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悩み多き少年の夢


――ンっ!・・・ブンっ、、!

「んっ・・・」

 朝方。まだ日も昇っていない時間に何かしらの物音で目が覚めた。

なぜか当たり前のように同じ部屋をあてがわれ隣のベッドで眠るシルヴィアがいることは確認し窓の外を除く。

「なんだよ、、こんな時間に・・・」


 部屋からでは音の発生源は見えない。ただ、規則正しく繰り返される音でなんとなく察しはついた。

「・・・目も覚めたことだし、タバコでも吸ってくるかぁ。」


 あくびをかみ殺しながら伸びをし、様子見も兼ねてタバコ片手に部屋を静かに抜け出る。


 風は生暖かく日本で言うのならもうすぐ夏に向かっていこうかといった所だろうか。この世界にも四季があるらしくおれが来た頃よりも幾分暖かくなってきていた。


 そのまま家の周りをぐるっと回った裏手に音の主はいた。

「よお、おはようさん。こんな時間から何してんだ?」

木刀を素振りしていたボルクスに声をかける。


「おはようございますタイヨウ。起こしてしまいましたか?」

「気にしねえでいいよ。どうせ、あの状況では熟睡は出来ねぇ・・・」

「やはり別の部屋の方が良かったですか?」

 言ってはみたもののあの寝顔を見れなくなるのはそれはそれで・・・ん~。と唸るおれを見てボルクスが小さく笑う。


「それは熟考するとして。朝支度にしては早くねえか?」

 近くに腰掛けタバコをふかしながら彼を見る。しっかりと汗がにじんでいるところを見るとおそらく素振りを始めたのもここ10分やそこらの話ではなさそうだ。


「朝の鍛錬を。今のままでは騎士なんて夢のまた夢ですから。」

そう言ったボルクスは素振りを再開する。


「・・・何をそんなに焦ってんだ?」

 長い付き合いになる訳でもなく、出会ってまだ二週間ほどの相手に深くまで突っ込むのもどうかと思っていたがどうしても気になっていたことを尋ねる。


「――騎士は夢ですから。僕も、もう17です。ゆっくり構えてる時間もないかと思いまして・・。」

少し困ったように彼はそう答えた。


「ふ~ん。けど、夢を追いかけてるにしてはずいぶんとつ辛そうに見えるけどな、おれには。」

 もちろん、夢を追いかけて進んでいる人間が誰しも楽しそうな顔をしているとは思ってはいない。


 むしろ苦しいことの方が多いんじゃないだろうか?おれは何か本気で追いかけた記憶がある訳でもないので大それたことを語れるわけではない。それでも、夢を叶えた人間というのは大抵がほかの人間か大切にするだろう「何か」を(ないがし)にしていると思う。


 そうゆう意味では目標に至るまでの道のりは辛く苦しいことの方が多いだろうし苦しそうに見える表情をしていることもあるだろう。けれども―――


「・・・少なくとも、前向きに進んでるやつってのは「夢」を語るときは楽しそうな顔してるもんじゃねえの?けどお前は、先を語るほど・・・追い詰められたような苦しそうな顔だぜ?」

「普段適当なことを言ってるのかと思ったらそうゆうことは鋭いんですね。・・・そうかもしれませんね。これは僕にできる唯一の――贖罪なんです。」

「それは、バーグに対するって事か?お前が奪ってしまったおっちゃんの誇りとやらの?」


 先ほどまで目を合わせなかったボルクスが驚いたような表情でこちらを向く。

「・・・どうしてそれを?」

「バカでも察しくらいはつくだろうよ。逆に気づいてないとでも思ってたのかよ?」


「はあっ・・・。」

小さなため息のあと彼は話し始めた。

「僕はもともと王都の端の方の街に住んでいたんです。父親は物心着いたころには亡くなっていて母と二人、裕福ではありませんでしたが・・・人並に幸せでした。」


 彼をじっと見ながら新しくタバコに火をつけ話を聞く。

「おじさん。・・・バーグさんはそのころ上位騎士で、僕の住んでいた街の警備をしていた騎士隊の隊長でした。この国は戦争ほど大きなものはありませんが、盗賊などとの小さな小競り合いは王都ではしばしば起こることなので何度か戦っている姿も見かけました。」


「強くて、弱きものの前に立ち戦うあの人の姿に子供ながらに憧れました。こんなにもかっこいい背中があるんだなと。あの大きな背中に対して何とも幼稚な感想だとは思いますが本当に素直にそう思いました。」


 なんとなく彼の『騎士』というものへの強いこだわり底が見えた気がした。

――かっこよかったから。

なんとも飾り気がなく子供っぽい理由ではあるが単純で分かりやすい理由だからこそ腑には落ちる。


「お前の騎士への憧れはわかった。けどそれが、なんで贖罪とかいうことになんだ?」


 一瞬空を見上げ、彼は続ける。

「・・・あの日もこんな感じの双満月の夜でした。街に張られた術式は知っていますね?」

「あの獣除けの??」


「はい。実はあれには関所以外からの侵入者を知らせる効果もあります。侵入者がいれば警報が街中に鳴り響くようにできているんです。基本、王都を囲む壁の中には魔獣の出現は本当に稀なので主にこちらの用途で使われいます。」


・・・危うくおれはセ〇ムを鳴らしてしまう所だったわけか。


「あの日は年に一度の術式の修繕で街を覆う術式が切られていました。これは術式に綻びが無いかの確認のため行われますが、実際に行う騎士の方以外その日程は知らされず行われます。万が一その日取りが分かれば盗賊たちからすれば格好の的ですから。」


 「そして、その万が一は起きました。術式の確認に騎士の方が街はずれに出払っておりその間に盗賊が街に押し入りました。それに住人が気づいたのは、街に火が放たれてからでした。」


「大勢が人が目の前で切られ、火にまかれ、殺されました。けれども僕の街に常駐している方々は上位騎士の方たちです。そこら盗賊であれば引けを取るはずもありません。やつらの中には『魔人』がいたんです。」


 『魔人』。聞き慣れない単語が出てきたな。

「話の腰を折って悪いんだけど・・・その『魔人』ってのは?」


「『魔人』とは要するに獣が魔獣になるように人が月にあてられたものです。本来獣と同じように人が当てられた場合は『狂人』といい言葉の通り自我を失い、ただ暴れまわるだけの存在になります。」


「ただその『狂人』になる際、極まれに高い魔力を持つものがあてられると自我を失わずより強力な変貌を遂げます。それが『魔人』です。」


 勝手なイメージだがゾンビみたいな感じかな?と思い浮かべる。確かにゲームとかでも強力なゾンビが出てきたりする。そういう感じか。

「説明ありがと。それで?その魔人ってのはそんなにやばいのか?」


「・・・はい。たった一体しかいなかった魔人を相手に、街の衛兵や騎士併せて100名近くが壊滅に追い込まれ34名が命を落としました。その魔人はなんとかおじさんが討ち取り、その後他の街からの援軍もあり事態は収拾しましたが・・・終わったころには街の人の7割以上が命を落とすという結果でした。」


 あのおっちゃんが追い込まれるほどの相手。おそらくはウガル以上の。

「できることなら会いたくないねえもんだな・・・」

苦笑いを浮かべ彼の方へ向き直る。


「ですが、その際におじさんは僕を庇い負傷し騎士として戦場に立てなくなりました。僕の母も崩れる家から僕を庇い命を落としたのです、、、。」


 目の前で失ったものの重さに足を取られ「前を向いて進む」という大義名分のもと自分が守れなかったと思っているものへの贖罪の為だけに歩を進めている。

 何とも後ろ向きな前進だ。


「・・・やめたらいいんじゃねえの?騎士目指すの。」

「――やめられるわけないでしょう!今更僕にそんな権利なんて無いんですよ。こんな僕の為に命を投げ出してくれた母。弱い僕の為に、自らの栄誉ある将来も培った地位も捨ててくれたおじさん。二人の為に僕ができることなんて―――」


「で?おまえが騎士になったとして。なにか戻ってくんのか?」

 別に、騎士になりたいという彼の夢を否定するつもりは無い。

 むしろおれなんて女の子を口説くために生きていこうとしているのだ。それに比べればとても素晴らしい夢だと思う。でも――


「そんなに後ろ向いたままでは絶対に何にもなれねえよ。進む方向も分かってねえのに、何かにたどり着けるわけ――」


「――うるさいんだよ!!」

 おれの言葉は普段温厚なボルクスからは想像できない声量の怒号に遮られた。


「僕だってわかってるんだよ!こんな事したって母さんが戻ってくるわけじゃない!おじさんがまた戦えるようになれるわけじゃない!けど仕方ないじゃないか、、、!僕が、生き残ってしまったんだから!」


「死んだみんなにだって何かしたいことがあったはずだ。将来を夢見て、まだまだできたことがあった人たちがいたはずだ。なのに、そんな中生き残った僕が好きに生きていいわけないじゃないか、、!」


 息を荒げ涙を流してこちらを睨む彼の目をじっと見返す。後悔、焦燥、自己嫌悪――感情が渦巻くその瞳をじっと見る。


「どうしたんだ、こんな朝早くから?」

後ろからバーグが顔を出す。それを見たボルクスは涙をぬぐいながら走り去ってしまった。


「・・・わりい、おっちゃん。もうちょっと言葉を選ぶべきだった。」

間違ったことを言ったつもりは無いがそれでも配慮が足りなかったと頭を下げる。


「いや・・・本当ならおれが言わなきゃならねえ事だったんだがな。客人に泥被らせちまった。悪かったな。」


「そりゃ、気づいてるよな。あいつの気持ちに。」

「あいつはなあ、背負いこみ過ぎなんだよ。母親のことを気に病むなってのは難しい話だとは思う。なにせ6歳の子が目の前で母親の死を見てんだから。けどよ―――」


 聞かなくても分かる。あいつは自分の母親が死んだこともバーグの傷も、果ては生き残ったことにまで罪悪感を感じている。自分がいなければこんなことにはならなかったのだ。そう言わんばかりに自分を責めていた。


「・・・まあ、割り切れってのも難しい話か。」

 あいつは今進めてすらいない。彼はいまだに事件の晩に泣き続けているのだろう。

――まるで幽霊だな。


「坊主にとっちゃ、騎士になるってことが今唯一・・・かろうじて見えてるもんなんだ。それがあいつの心の底からの願いならおれだって何も言わねえさ。」


「けどあれは違う。夢とか目標とかそんな綺麗なもんじゃねえ。いわば『呪い』だな。その夜に、いろいろなものを落っことしてその中で残ったもの。残ってしまった憧憬。」

 逆に何も見えなくなってしまっている方が幾分楽だったろうに・・・。


「おはよう二人とも。こんな時間に外でどうしたの?」

まだ寝ぼけ眼のシルヴィアがおれたちが外にいることに気づき降りてきた。


「おはようシルヴィア。なんでもねえよ。おっちゃんと二人で大人の男の談笑タイムだ。」

笑いかけるおれに調子を合わせてくれたバーグも続ける。

「シルヴィアちゃんにはまだちっとばかし早いな。」

 二人でおどけて笑う。


「もう!子ども扱いして!さては二人で何か楽しいことしてたのね!」

そう寝ぐせだらけの頭で膨れながら近寄ってくる。


「ごめんごめん。ほら寝ぐせだらけだぞ?着替えたら朝ごはんにしようぜ!あ~腹減った!」

寝ぐせだらけの頭を撫でながら彼女をなだめて中へ向かわせる。


「・・・ボルクスはどうする?探してくるか?」

「いや・・・今は一人にしてやる時間も必要だろ。変なところでまじめだから店が開くころには戻ってくるさ。」


 確かに少し考える時間も必要か。考えたところで何かが変わるようには思えないのが残念だが。バーグの表情からはおれと同じことを考えているんだろうなというのも読み取れた。


「難しいもんなんだな。兄貴ってのも。」

ふと首元のネックレスに視線を落としあの自称姉のことを思い出していた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 バーグの言う通りボルクスは店が開く15分ほど前に戻ってきた。もちろんのこと表情が晴れるわけもなく目も合わせてはくれないが。


「ねえねえ。ボルクスとケンカでもしたの??」

そんな雰囲気を察知しシルヴィアがコソコソと聞いてくる。


「そんなとこかな。・・・あいつも、悩み多き年頃の男の子だからなぁ。思春期ってやつだよ。」

はぁ。小さくため息をつき、どうしたもんかと頭を悩ませる。

「何があったのかわからないけれど、早く仲直りしないとダメだよ?」

心配そうにのぞき込んでくる彼女の顔を見てさらに考え込む。


 おれはこの子がいたおかげで立ち直れた。自分でも単純思考だと思うが、彼女の笑顔に救われた。


 彼女の横で彼女の笑顔を守りたいと思えた。その為ならば前を向いて歩いて行けると感じたのだ。


「・・・今のあいつにはそれがねんだよなぁ。けどこればっかりは・・・おれが教えてやれるもんでもないし。」

「なんのこと?また変なこと考えてるの?」

相変わらずおれを下からのぞき込んでくる彼女の頭をぐしゃぐしゃと撫でながら

「なんでもね~」と会話を流す。

(さて・・・本当にどうしたもんか・・・)




 そのまま何も考えはまとまらず店を閉める時間になりいつもの広場でチビたちと戯れている。

「くらえタイヨウ!」

ぼーっとしているおれにガキ大将のデオンのかん腸が突き刺さった。


「痛っってぇ!!この悪ガキどもめ!!」

「へへーん。ゆだんしてるから悪いんだ!」

「今日という今日は許さねえ!大人の恐ろしさを思い知れ!」

子どもたちを一通り追いかけ回し少し休憩と端の芝生に腰を下ろす。


「タイヨウ、タイヨウ!」

「どうした、リル?」

「見て見て!今つくったの!」

先ほどのガキ大将の妹リルがいつの間にか隣に座り何かを見せてくる。


 シロツメクサのようなものでできた花の冠だった。

「おおー!うまいじゃん!すげえすげえ!」

「えへへ。上手にできたからタイヨウにあげるね!」

頭を撫でてやると嬉しそうに笑いまたほかの子たちの所へ戻っていく。


「あれくらいわかりやすかったら楽なんだけどな・・・」

苦笑いを浮かべながら今日の朝からの悩み事に頭を傾けるが一向にいい案は浮かばない。


 乗り掛かった舟。とはまさに今のような状況を指すのだろう。ここまで聞いてしまって無視というわけにもいかないが・・・


(なんかこう心に響く名言みたいなのがぱっと浮かばねえかなあ・・・)

 そんなことを考えながらごろん。と横になる。


「――ヨウ?タイヨウ起きて?そろそろ帰るよ?」

目を開けると横でしゃがみ込むシルヴィアの顔が目に映る。

朝がやたら早かったせいか少し眠っていたらしい。


「タイヨウ帰るぞー!」

 ガキんちょたちはいつも通り周りでわいわい騒いでいる。


「お~う。帰るか~」

あくびをしながら伸びを一つ。


「じゃーなータイヨウ!ちゃんとしゅぎょうしとけよー!」

「ばいばいタイヨウ!」

「また明日な!」


 口々に騒ぐ子供たちに別れを告げ帰路についた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「タイヨウ!ちょっといいか?」

バーグに呼ばれ店の奥へと入る。


 すでにあれから数日、何も浮かばないままに経過していた。あれ以来ボルクスとはまともな会話も無い膠着状態継続中だ。


「今日は配達も頼むわ。シルヴィアちゃんの国民証も届いたらしいからそのついでも合わせてな。」


 いつもはバーグが行く配達先はこの街の騎士の駐屯所だったらしく、普段は彼自らが行っているのだがシルヴィアの国民証受け取りの兼ね合いもあり今日はおれが行くことになったそうだ。


「とりあえずこれを届けたらいんだよな?」

「おう、あとはあちらさんの言う通りにしといてくれればもう2.3日で国民証も届くはずだ。」


「けどおれでいいのか?なんか、めんどくさいって言ってたし。」

前にバーグが言ってたことが少し引っかかる。


「あ~、、あれな。まあ行けばわかるさ。一つ言えんのはおれとお前の好みは似てるってことだよ。」

などと意味深なことだけ言われ追い出された。



「こんにちはタイヨウ君。今日はシルヴィアさんは一緒じゃないんですね。残念です。」

駐屯所なるところを訪れ一番に顔を出したのは彼だった。

「あ~・・・なるほど。気付かなかったけどそうゆう事か。だとしたら確かに好みピッタリ。」


「何の話ですか?」 

そう言ってどうしても気に食わない笑顔でエンダが現れた。


「いやこっちの話っす。お気になさらず。これ配達頼まれてた品物です。ここでいいですか?」

「ああ、受け取りますよ。なおさずに置いていて、ダメになると困りますしね。そこにかけて少し待っていてください。」

そう言う彼に商品を手渡し促された椅子に腰かける。


 エンダ。苗字は聞いていないので知らないが歳は20代中ごろから30手前くらいだと思うがどうにも年齢不詳感が否めない雰囲気がある。切れ長の濃い青の瞳に同じような目を引く濃い青の髪。顔立ちは整っている方だろう。


 だがどうしても気に食わないのはあの笑顔だ。人当たりは柔らかく常に笑顔で一見誰にも優しい。そのうえ騎士様ときたもんだ。そりゃあモテるんだろうな。だが確信がある。こいつは自分以外の全てを見下している。――あの笑顔は、嘲笑だ。


「どうしました?人のことをそんなにじっと見て。」

紅茶といくつかの書類を持ってきて彼も目の前に座る。


「いやあ、相変わらずの色男ぶりだなあ、と。」

「君はそっちの気があるのですか?申し訳ありませんが、それにはお応えできませんよ?」

ニッコリと笑い皮肉たっぷりに返してくる。


「あいにく、おれも手一杯ですから。で、本題お聞きしてもいですか?」

「安心しました。まあさほどやることは残ってませんから。まずここに――」


 それから10分ほど説明をにやけ男から聞き紅茶に口をつける。

「説明は以上です。何か聞きたいことはありますか?」

「いいや特に。もう帰ってもいいですか?」

「ははは。ずいぶん嫌われたみたいですねえ、私は。」

今回は心底おかしそうに笑っている。


「・・・おれってそんなに顔に出てますかね?」

ここ最近で何回も言われているのでさすがに気なってくる。

「まあそれだけあからさまに態度に出てればね。私が嫌いですか?それとも・・・私が怖いですか?」


「・・・なんでそう思うんすか?」

「さあ?私は怖がられるようなことは今のところした覚えは無いですから?」

そう言う彼の表情にはいつもの嘲笑が戻ってきていた。


「用はそれだけならもう帰りますね。紅茶ごちそうさんでした。」

飲み干したカップをテーブルに置き立ち上がる。

「ああ、そういえば。一つ聞きたいんですけど、いいですか?」

「なんでもどうぞ?」

エンダはカップを片付けながら彼は応える。


「ここって駐屯所なんですよね?ほかの騎士の人らはいないんすか?」

「最近は平和ですし。こんな辺境の地ともなれば争いごともめったなことでは起きませんから。嘆かわしいことに、ほかの方々は職務怠慢というやつですね。」


「高貴な騎士様がサボり。ね。」

「さぼり?とは何かわかりませんが、せめて私だけは何もなくとも街を見回りがてらいつも買い物に伺っているというわけですね。よかったら待ちますか?」


「結構です。そこまで興味なないし。何よりあんたと二人でこれ以上はごめんすね。」

 意趣返しと言わんばかりの笑顔を返し出口へ歩き出す。


 ドアを開け外へ出るおれの背中に

「気が向いたらいつでも来てくださいね。」

 そう顔を見ずともわかる表情で彼は告げるのを聞き届けおれはドアを閉めた。



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