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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第17章 柚木結鶴の優しさ
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柚木結鶴の優しさ④

 この歳になると、洋食よりも和食の方が体に優しくておいしい。しかも、どれも十月らしく秋の味覚がふんだんに取り入れられている。大きくプリプリに育ったさんまはとても脂がのっている。


 肉じゃがに入っているジャガイモは新ジャガイモでとてもホクホクしていて、だし汁がしっかりしみ込んでいる。なめこのみそ汁のなめこも、炊きたてご飯に入っているしめじも全て秋そのものである。一口ごとに秋を感じる。


 食べることで季節を感じられる日本食はまさに世界が認める文化遺産だ。何より作った人が心を込めていることが一番嬉しい。


「どう? おいしいでしょう?」


「おいしいです。あ、すみませんが、ごはんのおかわりを頂いてもいいですか?」


「もちろんよ」


 柚木は田井島からお椀を受け取り、流しの横にある炊飯器からごはんを山盛りによそう。それを田井島に渡す。少しばかり多く感じられた。しかし、これだけおいしいおかずがたくさんあれば、食べきれると思ったので、そのまま食べる。


 おいしい料理への最大の賛辞は、おかわりした上できれいに食べきることだ。どんなにおいしいと言葉で伝えるよりも、きれいに平らげた後の「ごちそう様」にかなう言葉はないだろう。事実、田井島の食べっぷりのよさを柚木はとてもうれしそうに眺めていた。


「マー君、本当においしそうに食べるよね。そして、食べっぷりもいいから、見ているだけですごく幸せになれたよ」


「いやいや、それは柚木さんの作った料理が本当においしいからですよ。だから、お腹だけでなく、心まで満たされました」


「マー君、ありがとう。そこまでほめてくれる人はなかなかいないから、お姉さん、うれしいよ!」


 そう言って、柚木が席を立ち、座っている田井島に抱きついた。そのことに田井島はびっくりした。芸大の准教授で常にお固いイメージのある柚木がこんなことをするなんて…。人は実にいろんな顔を持っているものだ。その後、ごちそうになったお礼に皿洗いを手伝うことを申し出たのだが、柚木は


「大丈夫、ここは私の家よ」


と言って、一人で洗い物を済ませてしまった。その間、田井島は柚木にいれてもらったコーヒーを飲んで待つように言われる。もてなされることに対して、悪い気はしないけど…。しかし、柚木が何をしたいのか、今いちよく分からないので、そのことが田井島にとっては相変わらず不安であった。

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