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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第3章 最愛の人から一番聞きたくない言葉
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最愛の人から一番聞きたくない言葉①

 カンボジアから帰った後、花上と鳥飼は付き合い出した。他のメンバーも薄々気付いていたようで、やっと付き合い出したか…と言う印象である。しかし、田井島は簡単に受け入れることができなかった…。


 それなのに、鳥飼と来たら…。付き合い出す前に、当然のように田井島に相談して来た。少しは相談を受ける僕の身にもなって欲しいものだ。鳥飼華の世話好きで気がよく利く所に好意を持っていたのに…。


 こんな相談を受けたら、田井島はもう何もでき無くなる。仕方ないので、自分の思いを永遠に封じ込めることに決めた。


「花上ってさ、人のためだったら、平気で捨て身になるでしょう? 私、心配なんだよね…。あれでは、いつか人助けのせいで…死ぬよ。あいつ…」


「だったら、鳥飼が体を張って、止めてやればいいじゃん。この前みたいに、グーパンチでさ…」


「それにしても、つらいな…。ああ、なんであんな奴を、好きになったのかな…」


「冗談でしょう?」


 冗談であって欲しかった。だからこそ、田井島は精一杯とぼける。一番聞きたくない話を聞かされるなんて…。どんなに分かっていたとしても、本人が言わない限りは推測にすぎない。それを本人が断言したら、紛れも無い事実になる。もう、引き返せないのか?


「冗談なら、よかったのにね…。あの時、花上が子どもを助けに行ったでしょう。その時、私、もし…あいつが死んだらどうしよう…って、そればかり考えていた」


「それは俺も考えたよ」


「それだけじゃない…。胸が痛くなったの…。あいつが無茶しないように、見守ってやらないと、私は大切な人を永遠に失うと思った」


 もう止めてくれよ…。何度、思ったことか…。しかし、この場で鳥飼に話すのを止めさせても、鳥飼の思いを止めることはできない。ならば、せめて最後まで聞いてやろうではないか。


 これが好きな人のためにできる唯一のこと。それでもそばにいてもらいたいと思う浅はかさときたら…。つくづく、馬鹿だな…と思う。


「あの時、無事だったら、本当は抱きしめたかったのに…。なぜか、怒りが込み上げて、勢い余って、殴ってしまった。とにかく、あいつのことを考えると苦しい…」


「確かに、それは苦しいねぇ…」


 苦しいのはこっちの方だよ…。そんな鳥飼の姿を見て、田井島は真綿で首を絞められるような苦しみを感じた。じわじわと締め付けられるような、ねっちこい苦しみ…。しかし、鳥飼にその思いは永遠に届かない。ただ、悲しかった…。


 そんなありきたりの言葉では足りないぐらいの絶望が体中を貫く。焼きごてなんて当てられたことは一度もないけど、多分そんな感じの痛み。肉が焼ける音と激痛、心が音を立てて壊れる音と激痛。

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