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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第10章 婚活の狂気が冷めた朝
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婚活の狂気が冷めた朝⑥

「あら、田吉様。いらっしゃいませ。今日もいいのがたくさん入っていますよ」


「店長、今日は俺じゃ無くて、こいつに安くていい黒のカジュアルジャケットを一着見繕ってくれないか?」


「こちらの方は、田吉様の親戚ですか?」


 身長が一八〇以上ある田吉と、一六〇足らずの田井島とは、どう見ても他人にしか見えないと思うのだが…。この店長は一体何を根拠に親戚だと感じたのだろうか?


「いや、違うんだよ。こいつとは、昨日、合コンで出会いましてね…。何でも、三〇になるまで、合コンに一度も出たことがないと言う天然記念物だよ。三〇で合コンデビューだから、これまでの遅れを挽回したくて必死みたいですな」


「まあ、最近は草食系が多いですからね。何もしないまま、三〇を迎えて、慌てて婚活をされる方が店にもよくいらっしゃいます」


「へえ、生きた化石はこいつだけと思っていたけど、そんなのがゴロゴロいるんだな…」


「まあ、肉食の田吉様とは、真逆の世界ですね」


「このままじゃ、日本民族は自然消滅してしまうんじゃないか…。冗談抜きで…。こりゃ、三〇過ぎたら、強制的に結婚させる法律でも作らないとやばいですな」


 店に入るなり、田吉のおっさんは三〇歳ぐらいの若店長と仲良く世間話を始めた。田吉はカミッサ・ネグロの常連らしく、店長だけで無く、他の店員も田吉に近づくと深々と頭を下げる。


 それにしても、人の話で勝手に盛り上がるのは止めて頂きたいものだ。それにそこら辺の草食系と一緒にするのも止めてくれ。


「それではそちらの方、採寸を致しますので、こちらへお越し頂けますか。田吉様はこちらで待たれますか?」


「ああ、そうだな。では、田井島をよろしく頼みますね」


 田吉は待ち合い客用のソファーに腰を下ろして、おもむろにスマホを触り始めた。田井島はそんなおっさんを横目に、奥へと連れて行かれる。


「それでは田井島様、失礼致します。ウエストは七三センチですね。それにしても、よく引き締まったお体ですな…。何かスポーツでもされていらっしゃるのですか?」


「いや、特には…。週に二、三回…家の周りを走っているだけですけど…」


「ああ、なるほど。それはよろしいですね。それなら、細めのジャケットをあつらえましょう。一般的に、三〇代になると運動不足や暴飲暴食で体型変わられる方が多いので、少し大きめで、体型がよく見えるジャケットをお勧めすることが多いです」


「へえ…」


 やはり、プロである。ただ、寸法を測るだけで無く、日頃の生活習慣なども聞いて、より長く着ることのできる一着を導き出すとは…。

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