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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第9章 主(あるじ)を失った家
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主(あるじ)を失った家②

「ところで、あの件はどうなった?」


「お義父さん、あの件とは、一体何でしょうか?」


 華は義父が急にあの件とか言い出したので、一体何なのか全く分からずに、思わず聞き返してしまった。まあ、ある程度予想はついたのだが、都合の悪いことだったのであえてとぼける。


「いつ、うちへ引っ越してくるんだ。遥斗だって、我が家がいいだろう。ほら、母さんにあんなになついている」


 やはり、あの話か…。確か、しばらく保留しようと言うことになっていたはずだが…。それに、遥斗は誰にだって人見知りせずになつく。それこそ、葬儀で田井島に預けられたほどである。


「確か、先週もお話させて頂いたと思いますが、その話は落ち着いてから、改めて考えた方がよいかと…」


「ああ、そうだったな…。しかしね、遥斗があっちの生活に慣れてしまったら、また引っ越しが大変だろう? それにもし、華さんがうちへ来るのが難しいと言うなら、うちの近くのマンションを借りてあげようとも考えている。そうすれば、毎日孫に会える…」


 それなら、遥斗だけをしばらく預けましょうか?…と言えたらどんなにいいことか…。もちろん、そんなこともするつもりはない。


「父さんったら、華さんが暮らせるようにしないといかん…なんて言っていたのよ…。今の世の中、未亡人が相手の実家で暮らすなんて、古過ぎるから止めておき…と言ったんだけどね…。そしたら、うちの近くのマンションを借りてあげようと言うの。まあ、それなら、私もいいかもと思ったんだけど、華ちゃんはどう思う?」


 ああ、やっぱり学校長は保守的だな…。マンションを借りてもらえることはそれなりに魅力的だが、この二人からあれこれ口出しされるのが目に見えている。この話は断って、それぞれの実家の中間ぐらいの場所に、自分の力でマンションを借りるのが正解だろう。


「ちょっと、一人では決められそうにないので、春樹さんとちょっと話し合ってみますね。申し訳ありませんが、ちょっと仏壇の前へ行ってきます」


 義母がポカーンとした顔で私を見る。義父は露骨に苦々しい顔をして私を見る。華は困った時に春樹の名前を出せば、二人が大人しくなることを発見した。


 二人とっては愛してやまない息子だ。息子の名前を出すと、二人ともグーも言え無くなる。それに未亡人になってもなお、夫を大切にする姿勢を全面に出すことは義父母にとっても望ましいことだろう。これを利用しない手はない。

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