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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第4章 葬儀から一晩明けて...
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葬儀から一晩明けて...③

 母がリビングから台所へとやって来た。遥斗は母の胸で気持ち良さそうにウトウトしている。少し早いが昼寝の時間である。遥斗が寝たら、これからのことを母と話すことにしよう。いつ、マンションを引き払うか…。母はそのまま、遥斗を寝室へと連れて行く。


 こんなことになると分かっていたら、春樹では無く、間違い無く田井島を選んでいただろうに…。田井島は常に合理的かつ冷静で、どこか冷めた所があるけど、平凡で何とも言えない安定感があった。学生の頃はそれがすごくつまら無く思えたけど…。


 今となっては、あれほど結婚生活に向いている人もなかなかいないと分かる。仕事も手堅く市役所職員を選んだし、学生の頃も自分の思いよりも三人の関係を優先するような人だ。そして、その関係を守り続けることを選んだ。


 もし、春樹がこんなことにならなかったら、ずっと続いていた幸せ。田井島の優しさに甘えることで成り立っていた幸せ。春樹はそんな打算的なことを一度でも考えたことがあっただろうか…。あいつは多分そんなことを一度たりも考えることはなかっただろう。


 そんなことを少しでも考えられるなら、子どものために川へ飛び込んだり、子どもの身代わりになって車にひかれたりしない。ああ、自分の腹黒さに嫌気がさす。春樹が生きていれば、こんなことに気付かずに生きていけたのに…。


「ところで、華、あの家はどうするだ?」


 ご飯を食べ終えて、後片付けをしているところに、父がぶっきらぼうに話をかけて来た。歳を重ねると足音とか気配が弱まるのか、いつ台所に入って来たのか分からない。父といい、母といい、心臓に悪いから止めて欲しい…。


「遥斗ちゃん、寝かしてきたよ」


 いいタイミングで母がリビングへと再び戻って来た。長いこと暮らしていると、夫婦の行動パターンが同じになるのか? 息がぴったり合い過ぎて、逆にびっくりさせられる。足音や気配の消し方までそっくりである。別に二人とも意識して、そんなことやっている訳ではないだろうけど…。


「あの家は、遥斗と二人で暮らすには広過ぎるから、花上家とも話し合って、早めに引き払おうと思ってる」


「それがいいだろうな。位牌とかはあちらにまかせて…。まあ、その方が春樹君もいいだろう」


「そうよ。実際、葬儀の後始末とかは花上家の方でされている訳だし…。そしたら、父さん、早いうちに道夫さんと美冴さんの所へ行って、話し合った方がいいね」


「母さんの言う通りだな。華、それでいいか?」


「うん、それでいい」

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