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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第17章 柚木結鶴の優しさ
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柚木結鶴の優しさ②

 翌日、日曜日の朝、田井島は黒ジャケットに赤のカジュアルシャツ、それと青のジーパンと言う出で立ちで家を出る。愛宕チョイスでバッチリと身を固めてから家を出るだけで、以前は感じられなかった自信を少しずつ感じられるようになった。


 花上がこの世からいなくなってから、世界がどんどん変わっていく。それは田井島自身が望んでいたものでもあったが、それだけでは説明できないほどの変わりようだ。きっと、花上が天国で後押ししているに違いない。それでなければ、こんなにはうまくいかないだろう。


 田井島は途中で洋菓子屋に寄る。柚木の大好物であるレアチーズケーキをワンホール買っていく。昨晩、母からの手紙を見て、とうの昔に忘れていた不快で苦痛に満ちた少年時代を無理矢理思い出させられた。


 ああ、どんなに遠くへ行こうとも、どんなに歳を重ねようとも、かつて受けた心の傷は都合よく無かったことにはできない…。どんなに上手に見ないフリがうまくなっても、たった一通の手紙が全てを台無しにする。


 人は誰もが何かしらのトラウマに囚われの身であり、何人もトラウマから完全に解放されることはありえない。唯一、解放されるとしたら、それは死ぬ時だけだ。田井島は、残酷過ぎる真実にただ落胆する。


 しかし、解放されなくても、対抗することはできる。それは同じような境遇や立場の人々と苦痛や苦労を分かち合うことである。また、人の優しさや温もりで傷ついた体や心を癒すことである。


 人を傷つけるのが人であれば、人を救い出すのもまた人であろう。だからこそ、田井島は田吉太一や柚木結鶴に希望を見いだすことに決めたのだ。


 柚木の家に着くと、彼女は温かく迎え入れてくれた。五階建てマンションの三階にある2DKの一室。柚木が言うには、一室は仕事部屋としているようであり、まずはそこから案内された。田井島は忘れないうちにお土産を柚木に渡す。


「まあ、そんなに気を遣わなくてもいいのに…。マー君、ありがとう。ちょっと、冷蔵庫に入れてくるね」

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