家仕舞い①
運動会の翌日、小学校は運動会の代休で休みだった。花上華は義父母との約束通り、父・俊夫の運転する車に乗ってから、かつて住んでいたマンションへと向かう。
今は亡き夫・春樹の荷物を運び出せば、全ての荷物整理が終わる。義父母はどちらも小学校の校長をしているので、運動会が終わるまでは忙しかったようだ。
春樹が子どもを助けるために車に飛び込んで亡くなったのが、九月八日のことである。それから華の周りの世界が変わった。
華は一人で息子の遥斗を育てないといけなくったし。田井島は居場所を失った。本当は義父母もゆっくりと悲しみと向き合いたかっただろうけど、小学校の校長と言う立場がそれを許さない…。結局、ほとんどの作業は華と父・俊夫の二人で行うことになった。
「春樹君の荷物を引き上げたら、全て終わりだな…。道夫さんも、美冴さんもとりあえず一安心だろうよ」
「お父さん、今まで手伝ってくれてありがとう!」
「いやいや、礼には及ばんよ。まあ、年金暮らしだから暇だし…。母さんなんか遥斗の相手をするようになってから、すごく生き生きするようになったぐらいだ。一応、母さんにもお礼言っとけよ」
「はーい」
そんなこと、わざわざ言われなくても分かっているが、三〇にもなれば、わざわざ言い返すことでもないと分かるようになる。
父だって、親切心で言っているのだから、あえて相手の気を悪くさせることもない。何も分からない十代、分かっていてもついつい言い返してしまう二十代を経て、ようやくいい按配でうまいこと親とやり取りできるようになったな…。
マンションに着くと、父がピザのにおいがするなんて言うので、慌てて全ての窓を開けてから換気を行う。この前の土曜に田井島と一緒に食べたピザのにおいが、まだ残っていたとは…。食べているときは気付かないけど、ピザは意外とにおいが部屋に残る。
「土曜日に、田井島と一緒にピザを食べたの…ここで」
「ああ、田井島君か…。それなら、春樹君も喜んだだろうよ。そう言えば、三人は大学のサークルつながりだったな…」
「そうよ。私達、フィリピンのボランティアサークルで知り合ったの…」
まさか、父がそんな昔のことを覚えていたとは…。華はそのことに驚く。春樹も華も実家から大学に通っていたが、田井島は親元を離れて一人暮らしをしていた。
そんな訳で、田井島は学生時代に何度かごはんを食べに来たことがあった。また。三人で食料を求めて、どちらかの実家を行ったり来たりしていた。ふと、ベルが鳴り、ドアへ向かう。




