突然の死③
「あまりに、突然のことで、頭が全くついていか無くてさ…。ちょっと、いろいろ考えていた」
「そうか…。そりゃ、そうだよな…。俺も花上が亡くなったと聞いてから、ずっと訳が分かん無くて、今日までの二日間、ずっと涙が止まらなかった…。あまりにも泣き過ぎると、泣きたくても涙が出無くなるんだよ」
よく見ると、田井島の目は赤く充血している。不思議な事に華はこの二日間全く泣いていなかった。この二日間、全く泣く暇もなかったわけでもないのに…。やはり、悲しみよりも怒りの方が強いからだろうか。
昔から、困った人がいたら、すぐに首を突っ込む人ではあったけど…。何も車に突っ込ま無くてもいいじゃないか?
それとも、相手の子どものことはもちろんのこと、自分も助かるつもりでいたのだろうか…。遺影の春樹はドヤ顔でみんなを見下しているようだ。若い頃と同じように、体を身軽に動かせると思って、思うように体を動かせずに、さぞがっかりした事だろう。
私達、もう三十よ。その結果、命失ってからあの世へ行ってしまったし…。残された私達は一体どうなるのよ。
「田井島。どうして…こんなことになったのかな? 私、こんなこと、全く望んでないのに…。あいつ、勝手なことばっかりしやがって! もう、殴ってやることもできないよ…」
「おい、鳥飼。落ち着くんだ。ここは人の目があるから…」
「どうやって、幼子と二人でこれからを生きていけって…言うのよ! 女手一つで育てられるわけないじゃない!」
「だから、落ち着くんだ…」
これまで、必死になって抑えていたものが、もう抑えられ無くなった。これまでの二日間、病院で春樹の遺体と対面してから、すぐに通夜をして、明日は葬儀もしなければいけなかった。通夜を終えた今、あふれた感情が止まら無くて、泣いているのか、怒っているのか、もはや分からない。
いつの間にか、父や母、義父や義母もやって来ていた。父も母も、義父も義母も目を真っ赤にはらしている。誰もがあまりにも突然のことにとまどっていた。だれがこんなことを予想できたというのか? それでも、人の目がある所ではそれぞれが努めて冷静であろうとしている。