家仕舞い③
「今、遥斗と一緒におりますので…。ちょっと家内に確認してみますね」
ええっ! まさか、父がそのようなことを言うとは…。思いにもよらなかった。日頃からの義父のことを「あの若造が…」なんて言っているので、父は間違いなく先に帰ると思ったのに…。
珍しいこともあるものだ。しかも、二人で段ボール十箱も運ぶのは大変だろうと、義父母の加勢を申し出たではないか。
そして、華に対しては、母を迎えに行くように行ったのである。一体、どんな風の吹き回しなのか? 華は危うく、大声でええっ!…と叫ぶところであった。
「俊夫さんが手伝って下さるとは有り難いですな。これで百万馬力ですよ。ささっ、狭い車内ですが、どうぞお乗りください」
「何、困った時はお互い様ではありませんか、道夫さん」
「俊夫さん、私が後ろに座りますので、広々とした助手席へどうぞ!」
何、これ? 三人とも何か変だ…。別に仲良くやっている訳だから、こちらとしてはむしろ有り難いぐらいだ。これが、つい二週間ほど前に華のすむ場所でもめた人達なのか?
それにしても、何か気持ち悪いなあ…。そう思いながら、華は三人が乗った車が出るのを見届けてから、実家へと車を走らせた。
「ねえ、お母さん、何か変でしょう? 私、お父さんが先に帰れるように、わざわざ声をかけたのにさ…。花上家で一緒にごはんを食べようと言うのよ。それだけでも十分びっくりなのに…。段ボール運ぶのを手伝うと、自ら二人の車に乗り込んだのよ! もう、びっくりしちゃってさ、思わず大声出しそうになったよ…」
「確かに、そうね…。私もそこにいたら、華と同じように驚いたかも…。もしかしたら、春樹さんがいなくなって、三人とも寂しいのかもしれないよ。私も寂しいもん…。ああ、惜しい人を失ったねぇ…」
後部座席から母がぽつりとつぶやく。その隣には遥斗がチャイルドシートの上で、暴れることなく大人しく座っていた。久々の車で嬉しいのだろう。
「ブーブー、ブーブー…」
と言いながら、楽しそうに景色を眺めているのがバックミラーに映る。そうか、母もそう思うのか…。やはり、働き盛りの元気はつらつの三十歳の男が突然亡くなったのだから、親の悲しみは計り知れないだろう。
義父母はもちろんのこと、父母も実の息子のように春樹と接していたからな…。残された妻の悲しみは、もはや言葉にできない。でも、何か違う。悲しいんだけど、親のようにはなれない。せいぜい、人知れず泣くぐらいか? 華は義父母宅へ向かう途中、そんなことを考えながら運転をする。




