田井島、40にしても惑うことを知る②
そう田井島が言うと、田吉と柚木が二人して顔を見合わせた。それから、おっさんは笑い出した。残念ながら、デリカシーのかけらも持ち合わせていないようだ。柚木は必死になって笑いを堪えている。やはり、素敵な女性である。
「マー君、ごめんね。まさか、急にそんなことを聞かれると思ってもなかったからさ…」
「…と言うことは、田井島君は、今日が本当に初めてってこと?」
「そうですよ! 田吉さんには、何度もそう言っているじゃないですか…」
「マジかよ…。てっきり、ネタか冗談かと思った。それで、何かあか抜けない感じなのか…」
この二人…特に田吉にはすごく馬鹿にされている感じがするが、ここで話を聞かないと…。こんなことを市役所の同僚に聞く訳にもいかない。今はこの二人だけが頼りである。
「お二人を見てて思いましたが、百戦錬磨って感じですよね」
「ちょっと、マー君。それ、褒め言葉になってないから…。私達、どんだけ婚活していることになってるの?」
「いや、そう言うつもりでは無くて…。さっきの事情通っぽい話とかがすごくて…」
田吉と柚木をほめるつもりが、逆に皮肉る結果となってしまった。柚木が意地悪く田井島を責め立てて楽しんでいる。意外とサディズムの要素があるようで、それは年下の男の子をいじめて楽しむ小学生女子のようだ。
「まあ、ある意味、百戦錬磨だな…。だって、俺達、二人ともバツイチだし…」
田井島は危うくビールを吹き出しそうになった。このおっさん、サラッととんでもないことを言いやがる。つい、この前まで花上と鳥飼のいるマンションでぬるま湯に浸かって、現実逃避をしていた田井島には刺激が強過ぎる。もう、何がどうなっているのか、訳が分かんねえ…。
「二人は元夫婦ですか?」
「田井島、あんた、馬鹿〜? そうでなかったら、どうしようもない天然だな…」
田吉が某アニメの女性キャラクターの口癖を真似て、田井島を非難する。全然、似てないけど…。
「違いますよ!」
「どこの世界に、元夫婦そろって、婚活に参加する奴がいるか? それにさっき説明したよね? 俺ら、小学校からの腐れ縁だって…。おい、結鶴、大学の先生らしく説明してやってくれ…」




