なに言ってんの?「王国最強」
今回いつもより少し長くなりました。。。
私は、騎士であり王子だった。国を、街を、民を守るためにこの身は在り、それ以外には何もいらないと思い過ごしてきた。
「美しい。」
初めて抱いた感情だった。私も人間だ。咲き誇る花々や真紅に染まる夕暮れ時、緑生い茂る草原。装飾品や美術品などきれいだと思うものは多々ある。
だが、こうも美しく胸を打つものを目にしたのは初めての経験だった。
――その相手は人であった。自分とは違う境遇、生まれ、何もかもが違う人だった。
「っ、、。」
胸が痛む。そこには幼き頃に受けた古傷があるがそれよりももっと深くからくる痛みだ。
(なにを考えているのだ。重要な任務の途中だというのに・・・)
頭ではわかっていても気づけばその人を目で追ってしまっている自分がいる。今まで感じたことのない感情に自分でも何を考えているのか分からない。
だがそこからの数日は人生で感じたことの無い感情の連続だった。
その一挙手一投足に喜び、焦り、・・・愛おしさを感じた。
ただ一緒に居たい。その笑顔を見ていたいなどと思ってしまった。
今目の前で起こる出来事を目にし今更自分の抱いた感情に気づいてしまった。これは「恋」だ。
自分には無縁であり、いつか父に決められた由緒ある家系の誰かと結婚し子供を育むことになるのだろうと。そう思っていた。
地に伏し今にもその命を奪われようとしている。
――守りたい。
自分の立場も地位もすべて投げ捨ててでも助けたい。だがそれは決して許されない行動だ。たった一人を助けたいというわがままの為に国一つを、何千万という人を殺すことになるかもしれない。
「それでも生きていてほしい――愛してるから。」
その言葉を聞いてまた困惑する。自分があの日抱いた誓いはなんだったのか。多くの物を守る力がこの手にはあった。国を守る騎士のしての誓い。
――なら、『僕』自身の誓いは?
気づけば走りだしていた。止まることはできなかった。
たとえ間違っていたとしても、ここで剣を抜けぬ自分がこの先何万もの人のために剣を振るえるとは到底思えない。
・・・いや建前はやめよう。私は君を愛してしまったのだ。ただ君の笑顔を守りたいのだ。自分自身のわがままの為に。
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「たった一人の為に国を、世界を相手取るというのか?」
国王を名乗るじじいは高みから人を見下しながら問いかける。
「彼女の笑顔を守る。そう誓った!その誓いの為なら王国最強だろうが、王国そのものだろうが――神様でも滅ぼしてやらあ、、、!」
自分は呪われていると彼女は泣いていた。
今この状況がその呪いのせいなのかは知らない。彼女の笑顔を奪うのならそれがたとえ世界であっても倒すと決めたのだ。
それがあの日生かされたおれの、たった一つの願いなのだから。
「だが、現実としてそれが叶うと思うのかな?貴君の命一つでは何かを奪う前にわしの誇る3本の剣の前に散る方が早いと思うが。」
戦況は絶望的。王国から選抜された武闘派が100人にウガルなど歯牙にもかけないであろう強さを持つ人外の3騎士。
なにをどうあがいたところで勝ち目がないことはわかる。
「できねえからやらねえとかじゃ無えんだよ。無理も通せば道理になんだ!―――覚えとけクソじじい、、、!」
精いっぱいの強がりを乗せ言葉とともに睨み返す。
「いいっすね~。嫌いじゃないっすよそういうの~」
おれの首に鎌をあてがう褐色の獣人、リザリーはニヤニヤとこちらを見ながら状況を楽しんでいるようだった。
視線だけを動かし周りを確認する。並ぶ100名の騎士達は三騎士への絶対的な信頼なのかこちらを見もせず意に介していない。
「・・・腹立つチビだなぁ、おまえ。お前は真っ先にぶちのめしてやるから覚えとけよ。」
「そりゃいいすね~。最近退屈してたんで楽しみにしてるっすよ♡」
満面の笑みを浮かべ投げキッスまでしてくる。
どこまでも人をなめやがって、、、。だが現状なめてくれている方がありがたい。
ヴァルトはまだ何か悩むような表情のままいまいち集中力を欠いているように見える。
「貴君がこちらに与する気が無いことはよくわかったわい。心苦しいが仕方ないのぉ。間に合うかはわからんが、聖剣には他の所有者を見つけてもらうほかあるまいて。」
そう言うと国王は右手を頭上へ掲げる。おれの首元の鎌が高々と構えられる。
「恐れながら陛下。いくらなんでも早計ではないでしょうか?このような不埒者でも聖剣に選ばれし者。――それにわたくしの主観ではありますがこの者たちが国に害をなすものとは思えません。」
意外な助け舟はオリヴィエからのものだった。こちらに背を向け跪き国王へと進言してくれている。
「騎士オリヴィエ卿よ。すまんがこれは国の存亡をかけた審問である。故に卿一人の主観ごときが裁決に異を唱えることなど許されはしないのだ。」
「ですが・・・」
「くどいぞ!・・・ではタイヨウ・キリュウよ。何か、言い残すことはあるかの?」
まさかの人物が食い下がってがってくれたものの弁論もそこまで。
最後通牒が言い渡される。
――わりいな2人とも。これからは、守ってやれそうもねえなこりゃ。けど・・・
「吠え面かきやがれ。くそジジイが、、、!」
出来る限りの憎たらしい笑みを浮かべる。
おれはここまでだ。この化け物どもを倒し抜け出す策が浮かばない。それでもこの命に代えても、二人だけは。彼女の笑顔だけは死ぬまで守り切って見せるとも。
「動かない方がいいすよ~。ぼく細かいこと苦手なんす。どうせ死ぬなら苦しむのは嫌でしょ?」
褐色の少女は呟き、振り上げた鎌を振り下ろす。
チャンスは一瞬。この場の誰もが今、おれの反撃を予想していない。
振り下ろされる鎌に向けて体を反転させ手錠で受け止める。予想どおり手錠はきれいに寸断された。
「っぐ、、!」
予想を外れたのは想定以上に鎌の切れ味が良すぎたこと。勢いはかけらも衰えず降りてきたため反応が間に合わず少し食らってしまった。
(大した問題じゃねえや。体は動く。どうせここから先は無いなら気にする必要もねえしな――)
話しながら準備をしていた魔力を一気に開放し立ち上がりざまにリザリーに剣を切り上げる。すんでのところで防がれたが剣を受けた彼女を騎士が並ぶ場所まで弾き飛ばし体勢を崩すことには成功した。
「いたたっ、、。やるっすねえ!」
吹き飛ばされた本人は暢気な声を出しているが今は気にしている場合じゃない。
何せ化け物の見本市みたいな場所だ。こんな所で正面切って戦った所でどうにもならないことは重々承知。
二人を押さえている騎士の元へ踏み込む。
「貴様なんのつもりだ!」
「見た分かんねえかよ激バカ野郎が!」
この二人は明らかに他のものに比べて劣っている。不測の事態だったのか構えきる前の騎士を弾き飛ばしシルヴィアたちを抱え上げる。
「タイヨウ、、、!」
「言いたいことはわかってるけど後で聞くから!今は逃げる!」
宮殿の中にあとどれほど人数がいるのかもわからない以上中を走り回るのもリスクが高い。
側面の壁に向かって走り抜け窓から外へと飛び出す。頼むから地上数十mとかいうのはやめてくれよ、、!
「タイヨウ一体どこへ!?」
「あんなバケモンどもと正面戦闘はさすがに無理だろ!とにかくまずは隠れるところが欲しい!」
幸い高さはそれほどな<強化>した体なら二人を抱えたままでも十分着地できる高さ。
「追え!逃がすな!」
「手ぇ出すんじゃねえっすよ!久々に面白くなってきたんすから僕が行くっす!鬼ごっこっすねお兄さん!」
後ろからはリザリーの声が聞こえる。
(なめくさりやがって。どこまでも遊び気分かよ、、!)
どれほどの人数が追いかけてくるのか確認する余裕もなくとにかく全速力で走る。宮廷内には戦闘要員がほぼ残っていないようで前方から追いかけてくる者はいない。
「これならとりあえず外までは逃げ切れる、、!」
外へ出れば街が広がっていた。宮殿内に比べればずいぶんと姿も隠しやすいはずだ。時間の猶予もあまりない、とにかく外へ―――
「はい触ったっす。今度はお兄さんが鬼っすね♡」
突如現れたリザリーに押され倒れこむ。
・・・ありえねえだろ。今の〈強化〉したおれにこんな簡単に追いつけんのか、、。
視線を彼女の後ろにやると目測で30mほど後ろに大きくえぐれた地面があった。・・・まさか、あそこから一歩であのバカでかい鎌を持って踏み込んだのか?
「あれ?もう終わりっすか?今度はお兄さんが僕に触んないといつまでも鬼のまんまっすよ?」
ただ目が合うだけで膝が震えるほどの威圧感を放ちながら、子供のように彼女は遊びの続きを求めてくる。
「・・・ここはなんとか抑え込むから、お前らとにかく走れ。」
「そんな!ここで見捨てて逃げるくらいなら一緒に―――」
「頼むから!・・・行ってくれ、、、!」
おれ自身だってわかっている。まさに死亡フラグだ。おそらくこれは回避しようが無い。
――根性決めろおれ!これ以上、目の前で大切なもの失ってたまるか、、、!
「・・・行こうボルクス。タイヨウはいつもみたいに帰ってくるよ。そうだよね、タイヨウ?」
今にも泣きだしそうな顔で、いつものように彼女は優しく微笑む。
ああ、チクショウ。その顔が見たくないから頑張ってたつもりだったのになあ。
「外で・・・待ってますから。」
「・・・おう!!せっかくだから二人で王都観光でもしといてくれよ!」
努めて笑顔でいいね!をする。
・・・最後の最後で、守れない約束をしてしまったな。
駆けて行ってくれた二人の背中を見守り剣を強く握る。
「襲い掛かってきたりしねえんだな。騎士道ってやつか?」
「これが殺し合いなら普通に切りかかるっすよ。僕は別に騎士の誇りとか持ってないっすからね。けど今は鬼ごっこで鬼はお兄さんでしょ?だから僕から行く意味とかないじゃないっすか?」
さも当然という様に彼女は口にする。要するにおれの決死の覚悟は、こいつからすればただのお遊戯らしい。
「ふざけやがって、、!」
無邪気な笑顔で笑う彼女へ一直線に踏み込み剣を振るう。
「はは、いいっすねお兄さん!ほらほらもうちょいで鬼交代できるっすよ!」
コロコロと楽しそうに笑いながら自分の身の丈よりも大きい鎌でおれの降る剣をこともなげにさばかれる。
「くっそ、、!」
剣を思いきり振り下ろす。がやはり受けられた。そのまま剣を手放し腹部へ思いきり前蹴りを放つ。
「おっと。」
それもバックステップで軽やかに避けられる。やっとほんの少しかすったが何のダメージも与えられない。
そしてそこで時間切れ。もう立つことさえままならない。
「ぜぇぜぇっ、、。」
「いやあ、なめてたっす。まさか触られるとは思ってなかったっすね。・・・でももう終わりみたいすね。」
長い柄に円形の刃が付いた武器。近しいものでは「鎌」しか浮かばなかったが何とも不思議な形の武器だ。円には内にも外にも峰など無く何かを裁断するのにはその重さも相まって、とても合理的な造りだろう。
彼女の言う通り悪あがきもここまで。魔力の切れたおれにはもう立ち上がる力も残っちゃいない。
「まあ、、がんばったほうだろ、、、。」
ほんの少しだが時間も稼げたはずだ。口惜しいがここからはもう運に任せる他無い。
「う~ん、満足げなところ申し訳ないんすけど。」
そう言った彼女が後ろを向くように促してくる。
―ドサッ。
何かが倒れこむような音。そこには逃がせたと思っていた二人が意識を失い地面に転がっていた。
「本気で逃げられると思ってたの?だとしたら、なめ過ぎじゃないかしら?」
心底呆れたというような表情でこちらを見つめるオリヴィエ。
さらには先ほど中にいた100名の騎士達や国王、ヴァルトがリザリーの後ろからやってきた。
都合よく考え過ぎていた。というかそうでもしなければ心が折れそうだった。自分の弱さを思い知らされ、また何もできずに死んでいくのが嫌だった。
冷静に考えればこうなることはわかったはずだろうに。いとも簡単におれに追いついた化け物は3人いるのだ。それで逃げ切れる算段が立つ方がどうかしていた。
「ふっ、、。」
限界だと思っていた体は意外と立ち上がれたようだ。立ち上がれるのなら剣を握らなきゃいけない。戦わなきゃいけない。何の意味も無く、それでいてただの自己満足。
それでも、もう何もできなかったと。何もしなかったくせに後悔するのは嫌だったから・・・だから剣を構える。
「タイヨウ・キリュウよ。貴君は、なぜそこまでして立ち上がる。」
「同じような質問ばっか繰り返しやがって。ボケが来たか?くそジジイ。・・・生きててほしいからに決まってんだろ。その為なら、すべてを懸けて、立ちはだかる全てを切り伏せて見せる。」
手の中の剣が熱い気がした。
「それで誰が救われると思うのだ?国も人も、その一人の為に滅びた世界で――その娘は救われるのかね?」
わからない。救われたおれや、ボルクスは・・・救われたからこそ苦しんでいる。
でも、救う側は身勝手で、そんなことは考えないんだろう。だって――
「・・・さあな。それでも生きててほしい。――彼女を、愛してるから。」
たとえ自分が死んでも、愛した誰かが生きてくれているのなら。少なくとも自分は笑って死ねるんだと思うから。
聖剣がほのかに輝く。輝いたところで使い道は分からないしおれは激的に強くはならない。でも何となく背中を押された気がした。
それでいいと。そう言ってもらえた気がした。
「戯れもここまでじゃな。では―――」
国王の言葉を言い終わるのも待たずリザリーがこちらに踏み込んでくる。
「楽しかったっすよ~。でもこれでサヨナラっす!」
鎌が振り下ろされる。残念ながらこの一撃を避ける体力も無ければ。受け止める膂力も残っちゃいない。
――ごめんな2人とも。
この世界に来て、聖剣を抜いて思い上がっていた。
記憶もなくぼんやりとしたおれが、英雄にでもなれるのかと。ふたを開ければ結局イキがるだけの自己中野郎。笑い話にもなりやしない。
自分に向けた皮肉を込めて笑い、目を閉じる。
空を切るものとは思えないほどの轟音をまといながら雷のような一撃が殺到する。そして・・・
―ガキンっ!!
鉄と鉄がぶつかり大きな音が響き渡った。
目を開いた先にはあれほどの一撃をこともなげに受け止める騎士の背中。ヴァルトの姿があった。
「なんのマネっすか?」
「父上。いえ陛下。私の勝手な行動をお許しください。・・・とは言いません。」
「いや、ヴァルトよお主は――」
「しかし!私はここで剣を抜かなければ、この先騎士として剣を振るうことができません。私はこの身全てをもって守りたいものができてしまったのです。国の為でも無く、民の為でも無い。――自身の為に守りたい笑顔ができたのです!」
ああ、なるほど。こいつはどうやらおれと同じらしい。彼女の笑顔を守るために。自身の立場も考えず剣を抜き、あまつさえ恋敵のおれを助けてくれたのか。
なら、おれが死んでもきっと彼女を守ってくれるはずだ。かなり悔しいが、でもこれで安心できる。
「――わりいな。頼める義理なんかないのはわかってっけど、これからも守ってやってくんねんか?」
意図をくみ取ってくれたのか彼は優しく微笑み。「任せてくれ。この命の限り、必ず。」そう言うと彼はあろうことか自身の主君に、父親に剣を向ける。
「騎士としてあるまじき行為だという事は重々承知の上です。ですが、それでも退くわけにはいかないのです。私の初めてのわがまま――邪魔立てするというのならだれであれ容赦はしません。」
ヴァルトからすさまじい威圧感が醸し出される。その場の全員が圧倒され顔を引きつらせ後ずさる。一人を除いてだが・・・
「・・・へえ。これってあれっすよね、反逆罪っすよね?じゃあ僕が『死神』を殺しちゃっても誰も怒らないっすよね??」
見たことも無いほど楽しそうに、ただただ無邪気に満面の笑みを浮かべたリザリーが自身の鎌を持ち上げ歩き出す。
「待て、待たんか二人とも!」
「一回試してみたかったんすよ~。『死神』を殺すのって、どんな気分かなって。」
国王の制止もなんのその。舌なめずりをしながら彼女は純真無垢で真っ白な殺意をたぎらせる。
「手荒なことはできればしたくなかったが・・・だがリザリー。「死神」に出会ってしまったら生きては帰れないぞ?」
空気が張り詰めていく。寒いのか暑いのか、冷たいのか熱いのかわからない嫌な汗がとめどなくあふれる。
―ジャリっ。
お互いが踏み込もうとその足に力を込める。次の瞬間、二人の化け物が閃光のごとく駆け出す――
「そこまでだ。双方剣を納めよ。」
その衝突を止めたのは賢人会会長のダンディー髭、ヴェーレンだった。
「すまないがそこを退いていただけますか?貴殿が相手では私も手加減などは出来なくなってしまいますが。」
「僕なら手加減できるって事っすか~?カッチんきちゃったっす。はやく退かないと死神の首の横に並ぶことになるっすよ、おじさん。」
「ええい!退くのはお主らじゃ!いい加減にわしの話を聞けい!」
状況は全くつかめないがおれはとりあえず命拾いをした。
止められたヴァルト、リザリーの二人、特にリザリーはかなり不服そうに鎌を下げ、それを見たヴァルトも剣を鞘に納める。
「父上であろうとも私の決意は変わりませんよ。今剣を納めたのは、このまま乱戦になってはタイヨウ達を守ることが少しばかり難しいと思ったからです。話し次第では、何度でもこの剣を披露することになりますが。」
納めはしたものの剣の柄を触り油断はしていないというそぶりを見せる。
「そのまま抜いてくれていいっすよ~。今度こそ、その首落としてやるっす。」
リザリーはまだまだやる気満々の顔でヴァルトを眺めていた。
「・・・陛下、これは陛下にも非があるかと存じますが?」
「う、うむ。反省しておる。すまなかったなタイヨウ・キリュウよ。」
いまだに全く持って理解が追い付かない。なぜおれが謝られているのか?
「いやなに。本来であれば軽く貴君の覚悟を試す程度のつもりだったのじゃが・・・最善で言うのならば我が国の騎士になってもらうのが一番ではあったのじゃが、そうでなくとも『聖剣』を持ってしまった段階でどのような流れになろうともこの『女神』との戦争に巻き込まれることは避けられん。じゃから、お主の覚悟を確認したかったのじゃ・・・」
「・・・じゃあなんだ?止めるのが遅れたせいでまじで死にかけたってこと?」
このクソじじいめ、、、!そんなことの為におれたちは死ぬところだったんだぞ!そもそも、そーゆう役目を本気で鎌を振り回して殺しに来る戦闘中毒者にやらせんじゃねえよ!
「み、みなまで言わずともわかっておる!じゃがこちらとしても、聖剣の持ち主がいざという時に逃げてしまうような者では困るのだ!」
「けど、何回も言ってるけど国の為に戦う気はねえって・・・」
「それも嫌というほど伝わった。じゃがこの国におる限り『原罪の女神』を倒さぬことには貴君の愛する者も救えんぞ?聖典通りならとても貴君が一人で立ち向かえる相手ではない。騎士にならずともよい。我ら「アッシャムス王国」の盟友として戦わんか?」
「敵の敵は味方ってか・・・」
正直、ここまでやられて折れるのは悔しいが残念ながら向こうの言う通りかもしれないとも思った。
仮にその神様やこれから来る災いとやらが本当だとして、あの三騎士以上の強さだとすれば――おれに為す術は何も無い。
「それにの、わしは『聖剣』抜きにしても貴君を失うのは惜しいと思っとる。己が誓いの為に命をも投げ出そうという信念。どんな状況でも諦めぬ心の強さ。そういったものは通常の鍛錬ではなかなか身に着かぬものだ。」
「何より、他人に対した興味も見せなんだ三騎士がこぞって貴君を気にかけておる。その不思議な求心力。わしは貴君が気に入った。どうか友としてこの国に迎えさせてほしいのだがどうじゃ?」
ここまで言われてしまって断る理由はなさそうだ。けれども
「もし、その覚悟とやらが足りねえと思ってた時には、どうしてた?」
これだけはハッキリさせておかないとならない。
今後もしおれがこの国よりも彼女の命を優先させた場合。最悪覚悟を決めておかねばならないかもしれないのだから。
「その時は・・・その時じゃ。」
とても冷たい目で彼はそう言った。
「・・・ならいい。為政者やったらそれくらいのことは考えてくれてねえとな。」
これで最悪の場合の覚悟も決まった。
もう状況をプラスに考えよう。シルヴィアが自身を「呪われている」と言っている原因もその『女神』なのだ。
ならばどの道解決しなければならない問題なのだ。
「では、貴君は我らが盟友となり同じ敵を打倒するために歩くという事で構わんかな?」
「おう。そっちが仲良くしてくれてる間はお友達として仲良くやらしてもうよ。」
おれがそう言うと国王はこちらに歩み寄り
「では改めて、アッシャムス王国28代国王、ファウス・ヴァン・アステルじゃ。よろしくのタイヨウ・キリュウ。」
初めに見た優しい笑顔で握手を求めてくる。
「ご丁寧にどうも。あ、やっぱり言葉使いとかちゃんとした方がいい?」
「はっはっは!よいよい!貴君はそのままの方がよいわ!」
そう言って高らかに笑った。
「はぁ。父上。これはさすがにやり過ぎでは?」
「いやぁ・・・すまんのお!」
急に雰囲気が和やかになり過ぎて少しついていけてないが気は抜けたのは確かだ。そう思ったとたんに一気に力が抜けその場に崩れ落ちる。
「タイヨウ!大丈夫かい!」
ヴァルトが心配そうに顔をのぞかせる。
「ちょっと気が抜けただけ、、。気にすんな。」
手を出し支えてくれようとする彼を制止する。
(あ~やべえ。頭くらくらする、、。)
「ん、、。ここは、、?」
「イタタっ。・・・シルヴィア、無事ですか!?」
「あら。やっと気が付いた?殺しちゃったかと思ったわ。少しやり過ぎたわね」
微塵とも申し訳なさを感じさせずに謝罪の一文を告げられるとは。それにしてもよかった。二人とも無事みたいだ、、。
「、、、!タイヨウ!大丈夫?何があったの!?」
「大丈夫ですか!?」
こちらに気づいた二人が駆けよってくる。
「あ~大丈夫、大丈夫。いつものやつだ、、。」
二人の顔を見ると余計に力が抜け今にも眠ってしまいそうになる。
「さてまずは何より休息じゃな。そういえばヴァルトよ。お主先ほど「守りたい人」と言っておったな。」
「は、はい。このようなこととは知らず大勢の前で恥ずかしいことを申しました。反省しております・・・」
「いやむしろわしは嬉しく思うぞ!お主はあれ以来民を思う事こそあれど、誰かを一人を特別視するという事が無かった。そんなお主が誰かを愛するという人間味を持ったことがわしは素直にうれしい!」
ヴァルトは少し恥ずかしそうに父親を見た後、おれたちの方へと少し視線を向ける。
そう。告白どころか、公開プロポーズだ。なんとも肝が据わっているというか・・・
けど、彼の本気も伝わったのは確かだ。自らの全てを投げ出して彼は剣を抜いたのだから。ならせめて気持ちをちゃんと伝えることくらいはするべきだとも思う。
その上でシルヴィアが彼を選ぶのならそれはしょうがないことだ。諦めるしかないかもしれないな。
「してヴァルトよ。それは誰なのじゃ?まあ大方見当はついておるが・・・」
ニヤニヤしながらファウスもシルヴィアへと視線を向ける。
「父上、お戯れを・・・」
「・・・いいじゃねえの。返事がどうなるかはその人次第だけど。気持ちを伝えるのは自由だと思うし。」
「タイヨウよお主は良いのか?」
「よいも何も止める権利なんか無えだろ?本人次第だし・・・」
正直少し、いやすごく嫌だが命まで救ってもらっているのだ仕方ないだろう。
・・・それに残念ながらおれがシルヴィアと付き合ってるわけでもないんだし・・・
「・・・そうだね。あれだけのことをしてしまったのだから今更気にするのも変な話だった。ありがとうタイヨウ。君には何度も学ばされるよ。」
今までの精悍な笑顔とは全く違う普通の青年のようなはにかんだ笑顔を見せ深呼吸をする。
「すぅー・・・結構緊張するものだね・・・」
礼儀なのかもしれないが、女性の手にいきなりキスをするような奴が何をいまさら・・・
「なになに?なにがはじまるの?」
この場で唯一状況が呑み込めず何とも間の抜けた顔をしているシルヴィア。
おそらく今この空気の意味と矛先が分かっていないのはとうの本人だけだろう。
そこだけは同情するぜ恋敵よ・・・
「よし。待たせてすまない!――覚悟が決まったよ。」
そう言うと彼はおれたちの方へと歩み寄り跪き手を取った。
「出会って数日でこんなことを言うのは、どうかしていると思っている。けれど初めて私は、私のすべてを懸けて誰か一人を守りたいと思った。今すぐにとは言わない。けれどいつの日か私とともにこの国を守るためにともに歩いてくれないか。―――君を愛している、タイヨウ!」
おれの手をしっかりと取り、まっすぐな瞳で彼はそう告げたのだった。
―――いや、おれかよおおおぉぉぉぉ!!




