この初恋を、聖剣に捧ぐ
時は少し遡る―――
「覚悟は分かったよ。けど無策じゃ結果は同じだ。違うか?」
それは、デバンの言う通りだ。今このまま追いかけたところで結局はあっさり殺されて終わり。
(なんかねえのか?なんでもいい。何か状況を少しでも好転させれるものが。)
「・・・一つ。博打の要素が強ええが、あるにはある。」
「なにかあんのか!?」
デバンが残された荷車から大きめの銃を取り出す。
「・・・こいつの弾には爆破の術式が組み込まれてる。だが正面からじゃ致命傷にはならねえし、まず当てること自体難しいだろう。」
「それじゃあ大して意味なんか・・・」
「まあ最後まで聞けや。」
彼はニヤリと笑い作戦・・・というにはあまりにお粗末な代物を語った。
「・・・人にどうこう言っといて、、。」
「じゃあほかになんかあんのか?」
「無えよ。上等だ。やってやらあ!」
そう言って立ち上がり彼から銃を受け取ろうと手を伸ばす。
「そうさな、お互い上手くやって帰ってこようや。」
と彼も同時に動き出す。
森へ向かい歩き出したデバンに驚き固まったおれを見て彼は心底ガッカリしたような顔で振り向いた。
「おいおい、なんだその顔は。まさかここまで来て俺はほったらかしかよ?」
「いや、だっておまえは行かねえってさっき、、。」
「無駄死にさせには行かねえよ。俺は言ったはずだぜ?「助けられるんなら助けてえ」ってな。それにどう考えてもこの作戦は囮役と射手に分かれる方が成功率は上がるだろ?」
なるほどな、こいつも相当なバカらしい。よくそれで人のことを笑ったもんだ。
「さあさあ、和んでる暇は無えぞ。あと、俺はいまいち銃の扱いは微妙でな。外しちまっても恨むなよ?」
そう言って彼はまた拳を突き出してくる。
「もし外したら、死んでてもお前だけは道連れにする、、。」
拳を合わせ、類友ってやつかなあ。とか思いながら森へおれたちは向かって走り出した。
「とまあ、こんな感じかで今に至るってわけ。」
横にへたり込み泣いている彼女に状況を説明した。
「けど、そんなの、、、無茶にもほどがあるよ、、。だって、一歩間違えたらみんな死んじゃってたんだよ?」
「けどうまくいったろ?ならばそれで良しって事だ。男が大丈夫って言ったからには笑って本当に大丈夫にしないとな!」
いいね!の決めポーズをしながら二かっと笑って見せる。
――おお、今のはまあまあ決まった気がするな。
我ながらカッコつけすぎず、けれども気の利いた感じで言葉が出た余韻に浸っているというのに
「何でもいいけどよ、とりあえず戻ろうや。さっきのウリディンムもまだ近くにいるかもしれねえんだ。それに、少し休みてえよまじで。さすがに疲れたぜ。」
「いや、空気読め!今のはおれがバシッと決めてシルヴィアがおれにキュンと来るとこだろうが!!」
邪魔されたせいですげえ恥ずかしいだろうが、、、。と頭を抱えてうずくまる。
「二人とも本当に、ごめんなさい。わたしのせいで、こんなことになって、、。」
依然泣き止まない彼女が口を開く。
はぁ。ため息をつきながら彼女の涙を指で拭う。
「・・・いいんだよ。こんな時まで相手を気にしねえでさ。怖かったろ?」
シルヴィアは少し戸惑ったあと、こくっ。と小さくうなずく。
「生きててホッとしたろ?おれが来て、うれしかっただろ?」
言ってて少し恥ずかしくなり自分のほほをポリポリと掻く。
シルヴィアは再び泣きながらこくっこくっと何度もうなずいて見せる。
「そーゆう時はな、怖かったって泣きゃあいい。嬉しいって笑たらいい。それでもし、お前を誰かが責めるなら、おれがかわりにぶん殴っってやる。」
溢れ出して止まらない涙を何度も指で拭う。
その手を取り大事そうに握りながら
「本当にごめんね。でも、どうして?タイヨウはどうしてそこまでしてわたしを、、?」
こいつは本当に大した小悪魔だ。そんな顔でそんなことを聞くか普通。それとも本当に何もわかってないのかこんにゃろめ。
「それはほら、おれも命救ってもらってるし、ご飯食べさして貰ったし、魔法も教えてもらってるし・・・」
ごにょごにょ言っていると後ろから軽い蹴りと
「ん゛っうんっ!」とわざとらしい咳払いが聞こえてくる。
・・・わかってるよ。ただまあ自分でもこんなに根性無しだとは思ってなかったな。
コホンと咳ばらいを一つし
「まあ、あらためて?なんでって聞かれたら?そら、あれよ。
――シルヴィアが好きだ。だから、君を守りたいと。そう思った。」
きょとん。まさにそんな顔だ。
「うん・・・うん!わたしも、大好きだよタイヨウ!!」
「え?・・・・・・えええぇぇぇぇ!!?」
・・・予定外だ。まさかの初恋さっそく成就か???
いや、落ち着けおれ。ここで取り乱していてはおれの上がった株も下がると言うもの。気を取り直して・・・
立ち上がりシルヴィアに手を差し出す。
「あ、そうだ。一つ文句言おうと思ってたの思い出した。」
「文句?またわたし何かしてた?思い当たる節が多くてわかんないや、ごめんね、、。」
しょげながらおれの手をつかみ彼女も立ち上がる。
「その口癖だよ。ごめんごめん言いすぎだ。してる側としては何回も何回も謝られるよりも、一回「ありがとう」って言ってくれる方がうれしいんだぜ?」
「そっか・・そうだよね。ごm」
言い切る前にシルヴィアの口をつまむ。
「はい?おれの話聞いてたか?まさに今言った所なんですけど~?こうゆう時はなんて言うんだっけ?」
つまんでいた口を離しじっと目を見る。
「うん。・・・ありがとう、タイヨウ!」
「はい、どういたしまして。」
そう言って彼女はやっと、笑ってくれたのだった。
はてさて、これにてこの夜は決着。明日以降に備えてしっかりと寝て、と甘いことを考えていたがそんなに現実は甘くないんだなと思い知らされる。
「もういいんだよ、このパターンは、、!」
あの夜の、神楽が立ち上がった瞬間を思い出した。あの、いきなり絶望に向って背中を押されたような感覚だ。
「・・・そもそも、あの高さから落ちてんだから大人しくしとけよ、、。何、行儀よくお座りして待ってんだくそニャンコめ。」
「おいおい冗談きついぜそりゃ・・・あのバケモン、不死身かよ。」
「やっぱり、わたしがいるから・・」
そばに居る二人も信じられないという顔で前を見つめる。
そりゃあ信じらんねえよな。そこについては同意せざるを得ない。
なにせ崖から突き落としたはずの魔獣が行儀よくお座りをして『誓いの丘』で待っていたのだから。
「とりあえず不死身ではねえだろ。見ろ、ちゃんと傷は負ってる。なら倒せる。大丈夫、なんとかなる。なんとかする!」
満身創痍はこちらも似たようなものだが。間違いなくあれはもう一押しで殺せるくらいのダメージはある。
「そうだな。せっかくだ、ここまで来たらしっかりと死に顔拝んでやるとするか。」
そう言ってデバンは笑い剣を構える。
「さあ、今度こそ最終決着だ。いい加減ケリつけようぜデカニャンコめ。」
残念ながら策はもう無い。けれど諦めるという選択肢も無い。
――ビビんな。守るって決めたんだろ!
剣を構えデバンとともにウガルへと走り寄る。
「グオオオオォォ!」
魔獣も死にかけの体でありったけの殺意を込めた咆哮を上げ立ち上がりおれたちを迎え撃つ。
ブンっ!
目の前を薙ぎ払う前足を躱しふところへ滑り込み切りつける。
やはり固いうえに分厚い。1.2度切りつけたくらいでは倒せないが―――
「いける!さっきまでとは比べものにならねえくらい鈍い!」
これなら押し切れる!そう確信し体勢を立て直す。
「ああ!相変わらず一発食らえばタダじゃ済まなさそうだが、攻撃も防御も明らかに弱ってやがる!」
二度、三度と攻防を繰り返し徐々にではあるがダメージを与えている手ごたえを感じ同時に違和感がよぎる。
(傷を負った動物がわざわざ戻ってきてまで、それも待ち構えるなんてことする知能があんのか?)
「違和感あるからって止まってる暇はねえか、、!」
再三繰り返された前足の薙ぎ払いを躱し
「バカの一つ覚えかよ!これだけ見てりゃバカでもよけれんぞ!二足歩行なめんな!」
切り返そうと剣を振り上げる。
「ダメだ、タイヨウ!避けろ!」
聞こえた時には突如襲った強烈な衝撃に弾き飛ばされ聖剣のある穴へと転がり落ちていた。
(・・・くそったれ、、。ここで新技披露とかありか、、?やばい、立ち上がらな、、、)
久しぶりの感覚だ。あまりの衝撃に呼吸が止まり体にうまく力が入らない。
尻尾だったなとぼんやりした頭で思い出す。前足を避け攻撃に移る瞬間に尻尾で弾き飛ばされた。
今までの攻防で足を払った後は剣を食らうか距離を取るかの二択だったのに。狙ったのか偶然かは知らないが突如振り払われた尻尾に反応が追い付かなかったのだ。
ズン、ズンっ。
足音は目の前で止まりおれを見下ろす。
「なんだよ、今度はおれか。浮気性は嫌われんぞ・・・?」
また衝撃。今度は足。明らかに本気では無い威力の。それでもおもちゃのように転がされる。
「止まれってんだよバケモンが!」
駆け降りてきたデバンがウガルに切りかかりおれをかばう様に前に立つ。
「タイヨウ!聞こえてるか!?もう一息だろうが!!気合で立て!」
剣をウガルに振るう。それを事もなげに体に受けると同時にデバンを蹴り飛ばす。
「キサマニハ、マダ、ハタライテ、モラワナケレバ、ナラン」
「・・・クソ猫が、てめぇ、喋れたのかよ、、、。」
ズドン!
3度目の強い衝撃についには聖剣のところまで転がされてしまった。
――ダメだ、意識が、飛ぶ、、。
明滅し始めた意識の端でどこからか声が聞こえた。
『――誓いますか?』
――誓い?
『すべてを懸けると、誓いますか?』
――何に?そもそも、だれだ?
『立ちなさい。そして今ここにもう一度、誓いなさい。』
――残念ながら、もう立ち上がる力が無いんだなこれが。
『それでも立ちなさい。あなたにしか、できないことなのだから』
――うるせえなあ。
今度は違う声が聞こえる。こっちの声はよく聞いた声だ。おれが守りたいと思ったあの子の声だ。
「タイヨウ!ねえ、タイヨウ!!」
また泣いている。今回はおれが泣かしてしまった。
「返事をして!笑ってないといいことは起きないんでしょ!?だったらお願い!笑ってよ!!」
ここで笑えたらカッコいいんだろなぁ。けど、ごめんな。もう・・・
「わたしを笑わせてくれるって言ったじゃない!ほら、わたし泣いてるよ??お願いだから、、、返事をしてよ、、、タイヨウ、、。」
この子を笑わせる。それはおれにしかできないこと。けれどどうやって?
『立ちなさい。そしてここに誓うのです。』
声が頭に響く。
「・・・どいつもこいつもうるせえなぁ、、、。寝起きが悪りいんだよ、おれは、、。」
「タイヨウ、、?」
返事もせずにふらりと立ち上がり丘を登る。一歩、二歩。
「さっきから、人の頭ん中でごちゃごちゃと・・・てめえか。・・・猫が喋った次は剣まで喋んのか。・・・なんでもありだな。」
柄を、握る。
『――この先、あなたは真実に知るでしょう。平穏は遠く、安らぎは無いでしょう。それでも誓いますか?』
「ずいぶんと強引な詐欺だな、おい。契約ってのはなぁ、先に条件提示してから進めるもんなんだよ普通、、。逆に聞くけどよ、その先とやらで――あの子は、笑えるか?」
『――運命を切り開くのはあなたです。あなたが望むのなら、そういう結末もあるのかもしれません。』
「・・・なら答えは一つしかねえわな。ここで立ち止まっても行き止まりだ。なら先が地獄でも歩いてやるよ。その先に福が来るように、満面の笑みでな。」
『それでは誓いをここに。』
「ふぅーっ。」
大きく息を、吐き手に力をこめる。
「おう。たとえどんな暗闇がシルヴィアを襲っても、おれが払ってみせる。世界が彼女を嫌うなら、おれは世界だって変えてみせる。――それがおれの誓いだ。」
『――それでこそ太陽の子。あなたの歩む道にどうか光がさすように』
「シルヴィア。笑わすって言ったのに泣かしてごめんな。それとありがとう。また、諦めるとこだった。」
まさにマンガや小説の主人公みたいな展開だな。
そんなことを思いながら剣を引き抜く。
するり。と。
さっきはビクともしなかったのがウソのように剣は抜け、まるで太陽のように輝いていた。
「長い長いプロローグだな。――じゃあ、はじめようぜ。おれが紡ぐ、ハッピーエンドへの物語を。」
血の巡りが何倍にもなったような気がする。血管を流れる血を感じることができるほどに熱い。
「ソウ、ソレデ、イイ」
「・・・心配かけてごめんな。もう大丈夫だから。」
涙を浮かべるシルヴィアの頭を撫でウガルを見据える。
「どうして?さっきは抜けなかったのに、、。」
「さあ?まあヒーローは遅れてくる方がカッコいいからじゃねえの?」
といつものようにおどけて見せる。
「さっきも言ったけど伝えたいこととか、したいこととか、見せたいものも山ほどあるからな。だから、好きだってのは一回忘れてほしい。どさくさ紛れでズリい気もするし。その上で――」
「グルルルアアア!」
ウガルが吠えこちらへ走り出す。
「はあぁ。どいつもこいつも。決め台詞くらいちゃんと言わせろよ、、!」
ウガルが足を振り上げ、渾身と言わんばかりの一撃を振り下ろす。
ザンっ!
聖剣一閃。切り上げた剣で足を切り飛ばしそのまま頭上に構える。
「キサマ、トハ、マタ、アウダロウ。タノシミニシテイル。」
「うっせえ。猫との再会って感動系の動物番組かよ・・・大人しくくたばれ。」
急にしゃべったと思えば訳の分かんねえ事ばっか言いやがって。
「シルヴィアぁ!」
「はい!」突然の大きな声にびっくりしたのか背筋をピンとさせ良い返事をくれる。
そして姿勢よく座り込む彼女に向けて、叫ぶ。
「よければ――お友達からお願いしまーーす!!!」
そう言い放ちおれは剣をウガルに振り下ろした。
そうして今度こそ長い長い夜が明けた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
聖剣が輝きを失っていき同時におれの体からも力が抜けていく。そのまま後ろへ倒れこむおれをシルヴィアが受け止めてくれた。
「決め台詞にしては・・・な~んか、締まんねえ一言だな。」
あらためて思い出すとあのタイミングで言うには、何とも情けない一言だと思い自分で自分に呆れてしまう。
「・・・ううん。そんなことないよ。すっごくカッコよかった。」
そう言うと彼女はおれの体強く抱きしめてくれる。
「うわお・・・まさに、、、夢見心地ってやつ?」
「なに言ってるの?」
「いーや、なんでもない。今のは理解されてしまうと、せっかく上がったおれの株が、、下がるから。」
「?タイヨウってたまに何言ってるかわからない時があるよね。」
変なの。とおれの顔を見て笑う彼女を見てよかった。そう思いつられておれも笑う。
「そう言えば、剣の抜けた理由を聞いたときにひーろー?って言ってた気がするんだけどそれって何のことなの?」
「あれ?チラッと聞こえた魔法の詠唱も英語だったから知ってると思ったんだけど?」
なるほど、この世界には英語は無いのか。正確には魔法はおれのいた世界での英語なのだが言語としては使っていない、と。
「えいご?」
「そ、英語。おれの国とは、また別の国の違う言葉って感じかな、、。」
「ふ~ん。じゃあはっぴーえんどっていうのもそのえいごなの?」
「そうそう。ヒーローっていうのは『英雄』みたいな意味でハッピーエンドっていうのは、う~んちょっと違うんだけど・・・最後はみんなが笑顔でいること。かな?」
ふむふむと彼女は頷き、閃いたように
「じゃあ、あれだね!タイヨウはわたしをはっぴーえんどにしてくれたひーろーって事だ!」
まるで後ろに大きくドヤぁ!という擬音でも見えそうなほど見事なドヤ顔で言った。
「まだ何も終わってねえけどな・・・でも、シルヴィアのヒーローか。悪くないけど、おれは友達になりたいかな。ちなみにゆくゆくはそれを昇格させていくのが目標って事で。」
そう言うと彼女は少し困ったような顔をした。
「・・・本当にいいの?わたし、今日みたいに迷惑かけちゃうかもしれないよ?」
それは、期待や不安の入り混じった。おそらく、おれに見えている程度では推し量ることのできないくらいいろいろな感情がないまぜになった言葉なのだろう。
「かまわねえよ。むしろ好きな子からかけられる迷惑っていうのは、嬉しいもんだぜ?」
「でもわたしはエルフだから、みんなから嫌われてるんだよ?」
「全然大丈夫!その方がライバルが減ってむしろありがたい。」
「わたし・・・月の魔力を持った、呪われた子なんだよ?」
「そう。それでいて、その力を正しいことに使える優しい子、だろ?」
「残念だが。――何を言われてもおれの気持ちは変わんねえよ。おれはシルヴィアが好きだ。だから、嫌がられねえ限りずっと一緒にいるし、ずっと君を守り続ける。」
「でも・・・でも、、。」
「シルヴィアはおれが嫌いか?」
彼女はまた泣きながら首を横に振る。
「ううん。そんなわけない。わたしも、タイヨウが大好き、、!」
今までの中でも飛び切りの笑顔でそう言ってくれた。
「ふふ。やっぱ美人には笑顔が一番だな、、!その笑顔が見れただけで一晩中走り回った甲斐があったな!」
そしていつものいいね!を差し出す。
「おいおい、お二人さん。お熱いのはいいが俺は置いてけぼりかよ?」
「おお、、!生きてかデバン!死んだかと思ってたぜ、、!」
「縁起でも無えこというんじゃねえや。まあ肋骨が4.5本いかれてるから無事とは言いがたいがな。」
そう言うとシルヴィアの方を見て
「お嬢ちゃんも無事で何よりだ。・・それとありがとな。お嬢ちゃんがいなきゃ今頃、俺は死んでただろうぜ。」そう続けた。
「わたしの方こそありがとうございました。それとすっごく聞きにくいんだけど・・・名前聞いてもいい?」
「まじかよ!うすうす勘付いてはいたけどそれはあんまりだぜ、、。まったく・・・改めて、デバンだ。よろしくな。」
彼はシルヴィアに握手を求める。
また固まっているシルヴィアつつき握手促す。
「あ!よろしくお願いします、、。」
今度はちゃんと手を差し出し握手もできたな。・・・なんか好きな子っていうよりかは親みたいな心境だ。
「さあ、とりあえず上へあがろうぜ。もうすぐ日も登る頃だろうしよ。」
肩に担がれながら、シルヴィアと三人斜面を上がっていく。
「あぁ~・・・なんかおれめっちゃ活躍したのにいまいち締まらねえな~って思わねえ?」
「うるせーぞ。こっちだって骨が折れてて痛えのに担いでやってんだ。文句言うんじゃねえや。」
「おいおい、今日の主役に向かって無礼なやつだな。丁重に扱えよ!おれはもう口以外指一本まともに動かねえ!何とか言ってやってくれシルヴィア。」
「う~ん、タイヨウうるさいから下に置いてきても良かったかもしれないな~}
笑いながら斜面を登りきるとちょうど木々の隙間から登ったばかりの太陽の光が差し込む。
『――運命を切り開くのはあなたです。』
――運命?上等だ。
隣を歩くシルヴィアを見る。
どうやらこの先おれにはいろいろなことが待ち受けているらしい。
――けど、歩いた先にこの子の笑顔があるのなら
そう、歩いた先にこの笑顔が待っているのならおれはどこまでだってどんな道だって歩いていけるだろう。
(ごめんなハル姉。そっちに行くのは、少し先になりそうだけど。代わりに、とびきりの土産話を持っていくから。)
助けてもらった恩はもう返すことはできないけれど。すこしでも生かしてもらったことに意味はあったのだと言えるように。
――ヒーロー、か。悪くねえ。
おれの初恋はどうやら鬼モードらしい。でも、それも悪くない。
だってヒーローってのは、そうゆうのを全部踏破してたどり着くものだし。
それに難易度が高い方がクリアしたときに――カッコいいだろ?




