もぬけの殻⑥
昔からそうだ…。田井島は約束の時間に遅れる時の連絡をいつもおろそかにする。他のことはきっちりやるだけに、余計に腹立たしい…。華には平気で人を待たせる神経が理解できない。
「すぐに終わると思っていたもので、本当に申し訳ない…。あれっ、遥斗君が泣いている。珍しい…」
田井島は何もない殺風景な部屋よりも、遥斗が泣いていることの方が気になるらしい。どこまでも現実主義な奴だ。田井島が遥斗にいないいないバアを何回かすると不思議と泣き止んだ。
そして、田井島の所へ行こうとするので、遥斗を田井島に渡す。遥斗は田井島の腕でキャッキャッ言って喜んでいる。彼が遥斗の脇をくすぐっていた。田井島って、本当は子ども好きなんだよな…。そして、遥斗にはやっぱり父親が必要みたい。
「それにしても、きれいに片付いたね。ここまで片付けるの大変だったでしょう?」
「まあね…。まあ、二週間あったし、父も毎日手伝ってくれたからね。そして、遥斗は毎日、母が面倒見てくれたから。そうでなかったら、ここまで順調にはいかなかったかも…」
「何か、ごめんな…。手伝うことができ無くて…」
華には、田井島がどうして謝るのか全く理解できなかった。全く、何でも謝ればいいってもんじゃないよ…。
「何言ってるのよ…。あんたは仕事が忙しくて、それどころじゃないでしょう。ところで田井島、何か食べた?」
「いや、何も…」
「じゃあ、ピザでも頼もうか? 春樹、ピザが好きだったでしょう。最後にここでピザを食べたら、春樹も喜ぶと思うの…」
「そうだな。ちょうど、腹も減っていたし…。そしたら、あいつも喜ぶだろうよ。なあ、遥斗」
「あーい」
遥斗が本当に分かっているかは定かではないが、タイミングよく返事したのは母として嬉しかった。それにしても、さっきから田井島の顔に違和感がある。二週間前とは、明らかに何かが違う…。あっ!




