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7 落橋


 ハッシュレイ湖の近くまで馬車に揺られていたローゼン公爵と、側妃マリアベルは、のんびりと離宮の構想を話していた。

「ねえ、お父様、王妃(あの女)の国にも大きな湖があるそうなの。

そこにはかなり有名な別荘があるそうなのよ。それよりは豪華にしないと!」

「そうだな、陛下も金を出してくれるようだし、王妃を廃妃にしてくれれば、その予算が丸っと使えそうだしな」


ふと、ローゼン公爵は窓の外を見た。

何か感じるものがあり、変な違和感を覚えたのだ。

「おい、王宮からの伝令はしばらく来ておらんようだが、どうなっている?」

馬車に控えていた執事に問うと、執事は御者に声をかけ、馬車を止めた。

「確認してまいります。もし、馬車の外に出られるようでしたらお茶の用意をさせますが」

「よい、確認だけしてくれ」


執事が急いで確認に走っていく様子を見て、公爵は胸騒ぎを感じていた。

娘が陛下の寵愛を得た!と思っていたが、本当だろうか?

目の前で王妃をエスコートしないだけで、ないがしろにした、と言えるだろうか?


「マリア、お前、陛下と夜を過ごしたことは?」

「いやですわ、そんな事をお父様に話すのは・・・」

フフフ、と浮かれて笑うマリアベルだが、公爵はさらに質問を募った。

「恥ずかしいとかどうでもよい、夜を過ごしたことがあったのかを聞いておるのだ」

「ギルバートが生まれてからはありませんでしたが、陛下はそのうちに、と言ってくださいましたわ。

今は隣国との関係もあるから、と」

「!!では、お前が寵愛を得た、というのは?」

「だって、陛下は王妃を叩いて追い出したのですよ?それからは一度も王妃の部屋を訪れていないことは確認しておりますし」

「いや、しかし・・・」

「わたくしとのお茶には来てくださいますのよ。お忙しくて毎回ではありませんが・・・」

「その時何を話していたんだ」

「ハッシュレイ湖は美しいが、開発が遅れているから、王家が最初に動き出したいから何を作りたいか、と聞かれましたので、離宮はどうかとお勧めしましたの。

そしたら、それはいい、開発の始まりをお願いしたいから、と」

マリアベルも公爵の雰囲気にのまれ、浮かれた気分が沈んでいった。


「大変です!昨日通ってきた橋が落ちました!」

確認をしていた執事が、顔を真っ青にして戻ってきてそう告げた。

「なっ!!」「ええっ!!」

「あの橋が落ちてしまうと、王宮に戻るのに時間がかかります!!

しかも、王宮からの連絡も、我が公爵家からの連絡も何も届いておりません」


ハッシュレイ湖の周囲はまだ開発されておらず、唯一馬車が揺れることなく通れるのがこの道だった。

ローゼン公爵たちが離宮を構想していた場所は、湖の中にあり、そこへの橋が落ちると、馬車での移動が不可能となるのだ。


「食料などは事前には運んでありますし、量も十分ありますので、しばらくは大丈夫です。ですが、馬車が通れるようにするには反対側の道を通らねばなりません。

その先の整備がまだできておりませんので、騎乗でなければ難しいかと・・・」

「そんな!馬に乗るなどできないわ!」

「騎乗だとどれくらいで戻れるのだ?」

「かなり迂回することになりますので、1カ月はかかるかと・・・」

「くそっ、なんで今橋が落ちたんだ?誰の仕業だ?」

「いえ、確認した騎士の話では、白アリが巣くっていたとの報告もありますので、劣化による落橋だと思われます」


ハッシュレイ湖の橋が老朽化しており、白アリの巣窟になっていることは王宮に報告されている。

だが、開発の目途もたっていない場所では、ローゼン公爵たちの目に触れることのない情報だったのだ。

ロイドたちはそこを突く形で、ローゼン公爵と側妃マリアベルを閉じ込めることに成功したのだった。


もちろん、公爵たちから見えない場所には新たな橋がかけてあり、衣食住に困らせることはない。

ただ、情報が入らず、王家への横やりもできないだけなのだ。


ロイドたち監察部隊はすべての準備をしてから王と王妃の仲違いを演出してもらったのだった。




仕事が忙しく、更新が遅くなるかもしれません。

なるべく頑張ります。


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