来て!」
私はぐいっとカイさんの手をひいて、自分のところに引き寄せた。
「ふぅー、ひどい目にあったわい」
「もう、言ったそばからはぐれるんだもん」
「そう言うでない。しかし、人が多くてつぶされるかと思ったのぅ」
「カイさんの悲鳴が聞こえた時は、すごく心配したよ」
それからは、私がカイさんを抱っこして、屋台を見てまわったの。
すると、金魚すくいの屋台が見えてきた。
「カイさん、この前言ってた金魚すくいだよ」
「おぉっ、これがそうなのか」
「このポイっていうので、金魚をすくうんだよ」
「お嬢ちゃん、可愛い子ども……子ども?」
「子どもですよ」
あぶない、あぶない。おじさんに怪しまれたよ。
私は、なんとかごまかした。
「いくらですか?」
「一回五百円だよ」
そして、カイさんがポイを持って水槽に近づくと、なぜか金魚が逃げていく。
別のところに行ってみても、また逃げていく。
「なぜ、なにもしていないのに逃げるんじゃ!」
「やっぱりわかるのかな、変なやつって」
「ガーン!」
あっ、またショック受けてる。
私がくすくすと笑っていると、金魚の様子がおかしい。
カイさんの頭にある一本の毛が、ユラユラ揺れていた。
それに金魚たちが反応して、こちらに飛びかかってきたのだ。
おじさんも、びっくりしていたよ!
「ぎゃぁーっ!」
私とカイさんは、一目散に逃げました。
そりゃそうでしょ。あれは怖いもの……
だいぶ走って、二人とも息を切らしていた。
「もう、散々な目にあったわよ。一体なにが起きたんだか……」
「いやぁ、金魚すくいというのも、なかなか難しいものじゃのぅ」
いや、あれは異常だから。
あれを普通だとは、思わないでほしいかな。
「あれ、カイさんの頭の毛に、金魚がくっついてるよ」
「うわっ、本当じゃ!」
私たちは、急いで戻って、おじさんに金魚を袋に入れてもらったわ。
すると、ヒューっと音がして、花火があがった。
それは、とてもきれいな花火だったわ。
横のカイさんも、キラキラした目で花火を見ている。
よかった、連れてきた甲斐があったよ。
私はうれしくなって、もう一度花火を見上げた。
「また次も来ようね、カイさん」
「そうじゃのぅ。こんなきれいなものを見たのは、初めてじゃわい」
私たちは笑いあって、ずっと花火が終わるまで見ていました。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!