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その小さな身体に生命力が宿るのを感じ、ムクリとその手の中のスズメが起き上がった。
気のせいか、雀の様子が普通とは少し違っている。その周囲に黒い気がまとわりついているように見える。
これはただ息を吹きかえしたというだけの状態ではない。それが響にもハッキリとわかった。
「これはどういうこと? 伽音さん、何をしたの?」
「おやあ? 何を言っているのですか。何かしたのはあなたじゃありませんか。恍けるのはいけませんよ」
「ボク? ボクが?」
「そうです。人のせいにしてはいけませんよ」
それは響にもわかった。確かにこの雀は自分の行動によって生き返った。
「でも、これは?」
「妖かしとなったようですね」
「妖かし?」
現実離れしたその言葉でも、不思議に違和感はなかった。
「そうです。恨みを持ち、その恨みをはらすための妖かしとなったのですよ」
「恨みをはらす?」
「あなたにはそういう力があるのですよ」
「こんな力が……ボクに?」
驚く響を気にもせず、伽音はジッと手の中の雀へ視線を向けている。
「それよりもこの姿を見てください。大きな恨みを持っているようですね」
「恨み?」
「しかも、誰か別の恨みも一緒に持っているようです」
「そりゃあボーガンで撃たれたんだ。恨みくらい持っても当然じゃないか」
「違いますよ。雀のことじゃありません」
「雀のことじゃない? じゃあ誰の?」
「この雀の中には、ある別の『恨み』の心が宿っています」
「別の恨み? どういうこと?」
「妖かしというのはそういうものなのです。一度死んだものがこの世に戻る時、別のものの……近いものの想いを一緒に連れ帰ってしまうのです。この雀の中に宿ったのは、この男に殺された男の子みたいですね」
響の問いかけに、伽音は当たり前のようにスラスラと答えた。
「殺された?」
「ええ。つまりこの男がボーガンで撃ったことがあるのは雀だけではなかったということですよ」
その言葉に響は少し怖さを感じていた。
「伽音さんは知っていたの?」
「何をですか?」
「この雀を撃った人が、人殺しをしていたこと。だから、この雀を妖かしに?」
「いいえ、まさか」
伽音はニッコリと微笑んだ。「でも、もし人殺しでなかったら後悔していたと?」
「それはそうだろ。だってこの雀は妖かしになったんだろ。それは……つまり、恨みをはらすんだろ」
「人殺しが罰せられるのは仕方ないと思えるけれど、獣殺しは罰せられるべきではないと?」
「いや、そういう言い方は違うけど」
「あなたは勘違いしていませんか? 大事なのはこれからのことですよ」
「これから?」
「この殺人者は一度、人を殺している。それにも関わらずいたずらに雀を殺そうとした。つまり、生命の価値というものをその程度に感じているということです」
「だから?」
「この殺人者はまた人を殺すかもしれませんね」
伽音がそう言った時、スズメが響の手から飛び立った。




