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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第10章 婚活の狂気が冷めた朝
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婚活の狂気が冷めた朝⑤

「では、離婚した人は結婚と言う道具を使いこなせなかった結果…とでも言いたいんですか?」


「まあ、そう言う所だな…。少無くても、俺はそう思っているよ」


「へえ…」


「これまで話していて分かったと思うけど、俺は女遊びや女性を口説くのが本当に好きだ…」


 ここで実は嫌いなんだ…とか言われていたら、さすがに人間不信になってしまう。田井島はそう心の中でつぶやいた。田吉が続ける。


「しかし、それでは結婚できないと思ったし、結婚すればそんなことは、一切すっぱりやめられると思っていたんだ。だが…」


「やっぱり、止められなかったですか?」


「まあ、結論から言うとそうだ…。しかし、それでもしばらくは止められた。嫁は看護士の仕事を出産のために休んでいたし、俺が頑張らないといけないと運転手の仕事をとにかく頑張った」


 そこまではどこの夫婦でも普通にやっていることだ。それがずっと続いていれば家庭は崩壊することはない。


「やがて、嫁が仕事に復帰して、子どもを保育園に預けるようになると、家に誰もいなくなることが増えた。すると、何だか寂しくなって、ふと張りつめていたものが切れてしまった。それから、反動ですごいことになってしまってね…」


 さっきのふざけた武勇伝とは、また違った意味で心に迫るものがあった。やっぱり、人は目先の感情で動く生き物なのか?


 どんなにつらくても、こらえた先に大きな幸せや喜びがあると理性で分かっていても、目先の感情に負けてしまうのかな…。こう言う話を反面教師にして、自らを律していくしかないだろう…。


「あ、着きました。ここでしょう? 田吉さんの言っていたいいカジュアルジャケットが置いてある店…」


「ああ、そうだ。よし、カミッサ・ネグロで安くていい奴を一着買おう。本当、一着あると便利だぞ」


 田井島はいいタイミングで、話を変えることができてよかったと感じた。さすがにシラフでこの手の話は重過ぎる。


 それにしても、田吉は自分の話をするのが本当に好きなんだろうな…。そして、こう言う人はもれ無く自分が好きである。どうしたら、こんな風に自分を愛せて、誇らしく自分のことを他人に語れるのだろうか。自分が嫌いな田井島には全く理解できない境地だ。

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