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ここに咲く花を、いつかまた。


 脱いでいた服を着直しながら様子をうかがう。

「・・・・・・」

 おれの体の状態を調べてもらっている途中から黙ってしまってからというもの終始無言の膠着状態が続いている。

(むぅ・・・気まずい・・・)


 王国が誇る歴代最高とまで言われる魔女からの、いわゆる余命宣告。

予想はしていた内容だったので驚きはしなかったが・・・まあ、ショックではあるよな。

「死ぬんだろうな。」というボンヤリした実感が明確に「事実」として確定した。


 途中で叩いた軽口もあながち冗談では無かったのだが期待はしていなかった。そんなに簡単に覆る現実ならば、むしろここまで落ち着いていられなかっただろうと自分で思う。


 何か打開策があるなら是が非でも何とかしようとも思えるのだが・・・


――全てを懸ける

 女はそう言っていた。賭けるのでは無く”懸ける”のだと。

 ようするに、おれがこの世界にケンカを売るためにはおれの持ちうる文字通りの『全て』を使わなければいけないのだと予感した。


 よくよく考えれば当たり前だ。おれはいたって普通の一般人。そんなおれが天賦の才とたゆまぬ努力を続けてきた『死神』や『魔女』や『災害』と、人を超えた存在にまで形容されるような連中にも成し得ぬことを望んだのだ。


 本来なら、おれの全て一つ程度では頭金にもなりはしないんじゃないだろうか。

 

  『聖剣』を使った時にその予感は実感に成った。

 あの時、壊れてしまった何か。目には見えないもので、傷跡が残るようなものでも無いがそれでも、おれがおれで在るためには必要不可欠な――何か。


 そんな何かがひび割れた。それでも――


「・・・とりあえず。」

「ん?」

「できる限り、無理は控えなさい。あと、少しでも長生きしたいなら・・・その剣は使わないこと。いいわね?」

「それは承諾しかねるなあ。ダメって言われたらやりたくなるだろ?ほら、学校の火災報知機とか押したくなるタイプなんだよ、おれって。」

「後半の意味は分からないけど。ま、最終的にはあんたの一存で決まっちゃうんだから、何ともならないんだろうけど。」


「それと、今後はあたしの屋敷に来なさい。その方が何かあった時にあたしが動きやすいから。」

「なになに?急に優しいな?おれの裸見て意識しちゃった感じ???」

「今度つまんないこと言ったら本当にぶっ飛ばすからね?・・・大したことはできないけど、何もしないよりはいいでしょ。それに、招待するって前に言ったでしょ?」

 意外と律儀で世話焼き。ほんと意外。言ったらぶっ飛ばされそうだけど。


「了解。けど、それもうちょっとだけ待てねえか?2.3日でいいからさ。」

「なんでよ?別にそこまでこの街に思い入れとかは無いでしょ?」

「そうなんだけどさ・・・ちょっと行きたいところがあって。」

「ふ~ん。要するに、またあの子がらみね?」


 ジトっとした目でおれを見た後なんとなく察してくれたようだ。どうしても、この街を出る前にシルヴィアに見せたいものがあった。おれがもう一度見たい、というのもあるのだが。

 一度目はいろいろとモヤモヤしていたので今ならもっとキレイな気がするのだ。


「はぁ。はいはい、分かったわよ。なにをそこまであの子にこだわってんだか・・・」

「お?もしかしてヤキモ――」

「なんか言った??」


 満面の笑みの彼女を見て手で口を押え首を振る。 


 彼女なりにおれの覚悟を重く受け取ってくれているのか大したお小言も無く会話は途切れる。

「3日後に荷車を寄こすわ。あの子たちも一緒に来たいなら好きになさい・・・忠告はしたからね?なに言っても聞かなさそうだけど。」

「人の話聞け。ってよく言われてた。」

 へらへら笑うおれを見た彼女は振り返り部屋の外へ向けて歩き出す。


「――ありがとな。なんだかんだで優しいんだな、オリヴィエは。」

「うっさい。知ってて何も言わないのは公平じゃないでしょ?それに・・・あんたの”覚悟”には敬意を表するわ。せいぜいがんばなさいな、タイヨウ。」

 たった数日でここまで評価が爆上がりとは・・・聖剣侮りがたし。


 というか、素直に驚いた。まさか若干ながらコイツに褒められるとは。そしてついに石ころ卒業か??

「なにニヤケてんのよ、ムカつくわね・・・それじゃあね。」

 軽く手を振って今度こそ部屋を出ていくオリヴィエ。


「また今度。・・・が、あるか分かんねえしな。」

 腹は決まったしブレることは無い。と、思う。でも、怖いものは怖い。


 明日が来るか分からない。意味合いは少し違うかもしれないが、明日を望まぬことがこんなにも怖いものだとは知らなかった。


「それでも、おれは明日の約束しに部屋を出るのであった。」

 ひとり呟きシルヴィアの元へと向かうためベッドから起き上がった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「タイヨウおはようございます?・・・ひどい顔ですよ?ちゃんと寝ました?」

「やっぱり寝不足ってわかる?」

 




「シ~ルヴィ~アちゃん。あ~そび~ましょ~。」

「どうしたの??全然いいけどなにするの?鬼ごっこ?かくれんぼ?」

「おれは幼稚園児か!」


 オリヴィエが去った後すぐにシルヴィアの部屋を訪れたおれは約束通りデートをしようとシルヴィアを誘いに来た。照れ隠しに何とも子供っぽい誘い方しか浮かばなかった自分が情けないが。

「それはそれで楽しそうっちゃ楽しそうだけどな・・・そうじゃなくて。」

「じゃあどうなの?」

「言ってたデートをしましょう!」


 ポンッと手を叩くとようやく事態を理解したシルヴィア。

「あ!言ってた『親密な男女の密な行楽』ってやつだ!」

「そうそう。いきなりそんな密なことはしねえけどな。おれってば――真摯な紳士だし?」


「でも今からじゃ晩ごはんに間に合わないよ?」

 ついに「なに言ってるかわかんない。」とまで言ってもらえなくなったか。

 いや、ここは否定することが無かったと捉えよう。何事も、ポジティブに行こう。


「さすがに今からは行かねえよ・・・で、急なんだけど明日って空いてる?」

「残念ながらわたしはいっつも暇なのです!どこに行くの??」

「それはちょっと目星がついててさ。ま、見てからのお楽しみって事でさ!」


「わかった!楽しみにしてるね?」

 嬉しそうに笑ってくれた彼女を見て少しホッとする。もし断られようものならば間違いなくメンタルブレイクしていたところだ。

「任しとけ!じゃ、明日の朝に中庭集合で。」

「はーい!でも、寝坊しないでね?」


「はっはっは!寝坊なんて生まれてこの方した事無い!」

 何とも言えない目で見られたがいいだろう。こんなに気合が入っていて寝坊など仕様はずも無い――



「そしてまさか・・・寝れねえとはな。」

 遠足前は寝れないタイプだったのかおれは。

 色々と考えているうちに気づけば日は昇りこうして久々の朝の鍛錬に顔を出したのである。

「楽しみで寝れないって・・・」

「わかってる。なにも言うな弟よ。」


 手でボルクスの一言を制止し溜め息をつく。聖剣をぶっ放すよりも好きな子のデートの方が100倍緊張するとは予定外だった。


「そろそろ準備した方がいいんじゃないですか?汗だくのままではマズいでしょう?」

「それもそうか。じゃ、また後でな!」

「はい。楽しんでくださいね。」


 呆れ顔だったボルクスに見送られ身支度を整えた後、中庭のベンチに腰掛けタバコをふかしながらシルヴィアを待つ。


「おはようタイヨウ!ごめんね。待たせちゃった?」

「いんや?久しぶりにボルクスと鍛錬してたから朝早かっただけで――」

 振り向き彼女に目を奪われた。


 普段はとても薄い紫のワンピースのようなものを着用しているだけなのだが今日はどういう風の吹きまわしか、なんというか――明らかにおめかししている。

 髪の毛もキレイにセットされポニ―テールのように後ろでまとめられており若干ながら化粧もしているようだ。


 主観だが、好みドストライクだ。


「えっと・・・変かな?」

「いや・・・すっげえ似合ってる・・・」


 伏し目がちに自信なさげな表情で感想を求めるシルヴィアに言葉が詰まる。

 いつもの軽口くらい言葉が出てくればよかったのだが、視覚からの衝撃に全く持って頭が働かない。


「よかった、、!!ほら!じゃあ行こう?」

「お、おう。」


 貧困な誉め言葉だったがとりあえずお気に召していただけたようで表情が晴れやかになりその様子にまた胸を打たれた。


 先が思いやられるな・・・この先、この胸キュンの嵐に果たしておれは抗うことができるのだろうか?


 街を歩き回りご飯を食べ、お土産屋的なところで変な置物に笑い、おれの世界で言う手品ショウのようなものに驚き、お化け屋敷のようなものに怖がり・・・

 一喜一憂しながらも楽しそうなシルヴィアとともに歩く何気ないただのデート。


 筆舌に尽くしがたい、本当に夢のような時間だった。おれの欲しかった、普通の女の子の日常だった。


「はぁ~~~!楽しいね!」

「そう言ってもらえて何よりでござい。どう?疲れてないか?」

「全然平気!まだまだ遊べるけどもうすぐ日が暮れてきちゃうね?」

 残念そうにしてくれたことがとても嬉しかった。


 そして言葉とは裏腹に大きなあくびをするシルヴィア。

「な~んかめっちゃ眠そうだけど?」

「あ!違うの!今日ちょっと早起きしすぎちゃって・・・ごめんね?」

 そういった彼女を見てつい笑ってしまった。

 

 遠足前の子供が、ここにももう一人いたようだ。


「もう!なんでそんなに笑うの??」

「いや、遠足は万国共通なんだなとおもってさ。」

「??」


 さて、時間的にはそろそろいい頃だろう。本命に向かわなければ。

「もう一か所だけ行きたいところあるんだけど大丈夫?」

「うん!それってタイヨウが見せたいって言ってくれてた場所?」

「そういうこと。じゃ、パパっと行こっか。」


 二人で街を少し離れ森の中を歩く。

「こんな所に何かあるの?」

「それがあるのよ。おれが見つけたわけじゃ無いけど・・・はい、到着。」


 日が傾き世界が茜色に染まる頃。そよぐ風に揺れる一面の花々。

 そう。フェルーの街のはずれにある『死神』秘蔵の花畑。おれがヴァルトからプロポーズを受けた場所だ。


「どうよ?」

「すっごい・・・きれい・・・」


 花畑に見惚れるように景色を眺めるシルヴィア。

「ちょっとだけ座って休憩したら今日は帰ろうか。」

「うん!」

 頷き腰を下ろそうとするシルヴィア。


「おっと。ちょい待ち。今日のおれは一味違うぜ。」

「へ?」


 その腰を下ろそうとする地点にハンカチを敷き座るように促す。

 できる男のモテモーションだ。なにで見たかは忘れたが、完璧だ。


「そ、そこまでしなくていいよ!」

「まぁまぁ。せっかくのキレイな服が汚れたらもったいねえだろ?」

 さり気の誉め言葉まで完璧。順調だ。


「あ、ありがとう。じゃあ座るね?」

「どうぞ。」

 自分のしていることがあまりにもキザっぽく恥ずかしくなってきたが顔に出さないように踏んばる。油断すると赤面しそうだ。


 そこからはただ二人で目の前の景色を眺める。正確にはおれの場合景色を眺めているシルヴィアを眺めている訳だが。


 夕日に照らされながら微笑む彼女の横顔に、またも見惚れてしまう。

――おれの守りたかったものは、ちゃんと。ここにある。

 そんな当たり前の事実を今日1日で何度も何度も噛み締めた。落としてしまう事の無いように、他の全てを忘れる勢いで刻み付けた。


 残りの目標は・・・

 彼女の視界の外。地面のすぐ近くでシルヴィアの手を握ろうと意を決し、そして挫けては引っ込めを繰り返すおれの右手。

 さっきから数分間ずっとこの20センチを行ったり来たりしている。


(我ながらヘタレめ!手ぐらい握らねえでどうすんだ、、、!)

 一人葛藤しながら表情はいたって平静。

「・・・タイヨウ?」

「ひゃいっ!」

 突然の呼びかけに驚き変な声がでてしまった・・・


「ど、どうしたの??すっごく変な声がでてたけど?」

「な、なんでも無いよ?それより、どうした?」


 おれ以上に驚いた表情のシルヴィアの方へ顔を向ける。表情こそある程度戻ったが心臓は相変わらずバクバクしている。


「うん。今日はね・・・タイヨウにちゃんとお話しないとって思ったの。」

「話?」

「そう。前にタイヨウが言ってくれたこと。」

 夕日のせいか、少し赤らんで見えるシルヴィアを見つめながら自分の言ったこととやらを考える。


(はて??なんか言ったかな?)

「あ~~。その顔は絶対わかってない顔だ~。」

 シルヴィアは考え込むおれを見てちょっと不機嫌そうに頬を膨らませる。


「ご、ごめん・・・どの話でしょうか?」

「もう!・・・タイヨウ言ってくれたじゃない?わたしのこと「好き」だって・・・」


 今日は予想外の連続だ。まさかその話題を彼女の方から振ってくるとは思わなかった。


 前を向き直したシルヴィアは少し懐かしむような目をして話始めた。

「あの時ね、本当にすっごく嬉しかったの。わたしも、タイヨウの事は大好きだよ?こうやって一緒に居たいと思うし、お話しするのはすっごく楽しいし!」


「でもね。最近分かったんだ。多分、わたしの「好き」とタイヨウの「好き」は違うんだなって。」


 彼女の恋愛観はなんのきっかけか、ほんの少し進歩したみたいだった。まだ、LOVEとLIKEが違うと言うことに気づいた段階だが。だが、これはひょっとして、、、?


「タイヨウは本当にいろんなことを教えてくれたね。皆で笑うとこんなにも楽しんだって。皆で食べるご飯はこんなにもおいしいんだって。「また明日」がこんなにも、楽しみなんだって。」


 そこまで言った彼女は行き場を失っていたおれの右手を、そっと自分の左手で握った。

 あまりに突然の出来事に脳の処理速度が追い付かずオーバーヒート寸前だ。まじめな話の途中でなければ間違いなく奇声を上げはしゃぎまわっていただろう。


「こうやって手を握るとちょっと恥ずかしくて――すっごく温かいんだって。」

 こちらを向いた彼女の顔は少し赤らんでいるように見えた。今度は、夕日のせいじゃないのだろう。


「わたしにはまだ、タイヨウの言う「好き」は正直わかんないの・・・でもね、タイヨウと一緒に居たいってそう思っちゃうの。タイヨウの言ってくれたことにちゃんと返事もできて無いのにワガママだってわかってるの・・・それでも――」


「・・・それでも、一緒にいてくれるか?」

 真っ直ぐ彼女の目を見つめて、そう問い返した。


 全く。なんて男殺しだ。多分女性受けはめちゃくちゃ悪いぞ・・・

 でも、こんな状況でそんな顔されて断れる男なんていないと断言できる。男は何歳になっても、バカなのだ。


「別におれはシルヴィアに「好き」になって欲しいから一緒に居るわけじゃ無いんだぜ?ただおれが隣に居させてほしいから、勝手に居るだけだ。」


 ちなみにだが心臓は相変わらず激早で高鳴っている。勢いで爆発しそうなくらいには早い。


「本当に、優しいね。タイヨウは。」

「知ってるよ。だっておれは真摯な紳士だからさ?」

 冗談めかして笑うおれを見て一緒に笑ってくれるシルヴィア。


 この先もこうして二人で何度も何度も笑っていたい。何度も何度も話をして。あと何回かはケンカもするかもしれない。そしておれは――何度でも君に恋をする。


 これからの未来で、おれは大事な”何か”を少しずつ落としていくのだろう。それが理由なのか、思い出なのか、はたまたもっと別の何かなのか。今のおれには見当もつかない。


 それでも、今この瞬間のこの想いは。それだけは最後まで持っていられると思う。


「じゃあ、そんな紳士さんにもう一つお願いがあります。」

「はい。なんでしょうか?」


 返答したところでシルヴィアはなぜか押し黙る。今更おれが君のお願いを断る訳なんて無いのに何を気にしているのか?


「どうしたん?」

「その・・・すっごくワガママなお願いなんだけど、いい?」

 もはや夕日のせいにはできないほどに真っ赤に染まる彼女の顔。


「ま、まさか・・・そんな密なお願いはまだ早いっていうか、、、!いや、決して嫌なわけじゃ無いけどっ、、!」

「ごめんね?なに言ってるかちょっとわかんない。」


 突然スンっ。となったシルヴィアの表情に少し怖さを覚えた。

「茶化してごめんなさい・・・」

「しょうがないなぁ。じゃあ、改めて。」

 彼女は空いていた自分の右手もおれの手に重ねしっかりと両手でおれの手を握った。


「わたしもね、いつか誰かを「好きだ」って思いたい。でね――もし、そう言える日が来るのならその誰かはタイヨウがいい。だから・・・」


 茹蛸くらい赤くなった彼女は一瞬溜めた後

「だから!タイヨウが嫌じゃなかったら、わたしに「好き」を教えて欲しいの!」


 ちなみにおれはこの時には3倍速いモビルスーツくらい赤いのだろう。まさに「真っ赤な太陽」だ。


「ふっ・・・あっはっはっは!」

「そ、そんなに笑わなくてもいいと思うなぁ!」

「いや・・・ごめんごめん。まさかそこまで男殺しだとは、、、!――その大役、喜んでお受けしますよ。おれが教えるよ。好きな人と一緒にいるだけで、どれだけ目の前の景色がキレイになるかって。おれが今、どんだけ幸せかってことを。さ。」


 笑う門には福が来る。だとしたらこれから先、おれが笑顔じゃないなんて時は無いんじゃないだろうか?だっておれは今こんなにも、幸福なんだから。


「うん!すっごく。すっごくすっごくすっごーーく!楽しみにしてるね!」

「任しとけ!」

 親指を立てていいね!を披露し気づく。


「そういえば・・・」

「どうしたの?」

「いや、おれからはちゃんと言ってなかったなって。」

「??なにを??」

 

 けれど飾らぬ言葉的なものは結構今までに使った気もするし・・・だからと言って飾り過ぎるのも嫌なんだが。


「あ。まだ使って無いやつあった。」

「何の話してるの?」

 ポン。と手を叩いた後もう一度彼女をまっすぐに見つめて


「シルヴィア?」

「は、はい、、、。」

「I love you.」

 真っ赤な彼女にそう呟いた。


「え??なんていったの??あい、ら?」

「これは宿題です!いつの日か――君がそう思えた時にちゃんと教えるからさ!」

 いつの日か、この言葉の意味がちゃんと伝わったら、な。


「さ!カラスが鳴くから帰ろ帰ろ!」

 立ち上がろうとしたところで手を引かれ少しよろける。

「シルヴィア?」

「その、もう少しだけ・・・このままで帰ろ?」


 今おれが死んだら死因は「キュン死」だな。ハートへの負担が過多すぎる。


「うん。じゃあお言葉に甘えてこのままで。」

 シルヴィアの手を握りなおし歩き出す。


 夕日に照らされ浮かぶ二つの伸びる影。二人で歩を合わせ、同じ道を歩んでいく。


 この道の先に待つ結末は、おれと彼女では違うものになるだろう。


 あの時、この道を選んだことに後悔は無い。たとえ行き着く先が違ってもおれはこうして彼女と歩くことを選んだのだ。


 そしてできることならほんの少しだけ前を歩こう。彼女の(運命)が暗く険しいものであるのなら、おれが踏み均してみせよう。照らしてみせよう。


――おれは『太陽』なのだから。


 そよぐ風には涼しさが混ざり始め、茜色は数舜の間に過行く。

 そんな夏の終わりを感じ始める頃。


 おれの物語は”おれたち”の物語になったのだ。

4章終了です。ありがとうございますm(__)m


ちなみにですが自分のプロット上おそらく次の5章はこの倍くらいの長さになりそうな予感です・・・

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