第十七話 イネッセ奪還へ
遅くなり、申し訳ございませんでした。
「……おと――陛下を説得することはできましたが、肝心の探し方はきめていませんでしたね。」
アマイラが、そう言いながらアンティーク調のテーブルに地図を広げる。
「…。……わたしたちがいるのは、ここ、王都ダヴァ。」
私は、地図の中央に、赤いピンを突き立てる。
それにしても、イネッセを拐かしたのは、どこの誰なんだか。
………見つけたらただじゃおかない…。
「マーヴィリー様……。」
っと、殺気が漏れてたっぽいね。
アマイラとか、私付きじゃない侍女さんが震えちゃってるね。
ごめんなさい。
だけど、さすが、私の侍女。震えてないね。
まぁ、そこはいいとして。
「……それにしても、南都セーヴィンか。
厄介な場所に向かってくれたね。」
思わず、そうこぼす。
それに、アマイラが反応して、考え込む。
「南都セーヴィンには誰もいなかったはずですが……。
っあ。」
そう、今しがたアマイラが気づいたとおり、南都セーヴィンを治めるのは、セーヴィン公爵家。
第二王妃、フォレスト・レージンの実家。
つまり、レージン王妃の息子、第二王子ストライフ、第三王子ディガスティンの母方の実家である。
第三王子ディガスティンはいいのだが、第二王子ストライフは王位継承争いの派閥の一つ。
王位継承争いでセーヴィンは、一足早かった第二王子ストライフの支持基盤である。
余談だが、南都セーヴィンは先述したとおり、第二王子ストライフが。
東都ウィープロセプァは、第一王女ノーレッジが。
西都アスクは第三王子イヴォデヴァが。
そして、私達は北都エンダーを持っていったようなものだ。
本来なら、私達を除く三人の誰かが支持基盤として確保し、王位継承争いを制するところだったのだが……。
見かけだけなら私達の支持基盤のように見えるからね。
「ストライフ兄様の……。
ひとまず、南都に行ってみるほうが先決でしょうか。
イネッセは珍しい銀の髪と、宝石を閉じ込めたような七色の瞳を持っていますし、そうそう売れるところはないでしょう。」
しかも、まだ10歳だし。
一部の変態にしかウケないでしょう。
……となると、オークションか。
「………具体的にはどうするの? アマイラ。」
「具体的には、ね。
まず、商家の娘として南都に入り込んで、他の商家と繋がり、奴隷に興味があることを示す。
それが第一段階。」
アマイラの言葉を、アマイラの侍女さんが引き継ぐ。
私の殺気を浴びて、私にも恭しく接し始めたね。
ほんと、我ながら情けないもんだ。
「第二段階として、オークションへの参加権を得て、オークションへの参加を決める。」
私の侍女、ザードが最後に引き継ぐ。
「そして、最終段階は、奴隷の取引をしている商人とつながって、情報を抜き取り次第、イネッセ様の救出に動くそうです!」
……いいわね。
まぁ、私はのんびりと根回ししながら見守って―――
「頑張りましょうね、姉さま!
イネッセのためですもの!」
―――え……私も行くの……?
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