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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第9章 主(あるじ)を失った家
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主(あるじ)を失った家④

 何だろうか…。さっきから、玄関先が騒がしい。あの温厚な義父が声を荒げるだなんて…。義母が心配になって、玄関の様子を見に行った。残された華は、遥斗とリビングで待つことにする。


 すると、ようやく二人が戻って来たので、何事か聞いてみた。何でも、飲酒運転をして春樹の命を奪った人の母親が、わざわざ謝罪に来たらしい。華もそれを聞いて、とたんに怒りが沸いた。余計なことをしやがって…。


「どの面下げて、謝りに来たんだ…全く。人の命を奪っておきながら、よく来れたもんだよ」


「本当にそうよ。父さんの言う通り! もう、せっかくのご飯なのに、何だか食欲が失せてしまったね…」


 義父母の言う通りである。謝罪に来た方は、息子の不始末を許してもらいたい一心だろうけど…。こちらは大切な人を一人失っているから、そう簡単に許せるはずもない。これがケガして入院しているぐらいであったなら、また話が違うんだろうけど…。


 一家の大黒柱を失い、ささやかな幸せも生活の基盤も全て消えてしまった。また、学生時代から仲良くしていた田井島も春樹の死をきっかけに離れて行ってしまった…。なんで、私だけがこんな目に遭わないといけないの…。


 気付いたら、食事中にも関わらずに泣き出してしまった。さっきまでの楽しい雰囲気は無く、周りはただ重い空気に包まれている。誰もごはんに箸をつけない…。


 離乳食をおいしそうに食べていた遥斗もこの重い空気に飲まれたのか、突然スプーンを投げつけて、大泣きし出したのである。普段、めったに大泣きとかしないのに…珍しい。


「遥斗も怒っているんだろう。どの面下げて、謝りに来やがったのかって…」


 もし、遥斗が大泣きしなかったら、私が義父母の目の前で大泣きしていたかもしれない。華はびっくりして、遥斗をいすから下ろして、力強く抱きしめる。春樹が亡き今、遥斗を守れるのは母親の私しかいない。そうだ。いつまでもメソメソしていてはいけないのだ。


「華さん、なんかごめんなさいね…。こんなことになってしまって…」


「ちょっと、お義母さん、やめてくださいよ…。義母さんは何も悪くないですから…」


「いやいや、まさかあの人が来るなんて、思わなかったんだよ。葬儀の時も来ていたから、お引き取りを願ったのに…。本当に懲りない人だ。全く、独りよがりもいいところだよ。華さん、すまなかったな…」

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