主(あるじ)を失った家①
春樹が突然亡き人になってから、二回目の週末がやって来た。土曜日の夕方、花上華は遥斗を連れて、花上家にやって来た。
義父母とマンションの引き上げについて、具体的に話し合うためだ。九月も中旬を過ぎ、このままでは月日だけがいたずらに過ぎてしまう。
遅くとも十月には引き上げるためにも、九月中には春樹の荷物を花上家に送ったり、不要品をリサイクルショップに売ったりしたいところだ。
この一週間は、昼間に父・鳥飼俊夫と一緒に華の私物の片付けと冷蔵庫の中身の処分を行った。そのため、鳥飼家では毎日マンションから持ってきたものが食材に上がった。そのおかげで、冷蔵庫はすっかり空となり、リビングのテーブルとタンスとともに引き取ってもらった。
話し合いの結果、義父母から春樹の分の片付けも進めて欲しいと言われたので、来週はそれに取りかかることになる。
義父母は二人とも小学校の校長をしているので、平日に手伝ってもらうことはさすがに難しいだろう。しかし、春樹の荷物引き上げの時には、さすがに立ち会ってもらわないといけない。
「確かに華さんの言う通りだ。さっき言ったように、服はスーツとか思い入れのある何着か残して、全て処分してもらおう。あと、文具とかノートのたぐいは、春樹の生きた証だから、そう言うのは残して欲しい」
「で、お義父さん。来週の土曜か日曜のどちらか、春樹さんの荷物の引き上げに立ち会ってもらえませんか? それが難しいなら、せめて実家を開けて待っていて欲しいのですが…」
「その週はちょうど、運動会だからな…。母さんの所も、確か…運動会だろう?」
「そうよ。だって、今年から運動会の日を市内全小学校で統一することになったでしょう。翌日の代休の日なら、二人とも行けるんじゃないの?」
遥斗をあやしていた義母がそのように言うと、義父は安心したように頷く。それから、華の方を見てつぶやいた。
「華さん、運動会の代休で月曜なら、二人とも行けるよ。来週の月曜でもかまわんかね?」
「もちろんですよ。私は別にいつでも大丈夫ですので…」
「そうか…。それならよかった」
遥斗は父親に似たのか、全く人見知りをしない。誰にでもなつくので、父母も義父母も喜んで遥斗の相手をしてくれる。今は義母の腕におさまって気持ち良さそうに寝ている。




