婚活は所詮、手段に過ぎない?④
「ところで、御金持好なんて小説家がいることを、私は始めて知りましたよ…」
「お前、御金持好先生を知らないのか? いいか、御金持好とは…」
田井島は御金持好なんて作家を知らなかったが気に入らなかったのか、田吉がムキになって教える。
「大蔵とも会えなくなって、心にぽっかりと穴が空いてしまってな…。そんな時は、言葉で心の穴を埋めるに限るよ。何があっても、言葉は人を裏切らないから…。どうだ、これも何かの縁だ。田井島も一つ小説を書いてみらんか」
田井島は丁重に断る。ダラダラと言葉を綴るよりも、言うべきことをズバッと言うのが、田井島の性にあっていた。合理性を何より重んじる田井島には、小説を書く行為はとてもまどろっこしく感じられて仕方ない。
それにしても、おっさんほどの行動派がなぜ小説を書くのか? やはり、あれこれ見ている分、言いたいことや伝えたいことが多いと言うことか?
「おっと、もう四時半を過ぎているじゃないか…。早くしないと、英会話交流に遅れるぞ。今日はアメリカや英国だけでなくて、インドやパキスタン、オーストラリア、アフリカなどのいろんな国の留学生や在住者が来るらしいからな…」
田吉と田井島は、急いで会場のイングリッシュパブへと向かった。それにしてもイングリッシュパブとはいかにも英会話交流の会場にふさわしい。さすがは異文化交流会である。合コンしか頭に無いのかと思ったが、こう言ったものにも精通しているらしい。
「田井島。ところで、今日はどんな子が来るのかな…」
「結局は、それですか…」
ああ、やれやれ…。どんなにへこたれることがあっても、人間の根本はそう簡単に変わらないんだな…と思う次第である。田井島は人間の業の深さを思い知らされた。




