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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第13章 田吉にも柚木にも悩みの1つぐらいある
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田吉にも柚木にも悩みの1つぐらいある⑧

 黙って聞いていれば、おっさんが勝手なことばかり言うので、田井島もこらえきれ無くなった。こんな話…したくもない。そこで、田吉を意味も無く怒らせて、話を横道にそらせてやろう。


「田井島の言う通りだよ。俺みたいなのに、子どもがいるなんて、世も末だ。それこそが、現代の一夫一妻製の最大の問題点だ。それこそ、ビル・ゲイツとかロスチャイルド財団とかの、世界の名だたる大富豪で人徳家が優秀な子どもをたくさん産んで育ててくれたらいいのさ…」


 マジかよ…。暴論もここまで極められると、もはや何も言い返せない。もう、好きなだけ語ってくれ…。


「あの人達だったら、百人と二百人ぐらい余裕で育てられるし、子ども達もきっと幸せになれるはずだ。しがない鉄道運転手の父なんかよりも、よっぽど確実だろう?」


 ああ、やれやれ。さすがは田吉のおっさん…。明らかにおかしい自説を大手ふって説明をし続けるとは…。もう、どうすることもできない。ここまでぶれること無く、乱婚制について語れる人も珍しい。それが離婚を無くすのに有効なのかは、定かではないけど…。


「誰、この人…」


 急に見知らぬ人が現れてびっくりした。しかし、先ほど運動会で見た大濠大蔵がいたので、先妻がようやく来たと分かった。時計を見ると、もうすでに四時半を過ぎていた。確かジョイフルに着いたのは三時頃だったはず…。


「知り合いだ。今回の件でいろいろと相談に乗ってもらっていたんだよ」


「ふーん。今さら、あれこれ考えても遅過ぎるんじゃないの?」


「おい、よせよ…。大蔵の前で…」


「そうやって、子どもの前でだけ、父親面しないでください。大蔵にはもう全て話しています。こうやって、会うのも今回で最後だからね…って。では、私帰るから。また、明日、ここに大蔵を連れて来てよ!」


 これがとうの昔に愛の冷めた元夫婦の会話か…。何一つ無駄のない実に事務的なやり取り。前妻には一秒たりとも前夫と一緒にいたくないと言う完全拒絶の姿勢がありありと出ていた。

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