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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第15章 春樹が残してくれたもの
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春樹が残してくれたもの④

 ふう、ようやく解放された。遥斗の奴め…。さんざん木魚に合わせて手拍子したり、踊ったりしたあげくに疲れ果てて眠ってしまった。一歳児は自由でうらやましい限りである。


「それにしても、遥斗君は相変わらずだな…。木魚の音に合わせて手拍子したり、踊ったりしたりしたあげくに、疲れ果てて眠るんだからね。まあ、お父さんに似て、音楽が好きなんだろうよ」


「この前もこんなことをやってたの?」


「そうだよ。まあ、鳥飼はあの時、喪主の挨拶とか、突然のことで気が動転していたからな…」


 それは全く知らなかった…。言わなくていいことは、わざわざ伝えないのは田井島らしい。どうやら、前の四人にも手拍子は聞こえており、笑いをこらえるのに必死だったようだ。


「物心つく前の幼子が木魚の音に反応して、手拍子したり、踊り出したり…なんてよくあることですよ。私どもはそのようなことにも、動揺すること無く、仏様のために心をこめて御経を唱えるのみでございます。」


 声にこそ出さなかったが、ここにいる六人はさすが住職さんだと思ったに違いない。誰もが同じようにうんうんと頷いている。


「仏様は生前、ギターを弾いておられたようですが、これはどなたの影響でしょうか?」


「私が若い頃に弾いていたものですから、それを見た息子も同じことを始めたようです」


 義父がそう言ったことに華は耳を疑った。そんなの初耳である。確かに春樹は学生時代に気が向いたら、とにかくギターを弾いていた。ギターをフィリピンに持って行って、フィリピンの子ども達の前で弾いたこともある。


 最近は仕事が忙しくて、ほとんどギターを触っていなかった。しかし、八月五日の結婚記念日には珍しくギターで「誕生日には真白な百合を」を弾いてくれた。今思うと、結果的に最後のギター演奏になってしまったな…。まさか、そのようなことになろうとは、あの時は春樹も華も思いもしなかった。


「もしよかったら、一曲弾いて頂けませんか? 仏様も喜ばれますよ」


「いやいや、もう十五年近くやっておりませんので、平にご容赦頂きたいと存じます」


 ここでお坊さんが急に義父に対して、ギターを弾くように言い出したので、さらにびっくりした。まあ、御経を上げた後、しばらく遺族と話ぐらいはするだろうけど…。さすがにギターを弾くように勧める僧侶はなかなかいるまい。意外とお茶目な方なのかも…。

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