プロローグ
新連載です!
―――とある世界の、とある星。
その、とある場所でのこと。
その場所は白い石でできており、たくさんの者が慌ただしく動いていた。
そこに、幼さが残る声が響く。
「いい加減起きてください!!」
おそらく十数歳であろうその少女は、自身のオレンジ色の髪を振り乱して、寝台の上の女性を起こそうとしていた。
「…んぅ………わたしがめんどくさいから……きゃっか……。」
固く目をつぶっていたその女性は、薄く目を開けたかと思うと、そう言った。
このやり取りは数刻前から繰り返されており、その一角を通る人々から少女は同情的な視線を向けられていた。
少女はもう涙目になりながら訴える。
「ガーバナー様が今日神託をするなどと言ったからではありませんか!
いい加減起きてください、支度が遅れてしまいます!
ちゃんとした姿を見せねば民に侮られてしまいますよ!
貴方様はこのフォレスト王国第二王女、マーヴリー・フォレスト殿下にしてこの世界唯一の神、オースティング・ガーバナー様なのですから!」
その長い言葉を少女が言い終わったか、と思うと、先程まで寝台で眠っていた女性がガバリと身を起こし、少女を見据えた。
「それを迂闊に言うなと……先日も言ったはず…。
それに……今の私の名は、マーヴィリー・フォレスト。
仮にも城のメイドであるあなたが……王族の名前を間違えないで。」
女性――マーヴィリーがそう言って少女を威圧する。
「す、すいません、マーヴィリー殿下。」
すぐに謝罪をするその少女に、マーヴィリーは不満げだった顔を少しほころばせる。
「……うん。素直なのはいいこと。……それはあなたの利点。
支度、お願いできるかしら。ザード。」
主に褒められたのが嬉しいのか、目を輝かせて、「アレンジを呼んできます!!」と駆け出すザード。
「……ふぁ……。」
その姿を見て、マーヴィリーは小さなあくびを一つ漏らしたのだった。