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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第6章 花上を偲ぶ会
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花上を偲ぶ会⑤

「好きだったんでしょう? 私のこと…。知ってたよ」


 鳥飼は一体、何を言っているんだ…。もし、そうだとしても、それは言葉にしてはならないのではないか? 田井島の意思に反して、鳥飼は続ける。


「今なら迷わず、田井島を選ぶのにね…。学生の頃は行動力とかさ、勢いとかで選ぶからね。どんなに立派でも勢い余って無くなってしまう人よりも、多少物足り無くても、毎日の生活をコツコツと安定して築き上げる人の方が結婚に向いていると…今なら、痛いほどよく分かる」


 田井島は鳥飼にとことん失望した。かつて、花上をグーパンチで殴り、彼を守るためにずっとそばにいると決めた人の発言とは到底思えない。


 まあ、未来は絶対ではないし、未来は常に変わるものだ。花上がこの世界からい無くなった以上、残された者は変化に迫られる。それが残された者の使命だ。


「申し訳ないけど、断る…」


「何で? じゃあ、何で今日…ここに来たの?」


 明らかにおかしな質問である。さすがに花上と鳥飼と決別して、新しい自分を見つけるためだとは言えない。代わりに、田井島は自らの身の上話を鳥飼に話して聞かせる。


「では、もし、俺らが結婚したとする。しばらくは、遥斗君を二人で育てるだろう。でも、やがて二人の子どもが生まれた時、遥斗君を同じように愛せるだろうか?」


「もちろん、愛せるよ。だって、遥斗も…これから生まれて来るかもしれない子も、私の子どもでしょう?」


 やはり、何不自由無く育った鳥飼には、明らかな想像力の欠如が見られる。残念だが…これが現実だ。不幸を知らない人に、不幸を想像させることは極めて困難である。


「鳥飼から見れば、そうだろうけど…。俺は違う。遥斗君は花上の子だ。自分の子どもが生まれたら、同じように愛せる自信がない…」


「そんなのやってみないと、分からないでしょう? 推測でしゃべらないでよ!」


「推測じゃない。過去に俺自身が体験したことだよ」


 本当はこんなことを話したくないのだが、鳥飼のあまりにも都合の良過ぎる考えを正すためには仕方ない。そうしないと、またしても田井島の少年時代のような悲劇が繰り返されてしまう。


「俺がそうだった…」


「えっ…」


「離婚した母の連れ子として、母の再婚した後、養父は我が子のように大切に育ててくれた。ところが…十歳の時、養父と母の間に異父妹が生まれてから、養父はもちろんのこと、母も俺を空気のように扱うようになった。どうやら、離婚した父に似てきたかららしい…」


「嘘でしょう…」


「こんなことで、嘘ついてどうする?」

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