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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第2章 3人の出会い
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3人の出会い③

 こう言う時、男はその場の結果で動く。確かに花上のやったことは無茶苦茶で一歩間違えば死んでいたかもしれない。しかし、花上は結果として少年を助けた。ならば、それでいいではないかと…。だが、一人だけそれを許さない人がいた。


「あの野郎、いい気になりやがって…。ぶっ飛ばしてやる!」


「鳥飼、気持ちは分かるが、冷静になれ!」


 ところが女はその場の感情で動く。今回はたまたまいい結果になっただけであり、無計画で無茶な行動を取ったことにより、メンバーに多大な迷惑をかけた。


 これはどのような形であれ、到底許されるものではない。結局、鳥飼は田井島の制止を無視して、飛び出して行ったのである。それにしても、同じ学年にぶっ飛んだのが、二人もいると大変だ。ちょっとは後先を考えて欲しい…。いつも二人のフォローをさせられる身にもなってくれよ。


「ちょっと、大原さん…。鳥飼、どうしますか?」


「飛び出してしまったのを、今さら抑えに行くものね…。まあ、いいんじゃない。それにしても花上は幸せだね。自分のことを思って、殴ってくれる女がいて…。実にうらやましい限りだ」


 大原がぼやきなのか、ひがみなのか、よく分からない意味深なことを言うので、田井島は一人だけ冷静でいるのが馬鹿らしくなった。フィリピンボランティア会には、よくも悪くも変わり者の熱い奴らの集まりだ。リーダーと言えとも、大原も田井島もその一員である。ええい、なるようになれ!


「花上の馬鹿野郎! 勝手なことばかりしやがって…。死んでいたら、どうするんだよ!」


 田井島の制止を振り切った鳥飼は、そのまま感動の場面にいた集団の輪に突入する。ウウッーと嗚咽をあげて泣きじゃくりながら、中心にいる花上に向かってただ走り続ける。そして、右拳に力をこめて、花上の右頬にやや空振り気味のグーパンチを入れる。


 花上はよけること無く、鳥飼のグーパンチを受け入れ、そのまま花上は倒れ込んだ。鳥飼も勢い余って、花上の上に倒れ込む。周りにいた群衆はあまりに突然のことに一瞬ポカーンとしていたが、すぐにお腹を抱えて笑い出した。わずか二、三分の間で場の空気は緊迫、感動、そして道化へと目まぐるしく変わる。


「ごめんよ…。心配させたのは分かっている」


「嘘つき…。何も分かってないくせに…」


「本当だよ…。ただ、誰かが死のうとしているのに、見ぬふりをして、自分だけ助かっても、苦しいだけじゃないか? 朝起きるたびに、助けられなかったことを後悔して、生きるなんて…。俺にはできな

い…」


「馬鹿じゃないの? だったら、そのために花上の命を落としてもいいわけ? 残された人はどうなってもいいわけ? 残された人に迷惑をかけてもいいわけ? そんなの絶対にダメ!」

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