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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第17章 柚木結鶴の優しさ
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柚木結鶴の優しさ⑤

「お待たせ」


 片付けを終えた柚木がコーヒグラスを持って、ダイニングテーブルのいすに座った。田井島は軽く頭を下げると、柚木は気にしなくていいと小声でつぶやく。


「何かつらいことがあったら、まずおいしいごはんで心と体を満たすこと。それから、つらいことや悲しいことを信頼できる人に吐き出すこと。お互いに共有できれば、なお良し。そうやって、私は今日までの四十年間を生きてきたよ」


 これが柚木結鶴の生き方か…。田井島はそう思った。もちろん、ごはんを食べてお開きになるような間柄なら、田井島は初めから柚木に相談しない。


 無力な赤ん坊の絵を描いた柚木こそ、誰よりも自分の子どもを望み、誰よりも子どもを守りたかったはずだ。それなのに、今日も幼い子どもの命が大人の手で奪われる。せっかく、この世に生まれたのに、なぜ殺されないといけないのか…。


『望まないなら、子ども作るなよ…』


 確か、五対五の合コンの帰りだったか? 柚木がボソリとつぶやいた本音…。この人なら、分かってくれると田井島は感じた。


「手紙の件、本当につらかったよね…。これまでずっと、よその子のような扱いをしていたのに…。継父が亡くなったから、一度帰って来てくれなんて…。母に言われたら誰でも悩むよね」


「いや、答えはすでに決まっていますけどね…」


「どうするの?」


「帰りません! 今さら、母と会ったところで、憎しみしか沸きません」


 柚木のため息がリビンクに漏れる。どうやら、彼女は母と会わせたいらしい…。何で、そう思うんだろう…。田井島はおかまいなく続ける。


「継父と再婚するまでの優しい母は、とうの昔に亡くなりました」


「なるほど、それも一つの答えよね…。でも、お母様だって、継父とマー君の間ですごく苦しんだと思うんだ。そうでないと、こんな手紙は出せないと思うけどな…」


 実のところ、帰らないと決めた田井島自身が一番迷っている。何も迷っていないなら、そもそも柚木に相談する必要ない。このような場合、柚木ならどうするのか知りたいのだ。自分よりも十年長く生きている人がどう考えるのか…。

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