表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編小説集10 (451話~最新話)

降霊術

作者: 蹴沢缶九郎

古本屋でたまたま降霊術に関する本を見かけた男は、暇潰しに本の購入を決めた。

男は家に帰ると、さっそく本に書かれた方法で降霊術を試してみる事にした。しかしいざ、降霊を試みるにしても、どの霊を降霊させればよいのか、そこまでを考えていなかった男はしばらく思案し、一つの妙案が思い浮かんだ。

歴史的に名だたる文豪の霊を自身に憑依させ、新作の小説を書かせようと思ったのだ。それをどこかのコンテストにでも応募すれば、受賞は間違いなしで、晴れて自分も文豪の仲間入りとなる。その後は同じ要領で、やはり歴史的に有名な漫画家や画家や音楽家などを憑依させてもよい。可能性は無限大で、つまらない日常から一変、周りから認められた男を夢のような世界が待っているのだ。

男は本に書いてある通り目をつむり手を合わせると、心の中で降霊させたい文豪と自身の願いを思い描きながら、何やら怪しげな呪文を唱えた。そこから男の意識は徐々に遠退いていった…。

どれ程の時間が経っただろうか、意識を取り戻した男の目の前に、数百を越える原稿用紙の束があった。原稿用紙には男の思惑通り小説が書かれていた。どうやら降霊術は成功したようだった。

男は胸の高鳴りを抑え、原稿用紙を手に取ると、食い入るように小説を読み更けった。小説はさすがは歴史的文豪の書いた作品であり、読み手を魅了する傑作であった。

だが、小説を読み終えた男は原稿用紙をビリビリに破くと、クシャクシャに丸めてゴミ箱に捨ててしまった。

やはり、他人に書かせた作品に達成感などはなく、男に残ったのは虚無感のみであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ