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自転車の後ろに真澄を乗せて、坂を登っていく。
真澄の伯母である藤巻瞳の家はこの坂を登り、さらに走った先にある住宅地にある。
咲子にはあまり近づかないようにと言われていたが、真澄を送っていくのだから問題ないだろう。
だが、少し気になっていることがあった。それは当然だが、あの男の存在だった。
「伯母さんに迎えにきてもらったほうが良かったんじゃない?」
響の言葉にも真澄は首を振った。
「いいんです。このほうがてっとり早いから」
「てっとり早い?」
「次の交差点、右に曲がってください。そっちのほうが近道だから」
「近道だけど、あっちは人通りがないよ」
「いいから、行ってください。気づいているんでしょ?」
「……そうか、君もわかってるんだね」
それには響も気づいていた。背後から軽の四駆が一定の距離をあけて追いかけてくる。
「ええ、誰が何のためにあんなことしてるのかハッキリしましょうよ」
「危険かもしれないよ」
「大丈夫ですよ。人通りは少なくてもそれなりに家はありますから」
響は覚悟を決めて交差点を右に曲がった。
大通りから細い路地へと入っていく。途端に店や住宅が減って街灯も少なく道路は薄暗い。歩いている人の姿はほとんどない。
誰かに襲われ、助けを呼んだところで、誰にも聞こえないだろう。
すぐに後ろからやってきたあの軽の四駆が一気に追い越していく。
5分ほど走っていくと、さっきの四駆が止まっているのが見えた。やはり先回りして待ち伏せているのだろう。
周囲はちょうど雑木林に囲まれていて、一番近い家でも100メートル以上離れている。
(これはマズイかな)
引き返すことも考えた時――
「行きましょう」
と、真澄が小さく声をかける。
響は少し自転車のスピードを落とし、警戒してその車から出てくる相手を待った。
相手はボーガンを持っているはずだ。どう対処すればいいかを頭のなかでシミュレーションする。だが、響の予想に反してそこから人が出てくることはなかった。通り過ぎる寸前、車の中を覗いたがそこに人の姿はなかった。
(いない?)
嫌な予感がした。その瞬間、向かい側の木の陰から人が飛び出してきた。気づいた時、響は何か固いものに殴られ、自転車ごとひっくり返された。
道路に叩きつけられ、衝撃が全身に走る。だが、その痛みよりも、今は考えなければいけないことがあった。慌てて起き上がろうとする眼の前に若い男の姿が見えた。その姿に響はギョッとして動きを止めなければならなかった。その手には散弾銃が握られていたからだ。
(くそ)
どうしようもなかった。
倒れた時に頭でも打ったのだろうか、真澄は気を失っているようで倒れたままだ。
「今度はしくじらねえぞ」
男の銃口がしっかりと響のほうをむけられている。
その時、人影が男の背後から近づいてきた。




