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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第23章 四九日の法要
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突然の死②

「本日は夫・春樹のために駆けつけて下さり、誠にありがとうございます。春樹は昔から困っている人をほおっておけないところがあり、困っている人がいると自分のことをさしおいてでも、人を助ける人でした…」


 思わず、涙をこみ上げてきそうになる。なんと、春樹から出会ってからの日々が文章に凝縮されていたのだ。葬儀屋は春樹の過去まで調べているのか? 嗚咽がもれて、声がかすれる…。


「そして、今回も車をひかれそうになった少年を助けるために、命を引き換えに救いました。あまりにも突然の別れに…誰もが戸惑っていることと存じます」


 それにしても、喪主とは実に残酷な役目だ。まだ何一つ心の整理もできていないのに…。


「私自身、春樹が何食わぬ顔をして、普通に戻ってくるのではないかと思うほどです。それでも私達は春樹と別れなければいけません。本日は、春樹との別れの挨拶にこれほどたくさんの方々がいらっしゃったことを、天国で喜んでいることでしょう。本日は本当にありがとうございました。夜も深まっておりますので、どうかお気をつけてお帰りくださいませ…」


 やっと、終わった…。思ってもないことを言うのは本当につらい。どうして、少年を助けるために春樹が犠牲にならないといけなかったの?


 春樹を返してよ! どうして、日曜の昼間から酒を飲んでいたのに、車の運転なんかしたの?

 春樹を返してよ! どうして、幼い少年は車に引かれそうになったの?

 少年がそこにいなかったら、春樹は死なずにすんだのに…。春樹を返してよ!

 残された私達はどうなるの? 春樹を返してよ! 春樹を返してよ!


「大役、お疲れ様。ん? 鳥飼? とりか〜い…。大丈夫か?」


 華は夫を奪われた怒りと悲しみで、完全に我を忘れていた。田井島に声をかけられているのにも気付かずにいた。田井島はすでに腕の中で眠っていた遥斗を華に渡した。遥斗の重みを感じながら、我が子の寝顔を見る。


 やはり、春樹には見知らぬ子どもよりも、我が子のことをもっと案じて欲しかった。今となっては、それも叶わぬ夢となってしまったけど…。


 これでは、十年前と全く変わってないじゃないの…。あの時、もうこんなことしないで…と何度もお願いしたのに…。ただ一つ違うのは、十年前は助けた本人も運良く助かったが、今回はそうならなかったこと…。

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