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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第11章 もぬけの殻
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もぬけの殻③

 俊夫と華は段ボール二箱分の本を抱えて、マンションの五階から降りた。それにしても、マンションにエレベーターがあって良かった。


 それから、父の運転でブックストアへ寄った。父も母も既に定年を迎え、時間があるからこうやって手伝ってもらえるから、何とか成り立っている。


 もし、父も母もまだ現役だったら、こうはいかない。父には手伝ってもらえないし、母に遥斗を見てもらうこともできない。


 ここに遥斗を連れて来て、華一人だけで作業をするとしたら、わずか十日足らずでここまで作業を進められなかっただろう。それこそ、業者を頼まないといけなかったに違いない。そう思うと、本当に父母に感謝しきりだ。


 それに実家にいる限り、あの方が謝罪に通い詰めることもないだろう。それだけで無く、春樹が命と引き換えに救った少年の家族も花上家へやって来たらしい。


 華が花上家へ行った翌日、日曜の昼間に…。義父母としては何とも言えなかっただろうが、あの方のように追い返す訳にもいかず、ご焼香をあげてもらった後にしばらくお話したとのこと。


 華としては、飲酒運転をした男も当然許せないが…。不注意により四歳の子どもが車にひかれそうな状況を作り出した母親も同じように許せなかった。


 どちらかと言えば、春樹が助け無くてはいけない状況を作り出した母親にこそ、春樹を死に至らしめた責任があるのではないか?


 さすがの春樹も、何の意味も無く飲酒運転している車に飛び込まない。そう考えると、花上家へ行ったのが、土曜の夕方である意味よかったのかもしれない。日曜の昼間だったら、母親に逆上して飛びかかっていたかもしれないな…。まあ、実家にいる限りは大丈夫だろう。


「華、人生って、本当、何が起こるか分からんな…」


「父さん、一体、どうしたの?」


「どうしたのって…。まさか、春樹君が突然亡くなるなんて…思ってもなかったから…」


 古本屋へ寄った帰り道、かえっていつもより帰りが遅くなり、見事に夕方のラッシュに巻き込まれた。いつもなら、渋滞に巻き込まれる前に帰り着くのに、古本屋へ寄ったがために遅くなってしまった。


 父は運転中、ほとんど話さない。FMラジオを聞きながら、同じような景色を助手席で眺めるのが、華の密やかな癒しの時間であった。しかし、ラッシュで車がなかなか動かなければ、さすがの父もしゃべる。そうしないと、今度は眠くなるらしい…。

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