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プレデター

 

「ちょ! ちょちょちょちょちょ!!!!!!!」


 焦りと興奮で言葉に出来ない。ちなみに焦りが5%だとしたら興奮は95%である。


 彼女の衣服は一瞬で剥ぎ取られ、その下から滑らかで艶やかな、女の身体が姿を現した。目の前で二つの膨らみが服と共に引っ張られ、重力ですとんと落ちる。なるほど。これが宇宙か。

 薄灯に照らされ輝く彼女は何にもまして幻想的で艶かしい。

 なんて悠長に見惚れている場合じゃねえ!

 ルナは慈しむような笑顔で俺を見つめ、


「さあ、一緒に美味しい親子丼を作りましょう」


 どういう意味!?


「や、やめろ! ルナ! これ以上やったら本気で怒るぞ!」

「まあ、素晴らしです! 後でたっぷり私の身体にお仕置きしてください!」


 もう駄目だこいつ!!!

 ルナが上体をぐぐいっと倒し、唇が触れそうになったその時である。突然クローゼットがバーン、と開いた。


「こら! こんな時に何をしている!」



 最初は何が出てきたのか暗くて分からなかった。いや、分かりたくなかったのだ。

 勢い良く飛び出してきたのは、ほぼ裸のおっさん……例のレモンを付けたおっさんこと伊達さんだった。

 薄明に照らされ、おっさんの汚い身体がシルエットで浮かび上がり、レモンがテラテラと光っている。高熱の時に見る悪夢を体現したような男だ。


 伊達さんはルナを睨みつけ、言った。


「お前! どうしてこんなところにいるんだ!」


 こっちのセリフだよ!!


「貴様こそどうしてここにいるのだ!」


 俺は押し倒された状態でどうにか声を出した。


「今そんなことはどうでもいいだろ!」

「どうでも良いわけあるか! 今すぐ侵入経路を吐け!」


 百歩譲ってルナが勝手に入ってくるのは良いとしても、テメーは駄目だ。


「リーザ先生の部屋のクローゼットとこの部屋のクローゼットは繋がっている」

「どういうこと!?」

「全ては繋がっている」

「黙れ!」


 そんな汚いトンネルが開通したとあってはオチオチ安眠することも出来ない。溶岩を流し込んででも封鎖しなければ。

 と思っていると、吐息が急に近づいた。暖かさと湿り気が顔に当たる。

 間近にルナの顔がある。


「さあ、クラウス様……今こそ一つに」

「今こそってこの状況でか!?」

「はい」

「はいじゃないわ!」


 こいつはこいつで目標を仕留めるまで止まらない捕食者プレデターのような思考をしている。

 不意に扉が開いた。まだ誰か来るのか。もう満員御礼なので勘弁して欲しい。


「おーい、クラウス。いるかー? 紅花の事なんだけどよお」


 顔を覗かせたのはニックだった。実は俺とニックの部屋はかなり近く、割と頻繁に行き来をしているのだ。

 にしても、こんな時に来るとは、この男は本当に、間が良いのか悪いのか……。


 目を擦りながら眠そうにしていたニックが急に背筋を正した。異変を察したらしい。

 まあ男の部屋に裸の女と裸のおっさんがいるんだから当たり前である。


「楽しそうなことしてんなあ」

「楽しいわけあるか!」

「じゃあ何してんだよ」

「こ、これは、その……」


 返答に詰まっていると、伊達さんが俺の言葉を継いだ。


「部外者は出ていってくれ」


 お前が一番部外者だろうが!!!


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