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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第11章 もぬけの殻
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もぬけの殻⑤

 土曜日の昼、華は遥斗と一緒にかつて住んでいたマンションへと向かった。早いものでもう二八日だ。もう九月も終わってしまう。部屋の片付けも順調に終わり、今や月曜日に花上家へ運び出す段ボール十箱だけがリビング入ってすぐの壁際に固めて置いてある。月曜日にはすぐ運び出せるようになっていた。


 もうすぐ、田井島もやって来る。二週間前に、一時の激情にかられて、思わず田井島に結婚を迫ってしまった。今思えば、これまでの田井島の想いを踏みにじる最低の行為であった。


 こんなことで二人の友情を壊してはいけないと思い直し、田井島には電話で謝った。田井島も友人の死をきっかけに三人がバラバラになることを不本意に思っていたようで、これまで通り友達として仲良くやっていこうと言うことで落ち着いた。


 それにしても、春樹の名前を出すとある程度思い通りになる。死人の名を騙るなんて…とも思ったが、突然先たたれて迷惑しているのだから、少しぐらいは大目に見てもらえるだろう。


「もうすぐ、あのマンションを引き払うから、最後に来てもらえないかな…。そしたら、春樹もきっと喜んでくれると思うんだ」


「確かにそうだな…。分かった。それなら、土曜日の昼に行くからな…」


 春樹は天国から今の私を見て、どう思っているだろうか。遥斗は何もかもが無くなった殺風景なリビングを見て、さっきから何か落ち着かない。もしかして、勝手に片付けたことを怒っているのか?


 それとも、ここで暮らしていたことをもう忘れて、見知らぬ所へと連れて来られたとでも思い込んでいるのか? それにしても、田井島は遅いな…。


 しばらくすると、遥斗は泣き出してしまった。春樹が亡くなってから、遥斗はよく泣くようになった。やっぱり、父がもうこの世界にいないってことが分かるのかな…。


 それとも周りが落ち着かないから、それを感じとって不安定になっているのかな…。ピンポーン。急にドアベルが鳴る。田井島に違いない。今さら、この家に来る人など他にいないから…。


「はい…」


「田井島です。遅くなって申し訳ない…」


「遅いぞ! 田井島!」


「申し訳ない…。後輩の仕事のミスを一緒に直していたら、すっかり遅くなった」


「もう…。だったら、連絡してよ…」

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