5 側近
「さて、次にですが、女性用のドレスと靴、これは今どこにありますか?」
「え?」
「第2王子殿下の配下には女性は侍女のみです。ダンス講師と講師とマナー講師の女性がいらっしゃいましたが、お二人に確認をしましたが、どちらも受け取っていないと言われております」
「・・・」
サミュエルを始めとした側近候補達は俯いて何も答えない。
「領収書から判明した店に確認をとった」
「「「え?」」」
「若い令嬢向けのドレスと靴だった」
「「「「・・・」」」
「で?誰から誰への贈り物なんだ?」
追及の結果、側近候補達、護衛候補達がそれぞれ気に入った女性に贈ったらしい。
婚約者でもない女性に贈り物・・・しかも王子の予算から・・・
「横領ですね」
「なっ!!」
「そんな大げさな・・」
「ちゃんと弁償しますし・・・」
サミュエル達の態度に、ロイドたちは冷たい目を向ける。
「弁償など、当たり前です」
「うう・・・」
「本来であれば横領罪として処分するべき事態ですよ、お分かりか?」
「申し訳なかった」
「贈り物以外にも、私的に王子予算を流用していますよね?」
「そんなことは!」
否定するサミュエル達に、ロイドは1枚の書類を出した。
「大量の酒の購入、これも私的流用ですね。第2王子殿下はまだ未成年ですよ?」
「いや、それは・・・」
「それは、ギルバート殿下から我々への慰労としてくださったものです!」
口ごもるサミュエルとは対照的に、自信満々に答えたのは、ポール=カントレー伯爵令息だ。
「慰労?だと?」
思ってもいない返答にロイドたちは顔を見合わせてしまう。
「ギルバート殿下はお優しい心をお持ちだからな、我々側近候補達に対して感謝の気持ちとして下賜くださったのだ」
ポールの発言に、他の側近候補達も続けて発言していく。
自分たちはギルバート殿下の為に一生懸命働いているのだから、
ギルバート殿下の為にどれだけ心を砕いているのだから、
優しいギルバート殿下のお気持ちを踏みにじるのは僭越ではないか?等々・・・。
「黙れ」
険しい顔でロイドが発した声は、何故か全員の口を閉じさせた。
「慰労だと?お前たちは何を言っているのだ。
殿下に対して側近となる者は、殿下のお気持ちを汲み取り、殿下の為に働くのは当たり前の事だ。
お互いに健闘を称えることがあっても、決して主から感謝をもらって当たり前、などと考えることはない。
にもかかわらず、第2王子殿下自らがお前たち側近候補に感謝をして酒を用意させたなどと、王族を貶めるようなことを言うな、しかも殿下はまだ未成年だ、恥を知れ」
その後、すっかり意気消沈したサミュエル達は、酒などの嗜好品の購入費も弁償することとなった。
まだまだ監察は続く。
側近候補達は引き続き王宮で軟禁生活を送ることになっている。
護衛候補達は騎士団の宿舎で鍛錬をさせられている。
従者たちは、王宮の下働きからのやり直しを命じられた。
表立って私的流用はしていないが、おこぼれにあずかり、たまに自分たちの分の嗜好品などを上乗せして注文していたことが発覚し、降格処分とされたのだ。
「最悪だな」
「ええ、誰も止めなかったとは・・・」
「やはり、側近候補達はすげ替えだな」
「そうですね」
「ロイド様、護衛候補達はどうしますか?」
「その判断は騎士団長に一任した」
その頃の騎士団では、王国騎士団長と、各騎士団長(第1から第5騎士団の長)、それぞれの副団長が集まっていた。
「ロイド殿より話は聞いた、ひどい話だな」
「ええ」
「第2騎士団所属だったな、どういう選抜をしたらあのような者どもになるのだ」
問われた第2騎士団長は立ち上がると、申し訳ありません と頭をさげた。
「ローゼン公爵か?」
「はい、ローゼン公爵からの推薦です。初めはお断りしたのですが、その、側妃様も一緒にいらっしゃって、ギルバート殿下の周囲は自分の配下の子息たちで固めたいと言われました。
腕が立つだけの身分の低いものや平民は信用できないから、と」
騎士団長ははーっとため息をはいた。
「相談してくれればよかったのだ」
「申し訳ありません、ですが、家族を大事に、などと言われてしまい・・・」
「脅されたと?」
「直接的ではありませんでしたが、そのように聞こえました」
「やれやれ、いつものやり口か」
「・・・」
「まあいい、護衛候補どもの実力テストまでは、どこにも所属はさせん。
何かあれば、ワシに直接もって来るように」
団長の言葉に各団の団長は安堵の表情をもらした。
その頃、第2王子ギルバートは、見慣れぬ使用人に囲まれ、落ち着かない中、ひたすら勉強をさせられていた。
今までは、少し勉強すれば、サミュエル達が優秀だと褒め、剣の稽古をすれば、ユークス達が筋が良いと褒めちぎる、そんなぬるい環境だった。
だが、監察が始まってからは、学院に行くまでにやるべき勉強を総ざらいさせられている。
そのうえ、王子教育も再勉強となり、甘やかされていた分、不満がたまっていた。
「母上とおじい様はいつ戻るんだ?」
「存じ上げません」
「では、現状を記した手紙を送る」
「監察中は外部に連絡を取ることはできません」
「勉強は学院に入ってからやる」
「学院に入る前にやるべきことが終わっていません」
何を言っても否定され、誰も優しくしてくれない、ギルバートはあることを思いつき、計画を立てた。




